第四話 今、再び日記をつけるなら。

 それから僕は日記に日々の問いを書いてはそれを読み返す日々を送っていた。

 時に彼の問いを思い出す。そして彼が託された最後の問いはきっと人が愚かな理由なんかではない。人が生きる意味なのだ。余談だが、まだ一人称に俺が混ざる事がある。それでも今は彼の事を忘れないためなどの理由はない。俺なりに考える。早速混ざってはいるがそんな事はいい。人が生きる意味を俺は考える。

 いつものように登校する。国語の授業を受けているとふと、教科書に目を止める文があった。

 人生についてだった。そこには感謝と皆平等に与えられた時間というものが書かれていた。そして生きる意味について、自らが生きることで例え苦しもうとも、それは時間がいつか解決する。我々はその時初めて生きる理由について考える。日常にある疑問も時間があれば解決する。その日をただただ待ち続けるのを理由にして生きてみるのはどうだろう、と。

 読みながらその苦しみにあいつは耐えられなかったのか……と少し考えたがそれは何処かあいつを甘く見てる気がしたのでやめた。

 代わりに、生きるとは何なのか…? と考えながら授業を受けた。正直すごく眠い授業だったが、別の事を考えながら受けていれば時間は過ぎるもので気付いたら終わっていた。

 一つ疑問が浮かんだ。そもそも感謝は人生にとって生きる理由になるのかということだ。正直そんな事が一生着いてくることは分かる。だが同時に、そんなのは考えるだけ疲れるのも分かっていた。誰かに感謝しなきゃ、と思いながら感謝を伝えようともそれは積み重なるともはやルールとなってしまう。そんな事をその日は日記に書いた。

 次の日も考えた。彼が見付けられなかった生きる意味。その理由を。自分も聞かれると無いものだ。聞かれる事もない。かといって感謝とは言えない。何故ならそれは生きる上での事で理由とは自分には言えなかった。

 では何か、お前が今考えるなら何と言うか。

 そうだ。簡単なことなのかもしれない。お前なら、かつての親友ならば、きっとそんなものはないと蹴ってしまう問いなのだ。だから話すことがなかった。問いかけられることがなかったのだ。

 では、今ここでもし彼に今僕が、俺が、自分が生きる理由を聞かれたのならきっとそれは答えなくてもいい。答えなんて生きていれば見つかる。時間が解決してくれるのは本当なのだから、

 だからこそ、

 今生きる理由をつけるなら、

 この日記に記すのは、


 それを見付けるためだけでいい。


 ここに彼の日記があるのだ。

 日記は途中だ。まだ時間が止まっているみたいに。彼は書くのは止めたが問いかけを止めたわけではない。時間が彼の中で止まるならその問いは確かに解決しないのかもしれない。

 ただ、考えるのを止めるわけではない。彼がその考えを記す方法がなくなっただけだ。ならば今、方法がある僕が書かない理由がないのにここで止めてしまうのは勿体ない。再び彼に問うのだ。たった一言でいい。そう、


「今、再び日記をつけるなら、」


 それでいい。俺の探す彼にある問い、生きる意味を探す理由、今この日記を記す理由、その全てをただ彼と話すのだ。そう決めたのだからやり通そう。

 ならばこの日記に書くのは生きる意味などといった内容ではない。ただ一つ。お前の目線に並ぶためだけに問う。素朴なその問いを僕は投げた。

 そのたった一言を、


「お前は何を綴るのか」


 そして再び日記は動き始めた。

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今再び日記をつけるなら、 鋭角今 @kon_

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