第11話 某ショッピングモール

 テレビを見ていれば、某ショッピングモールにてフェア開催のCMが流れる。

 時折行われるそれに目星をつけた鈴子は、「よっこらしょ」と立ち上がると、早速出かける準備をしつつ、ゴウへ声をかけた。


「じゃ、○○○コに行ってくるよ。なんか欲しいものあるかい?」

 鈴子の問いかけに小刻みに首を振ったゴウは、そのまま頭頂部を斜め下へ傾けた。

 常人であれば終われる角度だが、成り立ちからして人間と程遠い存在には関係なく、これくらいで今更驚くこともない鈴子は、しかし、不思議に思う。


「どうした?……もしかして、CM見てなかったのかい? やれやれ、アンタ自身が来られりゃ手間もないんだが」

 言って、その姿のまま、ゴウが日中の某ショッピングモールに現れた際の阿鼻叫喚を思い浮かべ、ついついニヤつく鈴子。


 ゴウがこの部屋――正確にはこの場所から離れられないことは、最初の日ですでに経験済みだ。

 自分との同居を承諾させた後で、手始めに、何も言わず宛がった丸頭をゴウに呪わせようとした鈴子は、そこで動きを制限される白いワンピースの、何とも形容しがたい、哀れとも気持ち悪いとも思える足掻きを見た。

 ゴウの行動範囲と力がここ限定と知り、一時は心底悔しがったものの、飛んで火に入る夏の虫、カモがネギを背負ってやって来た、を体現した丸頭の登場には、昔話の鬼婆よろしく、内心舌舐めずりしたものだが。


 そんな鈴子の思いを知る由もないだろうゴウは、無茶な頭の位置を元に戻すと、なんとなく伝わる疑問を投げてきた。

 ○○○コ? ○○ンじゃなくて?

 コレに対する鈴子の返答は早かった。

「いいんだよ、○○○コで! 新しい方が正しかろうが、アタシにとっちゃ、あそこは死ぬまで○○○コ!」

 子どものような言い様に、ゴウは分かったような分かっていないような顔で、こくりと頷いた。

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