第2話 俺のアカウントがバズる
村沢と別れ、動画サイトを調べてみた。俺の動画を挙げたやつに一言言いたかったのだ。某大手動画サイトに繋ぐとアカウントを探した。動画を挙げているのは「ロベルト、フォールド」という名前のアカウントだった。動画の再生数は10億を超えており、人気アーティストの楽曲並みに伸びていた。ここ数日の再生数では世界一の記録であり、俺の後ろ姿は一番ホットなシルエットになっていた。コメント欄には外国からのものが多く、驚嘆の声が挙がっていた。
動画を流すとCMが流れ出したのだ。こいつ収益化してやがる。自分の動画のように振る舞い、コメントにあるのが。
「いずれ顔を出してダンジョン探索を盛り上げたいと思います」
と固定のコメントを発見する。こいつ、俺の動画で一儲けするつもりなのだろう。俺は怒りに任せ、コメントを書き込むことにした。
投稿主のコメントには返信が数百件あり、ほとんどが日本人だった。中を見ると。
「かっこいいです」
「どうして顔出ししないのですか?」
「顔出ししないのはイケメンだからだろ?」
「絶対に優しいし、紳士だと想像」
こんなべた褒めのコメントが並んでいた。腹が立って仕方がない。自分の動画を広めるどころか、利用しようとしている。
俺は一番言いたいことを伏せてとりあえず携帯電話を返せと言いたかった。
「スマホを拾ったなら警察に届けて持ち主に返せよ」
数分後返信が届いたのだ。
「嫉妬おつ」
全く知らないやつからのコメントだった。その一分後にまた別のコメントが流れてきた。
「いるんだよねこういうやつ?」
は、俺はスマホの画面を見ながら声に出していた。
「いや俺は酔っていて携帯電話を落としたの。で、俺の画像ファイルから勝手にアップロードしたのこいつだから。犯罪だよ。犯罪」
俺のコメントが火を付けたのか、赤いランプが止まらなかった。
「長文」
「中身なさそうなコメント」
「嫉妬の権化」
「底辺の僻み」
「なんならあなたが動画を流してみれば、どうせスライム相手にひよってる姿を晒すだけだろうけど」
「見くびってんじゃねえよ」
最後のは俺の発言だ。俺は急いで家を出ると、ダンジョンに向かおうとした。撮ってやるとも、特大のボスを倒して恐ろしい光景を目の当たりにさせてやる。
ダンジョンに入ると、魔法書をアイテムボックスから引っ張り出した。使用すると、洞窟内に飛ばされた。たしかここのボスはキングジェリーという中途半端なボスだった。俺はもう一度ボス部屋に飛べる魔法書を使用する。5つ目で、エンシェントドラゴンと、時空の魔法使いの部屋に飛ばされた。参ったな。こいつらはまだ、攻略途中で投げ出したやつらだ。あまりにも理不尽な行動をされるため、諦めたボスになる。
「まあいいや」
俺はカメラを設定する。剣を抜き、最大火力を誇る魔法を剣に付与した。
「魔法剣、ギガントフレア」
エンシェントドラゴンの骨の体躯が飛んでくると一気に詰め寄り、斬り捨てた。と思ったら時間魔法を使われ、エンシェントドラゴンが復活する。先に時空の魔法使いを倒そうとしても、エンシェントドラゴンの身代わりという特性で、こいつが死ぬだけだった。そして時空の魔法使いに復活される。
動画時間は2時間にもなり、俺は撮ったものをそのままアップロードをした。顔は動画の編集で自動的にモザイク処理しておいた。動画がアップロード終了になると、ベッドの上で寝転んだ。今日は疲労が溜まる1日だった。コメントとの格闘とか、俺の携帯電話を盗用したやつとか。本当に許せないよな。
コメントは埋もれていて、赤いランプが付くことになったのは1時間後の話だった。俺のアカウントにある動画にコメントが殺到していたのだ。
「本物だった汗」
「まじで?」
「ええええええ、エンシェントドラゴンと時空の魔法使いって何なの?」
「めちゃくちゃ見応えあるんだが、顔出ししろや。化物」
コメントは1時間で、二百件にのぼった。
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