第26話:母達のショッピング
「雪枝さんとこうやってお出かけするの、久しぶりね」
雪枝と腕を組み、雪枝を見上げながら、美里。
「そうねぇ、お仕事でいつも一緒ではあるけどぉ」
雪枝も組まれた腕をきゅっと引き寄せながら答える。
「仕事場だと、こんなにイチャイチャできないし」
「そう、ねぇ」
二人、見つめ合って。
なんなら、そのままキスでもしそうな勢いだが。
前から来た他の客に怪訝な顔をされて、はっとする。
「見て見て、このソファ、よさそう!」
慌てて普通の客をよそおう。
「ちょっと、座ってみましょうかぁ~」
ぽすん。
ぽすん。
展示品ではあるも、実際に座って感触を確かめられるソファ。
二人並んで腰かける。
「ちょぉっとぉ、固い、かしらぁ?」
背中とお尻をソファにぐりぐり。
雪枝の感触は微妙な模様。
「あ、これ……ぽちっ」
うぃいいいいいん。
「え? なぁにぃ?!」
ゆっくりと背もたれが後ろに倒れて、美里が寝転がる形に。
逆に、足元がせり上がってベッドのようにフラットになる。
「あはは。これ、電動でリクライニングできるみたいね」
「へえぇ、こういうのも、あるのねぇ~」
ぽち。
再度ボタンを押すと、リクライニングから椅子の形に戻る。
「あらあらぁ、意外と安い、わねぇ~」
立ち上がって商品に付けられたポップを見て、雪枝が感心する。
「今あるやつって、ちょっとくたびれて来たし、こういうの買っちゃいましょうか?」
「んー、なんとなく、強度に問題がありそうねぇ……あんまり激しい使い方できなさそうだわぁ」
「あー……」
雪枝の指摘に、納得の美里。
「他のところもぉ、見て、みましょぉ~」
「はーい」
また腕を組み、歩き出して店内を見て周る。
先程のソファのコーナーから、テーブルや椅子、それにベッド、寝具。
広い店内の広い通路は、二人並んで歩いても邪魔にはならない。
そんな寝具のコーナーの一角で、美里が何か見つける。
「これ、冷感マットレスですって」
ぷにゅ。
手のひらで押して、感触を確かめてみる。
「おおっ。確かに、ひんやりしてる。雪枝さんも、ほら」
「どれどれぇ~」
ぷにゅ。
「ふむふむぅ。夏に向けてぇ、こういうの、いいかもねぇ~」
「夏だけじゃなくて、火照った身体をクールダウンするのにいいかも」
「んふふ。どうして火照っちゃうのかしらぁ?」
「んもー、わかってるクセにー」
ふふっと笑い合う恋人たち。
結局、キングサイズのものが無く、シングルを二つにしようか? と考えるが、継ぎ目の段差で寝心地が悪くなるだろう、と、断念。
そんなこんな。
イチャイチャしながら、それこそ、お店を『冷やかして』周る、母二人。
今は、母ではなく、女として。
今はまだ、恋人として。
一方、子供達は。
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