第17話 完全蘇生
少女に着いて行き、向かった先では草原のグリフォンがこちらを睨んでいた。
――あの凶悪な爪と
「…!ミーシャ、さっき渡したハンドガンで撃て!」
「は、はい!」
グリフォンの圧倒的な強者のオーラにミーシャの両足はガクガクと震えていたが、しっかりと狙いを定めて弾を放った。
「――ドパァァン!!」
ミーシャの銃弾はグリフォンの頭部に当たり、抵抗する間もなく息絶えた。
しかしその奥で、茶髪の男が胸と首から血を垂れ流し倒れていた。
…彼が少女の父親だろう。
「……ッ!お、お父さん?生きてるよね?!」
紅髪の少女は必死に男の胸に耳を当てている。
「………」
ハルトは”万能回復薬”を男に飲ませるが、外傷も全く回復しない。既に息絶えてしまったらしい。
「……!俺には蘇生出来るようなスキルが無い。君のお父さんはもう……」
その言葉を脳で理解した瞬間、少女はさらに泣きじゃくった。ハルト達は自分たちが何もしてやれない事をとても心苦しく思った。
しかしその中、どこからともなく妖艶な声が聞こえてきた。全く聞き覚えの無い声だ。
『――わっちに任せておくんなんし』
突然、ミーシャが腕に抱えるリリから光が放たれた。目が眩む程に。
〉「光量調整」スキルを得た。
そして目がまともに機能する頃には、ミーシャの手元にリリの姿は無くなっていた。
だがミーシャとハルトの前に立つのは…
ハリのある薄水色の髪に、とてもスタイルのいいダイナマイトボディの女性だった。その薄ピンクの唇はとても艶やかだ。
…しかしその女性は全裸であった。
「き、きゃぁぁ!ハルト様、ダメですぅ!」
慌ててミーシャがハルトの目を手で覆い隠す。
しかしハルトはチラッと見えてしまったそのスタイルに思わず鼻血が垂れた。
「なに、まだ死んで間も無いのでありんしょう?」
少女がコクっと頷く。
とても優美なその女性は男性に近寄り、手をかざした。
「――汝の魂は未だ此処に有り。必然の死、理に背き、再び拍動せよ――
詠唱を唱えた途端、殺されたはずの男性の傷はみるみるうちに回復していった。まだ目を覚まさないが、その心臓は再び活動している。
「…ふぅ。この魔法は魔力をごっそりと持ってかれる故、わっちは少し寝ることにしんす」
そういって女性は再びスライムに戻り、ミーシャの腕へと戻った。
「「……えぇぇぇっ?!」」
――まさかリリが人間の姿になり、人語を喋っていた事に驚きを隠せないハルトとミーシャ。
「お、お前…ほんとに何者だ…?」
当のリリは、うんともすんとも言わない。
しっかりと寝ているようだ。
…夢か?と現実を疑ってしまうような光景だったが、事実目の前の男は蘇生されている。
「――あ、ありがとうございます!!!」
紅髪の少女は蘇生された事に戸惑いながらも、泣きながらハルト達に礼をする。
「お、俺たちは何もしてないけど…お父さんが助かって良かったよ」
「わ、私は
しばらく待っても雅史は目を覚まさなかったので、ハルトが担いで美姫の家まで送った。
小さい森を抜け、江戸のような街が視界に飛び込んでくる。
そして少女に着いて行き、彼女の家に着いた。
「お母さん!!お父さん生き返った!!」
「――美姫!生き返ったってどういうこと?!
美姫は家の戸を開け、糸目で子供と同じく紅髪の母親に父親の無事を報告する。
その母親はすぐにハルト達に気づいたようだ。
「一体この子達に何が…?」
美姫は父親と草原へ出掛けていた時にグリフォンに襲われ、近くで馬車を見掛けた為助けを求めに走りハルト達に助けて貰ったとの旨を母親に話した。
自分が家に居た時にそのような事があったと聞いた母親は驚愕した。
「うちの旦那と子供を助けて頂き、本当にありがとうございます!」
土下座してしまうのでは、という勢いでハルト達に頭を下げる。
「私は榊原
――しかしこの世界では珍しく日本の名前だな。
皆服装も和服だ。
中へ招かれたハルト達は、靴を脱いで中に上がった。
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