第14話:雪人オオカミ化計画(前編


「さて、ではでは、雪人がぁ、バイト行ってる内にぃ」

「雪人ちゃん改造計画会議、始めるよっ!」

「ぉぉ~」


 ぱちぱちぱち。


 リビングにて。息子の居ぬ間に。

 母二人の音頭で、なにやら女三人の密会が始まろうとしていた。


「純情で奥手な雪人ちゃんを、どうやったらオオカミさんにする事が出来るか?  を、考えて行きたいと思います!」


 母の一人、アカネの実母、美里がこの会の目的を告げる。


「ぽちっとな」


 もう一人の母、雪人の実母、雪枝が手元のノートパソコンを操作すると、テーブルの端に置かれた二十四インチの液晶モニタにパワポ資料が表示される。



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      雪人オオカミさん化計画

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【現状】


 ●雪人とアカネが同室で寝起きしている










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「ん? これって、どういうこと?」

 アカネの素朴な疑問。


「これは現在の状況ね。この状況の問題点は……雪枝さん、次、お願い」


 ぽち。


 雪枝がノートパソコンのキーを押すと、画面が切り替わってスライドの続きがアニメーション表示された。


 文字がふわーっと浮き出るアニメーションだ。


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      雪人オオカミさん化計画

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【現状】


 ●雪人とアカネが同室で寝起きしている


【問題点】


 ●過度な露出


  ・お風呂上りに下着姿でうろつく

  ・寝る時にパジャマのボタンを外す/脱ぐ


 ●過度な接触


  ・過度なボディタッチ/抱き着く

  ・キスを迫る

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 これを見たアカネは。


「いやいやいやいや。って言うか、お風呂上りに下着姿って、母さん達もしょっちゅうやってるじゃない!?」

 もちろん反論する。


「私達の場合は、リビングですれ違う時ぐらいでしょ?」

 アカネの反論に、さらに反論する母。


「お母さんも結構、雪人に抱き着いてるし。雪枝ママはしょっちゅうチューしてるじゃない!?」

 アカネもさらに追撃。母二人を相手にまくしたてる。


 母は冷静に。


「回数と時間で考えると、アカネの比じゃないもん」


「……」


 確かに、母二人に比べると、リビングだけでなく、自室、寝室で一緒に居る事が多いアカネ。


 絶対的な時間を比較すると、雪人と二人きりの時間はアカネの方が遥かに多い。


「って言うか、なんでこれが雪人くんがオオカミさんにならない事と関係ある訳?」

 これまた素朴な疑問である。


 美里がそれに答える。


「逆の発想ね。何故、雪人ちゃんが『ウサギさんになっちゃったか?』」


「ふむふむ……」




(つづく)



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