第10話

 町には従者と共に中に入った。神様の一行は検問も素通りらしい。

 門の周りには家がなく広々としている。そして、そこから続く先の丘には大きな屋敷があった。

 一行はその屋敷に向かっているようだ。ゆっくりと町中を進む。木造の家しかなかった。コンクリートで作られた家はないようだ。まるで、江戸時代の町並を再現したような町だった。

 その町並みを抜けて丘の上に進む。すると、館の前には和服を着た男や女が頭を下げて並んでいた。

 牛車は牛飼の男の案内に従って館の玄関の前に進んだ。

 凛音は牛車から降りてかごから離れた。そして、姫が牛車から降りて来た。

 凛音は姫の顔にくぎ付けになった。美人で愛らしい。どのような男が恋人にふさわしいか想像できなかった。

 姫が里弦を従えて館の中に入っていく。

 凛音は続こうとしたが、鎧を着た男に止められた。

「オレたちは町の宿場だ。姫様はその格の高さから町中に泊まることができん。だから、一番、いい場所が姫の泊まる場所となる」

 凛音は納得して付き人たちと共に宿場に向かった。


 宿では皆と同じで大部屋に泊まることになった。

 まるで修学旅行のようだった。全員で大きな部屋で同じ食べ物を食べる。そして、眠るのも一緒の大部屋だ。皆は和気あいあい酒を飲みながら談笑していた。

 そんな中、凛音は一人でいた。どこの誰かとも知らない人間だ。積極的に関わろうとする者はいなかった。

 凛音は一番端に布団を引いて入る。そして、目を閉じた。


 凛音は複数の視線を感じて目を開けた。まだ、酒に酔っている男たちが目の前にいた。

 男たちは凛音が目を開くと一斉に布団に入っていった。

「何ですか?」

 布団に入れずに目の合った男にいった。

「いや、なに。キレイな顔をしているから本当に男かと思ってな」

「見た目で判断しないでください。それに風呂では一緒だったでしょう?」

 凛音は眠そうにいった。

「まあ、そうだな。お休み」

 男は手を挙げて自分の布団にもぐりこんだ。

 凛音は納得できないが、睡眠を優先にした。


 朝起きると、夜中の出来事はなかったかのように淡々としていた。

 皆は服に着替えて朝食のある宴会場に向かった。

 話している者はいるが、皆は静かにしている。昨夜の宴会がウソのようだ。

 おしゃべりする人は少ない。黙々と食事している人が多かった。

 食事が終わると、護衛は甲冑を着る。そして、宿を後にした。

 そのまま、丘の上の館に向かい姫と合流して、また、丘を下り町から出た。


「凛音はいるか?」

 天耳通で姫の言葉を拾った。

「はい。います」

 牛車のかごに届くように大声で言った。

「なら、こちらに」

「わかりました」

 凛音は姫の牛車に近づいた。

「これから、魔物が出る。その排除を頼む」

 姫には魔物の気配がわかるらしい。凛音は、まだ気配は感じていない。

「わかりました。どちらの方角ですか?」

「日の沈む方」

 西である右横から来るらしい。しかし、凛音には気配を感じ取れなかった。

 注意しながら、歩を進める。

 やがて、空に気配を感じた。

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