第85話

 俺の部下として働くことになったエルさんに、屋敷の鍵を渡して戸締りの管理をお願いし、護衛にはそのままエルダーウルフを配置して、一旦カコ村に戻る。


3回目のお湯張りをして、それを村人に知らせる旗を上げ(1回目は白、2回目黒、3回目赤)、やっと家に帰る。


「おかえりなさい」


リビングで俺を待っていたサリーに迎えられ、出されたお茶を飲んで一息吐いた後、集まって来た皆と一緒に浴室に行き、訓練を開始する。


もう皆が大分この訓練に馴染んで、中にはサリーのように、より長く楽しむために、わずかだが腰の動きを調節する余裕が生まれる者もいた。


あまり1人だけに時間を掛けられないので、そのような時は、強めに魔力を流してさっさと果てさせ、大人しくなった所でこちらが放出して、一時的に意識を手放して貰う。


脱衣所には、そんな彼女達を横たえるための、背もたれの無い長椅子が置いてあった。


いつもより遅い時間に訓練が終わると、既に皆が就寝する時間を過ぎている。


サリーを除いて、入浴後の余熱を冷ました女性達が、其々の部屋で眠りに就く。


髪を乾かした俺が自分の部屋に向かうと、サリーも後ろから付いて来る。


ドアを閉めた彼女は、身に付けていたバスローブを脱ぐと、俺の側に来て、こちらのバスローブも脱がせる。


サリーの温かな唇と舌の感触を全身に感じた後、ベッドに横たわって無言で両手をこちらに向けてくる彼女に、徐に覆い被さった。



 「少し相談したい事があるんだ」


夜が明ける頃、上に跨ったまま果て、意識を飛ばして倒れ込んできたサリーを抱き抱えたままだった俺の首筋を、目覚めたらしい彼女が舐めてくる。


「・・奴隷だったのことですね?」


「ああ」


「抱いてくれと言われたんでしょう?」


「・・・」


「分りますよ。

今後に不安のある女性が、あなたみたいな人に親切にされたら、たとえ自分の1番大切なものを差し出してでも関係を保とうとします」


「それが少し変わっていてな。

給料の一部としてそうしてくれと言われたんだ」


「その女性を雇うことにしたのですか?」


「ああ。

俺が今1番欲しい人材、ダセの町の領主補佐として、事務処理を一手に任せることができそうな人なんだ」


「そこまでですか?」


「奴隷にされるまでは、実際に前領主の事務処理を担当していたらしい。

息子の不正を父親に告発しようとして捕まったというから、ある程度の正義感も備わっている」


「修様はその女性がお好きなのですか?」


「勿論、嫌いではない。

容姿も(学校などの)集団の中に1人は居そうな(中の上)レベルだし、真面目なのも良い。

いちいち指図しなくても、必要な事は全てやってくれるだろう」


「なら抱いてしまえば宜しいではありませんか。

一体何の問題があるのか分りません」


「・・俺はさ、女性を抱く時は、双方に愛情が必要だと思っている。

相手は勿論のこと、俺にもその女性に対して好意以上のものがないと、(性行為が)終わった後に虚しくなりそうで嫌なんだ」


「・・それだけですか?」


「え?」


躊躇ためらう理由がもしそれだけでしたら、失礼ですが、修様は甘いとしか言えません」


「甘い?」


「ええ、そうです。

貴族の当主なら、たとえその相手に愛情がなくても、その女性を受け入れ、時にはその人と子を生さねばなりません。

それは双方の意思など関係のない、義務です」


「俺は貴族じゃない」


「同じ事です。

修様はカコ村の現状を見捨てることができなくて、あの村の領主となられました。

そうなった以上、税の徴収の在る無しに拘らず、村の住民に対して一定の義務が生じます。

村人を護るために、戦力を蓄え、知識を吸収し、戦になれば先頭に立たねばなりません。

ご自分の力だけでそれが為せないのなら、人を集め、その彼らを使って事を為す必要があります。

大勢の人の命が懸かっている時、責任ある地位に就きながら、ご自分の我儘だけでそれを為さないと言うのなら、甘えているとしか言えません。

修様には、いつまでもダセに係わっている時間はないでしょう?」


「・・・」


「ご自分の大切になさっている何か、例えばそれが愛する人の身柄や命と引き換えだと言うのなら、それは拒んでも仕方ありません。

陸に顔も知らない大勢の他人と、自分の大事な人達とでは、その人にとっての命の重さが異なります。

たった1人の恋人のために、世界中を敵に回したとしても、私は責めることができません」


「・・・」


「ご自分の信念や信条を貫き通したいのなら、必要以上にしがらみを作らないことです。

私達だけで楽しく暮らしていけば良い。

でも困っている人を簡単には見過ごせないと言うのなら、何処かで折り合いをつけねばなりません。

・・今回の件では、相手の女性に不利益はなく、修様にとっても有能な駒が1つ増えるという利点があります。

それに対して、失うのは修様の信条の一部だけ。

でもそれだって、回数を重ねていく内に、気持ちの変化があるかもしれないではありませんか。

相手の容姿や性格は、抱くのに何の問題もないのでしょう?

人形を相手にするのとは違って、その女性には心があるのですよ?

頑張って仕事をこなして、そのご褒美に抱かれることを望むなんて、かわいいじゃありませんか」


「・・確かに、何回も相手をしていれば、情は涌くし、好意も芽生えるだろう」


「女性を抱いて虚しいと感じるなら、それは相手が思うような反応を返してくれないからでしょう。

大丈夫。

修様のことを好きな相手なら、きっとそんな気持ちは起こりません。

第一、私が初めての相手だった修様に、そのようなご経験がお有りになるのですか?」


「それは・・」


「そういうのは、女性に相手にされない童貞の妄想や言い訳だと、相場が決まっています。

修様が心配なさる事ではありません。

繰り返しになりますが、容姿や性格に問題がないのなら、抱き締めれば抱き返してくれる相手になら、そんな気分にはなりませんよ。

抱くべきです。

女というのは、真に自分が望むものを与えてくださる男性ひとに付いていく生き物ですから」


「・・分った。

そうするよ」


「フフフッ」


「でも、サリーは不思議な女性だな。

焼餅やきもちを焼いているのか、助言しているのか、たまに分らない時がある。

今だって物凄く締め付けてくるし・・」


俺が果てる前に彼女が意識を飛ばしたから、俺の物は、彼女の中でずっと固いままだった。


「それは修様のが、ずっと私の子宮を刺激してくるからです。

・・ご相談が済んだのでしたら、もう1度なさいます?」


「いや、そろそろ皆が起きる時間だし・・」


「では直ぐに終わらせましょう。

大きな声が漏れないよう、キスで口を塞ぎますね」


「もう約束の回数を十分にこなしたじゃないか」


「今からのは相談料です。

特別に2回で良いですよ?」


「・・分りました」


彼女の下半身が、支払うまでは絶対に放さないと言っているしな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る