第34話:緊急アルバイトは地雷系
週末土日に、母達から出された課題の『アカネにキスをする』を達成しなくてはならないが。
その前に、その母達からのお願いで緊急アルバイト。
いつもの、母達の会社の宣伝関係の写真撮影。
少女向けのファッションを中心に事業を展開する母達の会社。
雪人はそのカタログ等に使う写真のモデルとして、手伝いをしている。
一応、代金も貰っているので、れっきとしたアルバイト。
今日は予定にあるものではなく、緊急対応。
「ユキちゃん、ごめんねー、急に」
撮影を監督する、馴染みの社員さん達に迎えられ。
「いえ、困った時は、ってやつですよ」
「んーんー、良いコねぇ、ユキちゃん」
「……まだユキじゃないですけど……」
主に少女向けのファッションを写真撮影。
当然、雪人は女装する事になる。
女装した雪人の事を、スタッフが『ユキちゃん』と呼んでいる。
「っと、その前にメイクねー。こっちこっちー」
別のスタッフに呼ばれ、メイクを施される。
「あれ? 今日はやけにあっさりですね……」
「ユキちゃん素材いいから、ほぼそのままでも通用するしねー」
「はぁ……」
衣装を手渡され、簡易更衣室に入って着替える。黒く長いウィッグも着けて。
「これは、また……」
普段のあっさり目の衣装と違い。
今日の衣装は、少し装飾が多い。
とゆーか、装飾だらけ?
黒を基調に、白のレースが散りばめられた、いわゆる。
「……ゴス、ロリ? 今は地雷系、だっけ?」
頭にも衣装とほぼ同じデザインのカチューシャリボン。
そう言えば、美里ママが『緊急の
一体どんな
「うきゃーーーっ! 可愛いいいいいいっ! 持ち帰りたいいいいいっ!」
メイクさん、絶叫。
「さぁ、時間無いから、ちゃっちゃと撮るわよー」
「はい」
いつもの『お立ち台』へ。
いつもと違い、今日はお立ち台の上に、ローズピンクの豪華な椅子が置かれている。
「先ずは、その椅子の横に立って」
言われた通り、立つ。ただ立つだけでなく、椅子の背もたれに肘を置いてみる。
「うんうん、そんな感じ、そんな感じ、いいよー」
なんとなくだが、求められている事が、理解できる。
何故と言われると、説明は難しいが。
この衣装を着て、この舞台に立って。
この瞬間。
雪人の……いや、ユキの心は、純粋に、少女へと置き換わる。
この衣装を着た少女が、何を想うか。何を求めるか。
椅子の右から左。
ポジションとポーズを変えながら、撮影。
「おっけー、今度は、座ってみて」
「はい」
ユキは……
「!? いいっ! それっ! それいいっ!!」
カメラ撮影担当の社員さんが、驚きつつも、その映像をカメラに収める。
何枚か撮った後。
今度は、普通に椅子に腰かける。
右ひじを肘当てに置いて、頬杖。
ちょっと、痛い感じのお嬢様風?
この服を着た、少女なら?
この衣装から受けるイメージを動きに換えて表現してみる。
座ったまま両手両足をだらりと投げ出して、首を少し傾けて。
「……人形? これはこれで、アリね!」
さらに、極々普通に座ったり、椅子に足を乗せたワイルドなシーンなどなど。
そうか。
雪人は、ある事に気付く。
「おっけー、ユキちゃん、ありがとーっ! 良かったよー。撮れ高、最高ぉー!」
無事に撮影も終わり。
雪人は、スタッフの責任者に、問う。
「あの……またこの衣装、譲ってもらう事って、出来ます?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます