第80話

 カコ村に戻らねばならない時間だったので、ミウを連れて転移魔法陣を使った。


条件付きとはいえ、俺が転移を使えることを知ったミウは、『これなら本当に世界最高のダンジョンを造るのも夢じゃない』と、大喜びした。


なお、見張りをさせていたソルジャーラミアには、褒美としてこの近辺での狩りを許した。


但し、人間は殺すなと厳命しておく。


彼女は後で回収することにして、俺達はカコ村のサリーの所まで急ぐ。


「・・綺麗なですね。

新しいお仲間ですか?」


ミウを見たサリーが、にっこりと微笑む。


「ああ。

詳しい話は家でするが、彼女も俺達と一緒に暮らすことになった。

ミウ、こちらが俺の片腕となる部下のサリーだ。

部下とはいえ、君と同じ恋人でもあり、将来は妻となる一人だから、仲良くしてくれ」


「ミウです。

修の妻として頑張ります。

宜しくお願いします」


俺にはぶっきらぼうだが、サリーには丁寧語を使っている。


新入りの立場だから、少し遠慮しているのかな。


「サリー・ダルシアです。

修様の忠実な部下として、公私に渡り、彼をお支えする立場にあります。

こちらこそ宜しく」


サリーが差し出した手を、ミウが握る。


「俺は3回目のお湯張りをしてくるから、少しここで待っていてくれ」


「分りました」


「分った」



 「既に彼と済ませているのですか?」


修様が見えなくなると、私はミウさんに話しかける。


「まだキスだけです。

初めてだから、最初はベッドでしたいので」


「どうやって彼とお知り合いに?」


「ギルドで、この子を一緒に助けて貰うための人を探していたら、偶然彼がそこに立ち寄って・・」


肩に上っている奇麗な銀狐の子供を撫でながら、彼女がそう口にする。


不躾ぶしつけな質問ですが、彼の何処に惚れたのですか?」


修様が連れて来た以上、大丈夫だとは思うが、念のために確認しておく。


「最初は彼の厖大な魔力量にびっくりして声をかけたんですが、次にその顔を見たら凄く好みで、戦う姿が凛々しくて、悪人には容赦ないけど、そうでなければ優しい心の持ち主で、それにとんでもないほど優秀だし、体つきも素敵で・・あたし、今までこんな気持ちになったことがないから、彼の前だとつい言葉使いが乱暴になってしまうというか、緊張してぶっきらぼうな素振りを取ってしまうというか、治そうとは思っているのですが、なかなかそうもいかなくて・・」


フフフッ、申し分ありません。


修様の長所を、この短期間でよく理解している。


彼に抱かれれば、更に好きな所が増えるでしょう。


「修様に対する口調や態度は、然程さほど気にしなくても大丈夫です。

勿論、悪意や嫌悪を含んだ物言いは、他の皆さんの顰蹙ひんしゅくを買いますが、愛情の裏返しや照れからくる言動なら、誰も気にはなさいません。

共に長く暮らしていけば、その内あるべき姿に落ち着きます。

どうか有りのままのあなたで、彼と接していってください」


「有り難うございます。

そう言ってくださると心強いです」


笑うと更にかわいいですね。


・・修様は本当にお目が高い。


彼が選ぶ女性達は、着飾ればどの国の社交界でも通用する、超一級品ばかり。


それは単に顔の良し悪しに留まらず、性格や知能、行動原理にまで及ぶ。


ついこの間まで、単なる村娘でしかなかったミーナさんは、物凄い勢いで知識を吸収し続け、既に魔力量も相当な水準にある。


修様の精を大量に受けた恩恵もあるだろうが、彼女本来の勤勉さと真面目さが、その上昇速度を更に押し上げているのは確かだ。


エミリーさんにも驚いている。


彼女は共に暮らし始めた時は、まだ回復魔法の下位レベルしか使えていなかった。


それなのに、皆の前で修様に抱かれてからというもの、あっという間に中級クラスにまで手が届いている。


魔力量もかなり増えて、修道院での治療行為はもう彼女だけで済んでいると聞いた。


エレナさんは、女としての艶がかなり増して、ギルドの窓口を独占しかねない所まできている。


あまりにかたよるから、彼女だけは予約制にしようという声もあるらしい。


彼女には修様がいるというのは既に周知の事実だが、それでも諦めきれないのが男のさがか。


勿論、エレナさんは事務処理能力も非常に高く、普通なら捌けない程の人数を日々こなしてもいる。


火魔法のレベルは、もう第3騎士団長に並ぶという。


・・私を含め、皆が不思議な縁で修様の周りに集まってくる。


隙あらば言い寄って来る、その他大勢の男達を退けて、身もふたもない言い方をすれば、歯牙にもかけず、ただ修様だけを見ている。


抱かれる順番も気にしなければ、行為自体の長短も然程気にしておらず、ただその身に彼の精を受けることだけを至上の喜びとする姿は、はたから見れば、少し異常に映るかもしれない。


でも、それで良い。


他ならぬ、私達が幸せなのだから。

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