第65話 魔女、属性魔力を語る

 移動以外の時間は、カルロにアーサ、リリやアルバスさんと護衛の騎士の方々前衛組には、怪我をした時用の下級ポーションを渡して、ひたすら魔纏まといの練習をしてもらっている。


 一方手持ち無沙汰な後衛組、アデレートさんとセーランの二人には魔術を教えることにした。まずはセーランの意識改革からだね。神官は魔術とは相性が悪いと思っているようだけどそれは間違いだということを教えようと思う。


「セーランはどうして神官と魔術の相性が悪いと思っているのかな?」


「それは洗礼を受ける時にそう教えられたからです」


 まあ想像通りというかそんな感じだろうとは思っていた。


「まずは、その考えは間違ってると言っておくよ。んーと、そうだね、ひと種は何属性持っていると思ってる?」


「属性ですか? そもそも人の魔力に属性なんてあるのでしょうか?」


 そこからかー、そこからなのね、神官だからそういう考えなのかな。


「ちなみにアデレートさんはどう思います?」


「そうね、得意な属性、不得意な属性、あとは全く使えない属性があるから2個か3個と言った所かしら」


 魔術師であるアデレートさんでもその認識なのね、どうやら師匠が森に引きこもっている間に色々知識が失われてるみたい。まあ知識があっても使えないものは使えないし意味ないとも言えるけどね。あるぇ? なんだか魔纏と同じ流れを感じてしまうね。


「よし、少しお勉強しましょうか。まず人種の持つ魔力属性の数だけど実は全属性を持っています。火水土風光闇の6属性だね」


「そうなのですか? でも全く使えない属性もありますけど」


「そうだね、相性と言っていいのかな、血筋や性格と密接に関係しているから偏りがあるのよね。突出している属性もあればほぼ皆無と言っていい属性もあると言った感じだね」


 人種は全属性を持つのだけど、魔物は体内の魔石に左右されるので魔物自体は無属性とも言えるかな。他には精霊と呼ばれるものは単一属性になる。変わっているのが龍種かな、火水土風のどれか一属性プラス光か闇のどちらかの属性が均一のダブル属性となっている。


 人種は全属性を持っているからすごいと思われそうだけど、大体の人は偏りがあるので特化している精霊や龍種にはどうしても劣ってしまう。人種は多くて三属性の魔術を行使できれば上出来だろうね。ちなみに合同魔法なんかは中心となる人物の属性に依存するので、魔力を渡す者の属性は関係ない。


「セーランは風神の洗礼を受けている上に、その髪色から血筋的には風属性と光属性が得意な感じかな。だから風系や光系の魔術を使う場合は殆ど魔力の負担なく使えるね。あとは風と光の祝福も負担は少ないはずだよ」


 セーランは血筋的に光属性が多い家系なのだろうけど、なぜ風神の洗礼を受けているかに感しては血筋と本人の育ってきた環境、それと性格やそれまでの行動の結果が風属性に傾いたからだろう。


 普通の人種は、血筋よりも生まれてからの環境や性格で属性の傾きが変わったりすると思ってもらいたい。あとは意図して傾かせたい属性に合わせて魔力を使っていると微々たるものだけど変化する。


「魔術を使おうとすると、なにか引っかかりのようなものを感じるんです、それは風系の魔術のほうが大きいかもしれません」


「例えば好きな物って手元においておきたいと思わない?」


「好きな者ですか、それは(どこかに閉じ込めてずっと愛でていたい)、そうですね」


 物って言ったはずなんだけど、セーランはカルロを見つめながら不穏なつぶやきをしている、ヤンデレかな? セーランってヤンデレさんだったのかな? うん聞こえなかったということにしておきましょう。


「こほん、それはねセーランの中にある風の属性魔力を、セーラン自信が無意識に外に出すのを嫌っているからだよ。好きな物は手元においておきたいのと一緒で、風属性の魔力を使いたくないって思ってしまっているの」


 魔術の仕組みとして体内にある魔力は各種属性に分かれていると思ってもらいたい。属性に分かれているといっても明確に分かれているわけでもなく、魔力は魔力なので、魔導具などで消費しても属性によって効果が変わるということはない。


「だからね、セーランは自分の中の風属性を意識して魔術を使ってみるといいよ」


「わかりました、やってみます。えっと……何が良いでしょうか」


「風の刃」


 近くの木に向かって飛ばした風の刃は木に少しだけ傷をつけて消えた。


「これで良いんじゃないかな」


「……風の刃」


 セーランが少し集中するように風の刃の魔術を使った。同じ木を狙ったようだけど、セーランの風の刃は私よりも威力が強かったようで、私の時よりも深い傷をつけている。


「出来ました、体内の魔力にお願いするように使えば引っかかりもなかったです」


 神官だからお願いしたってことかな、まあ違和感なく使えたならセーランにとってはそれが正解ってことだろうね。


「神官でも魔術をちゃんと使えるってことはわかったかな」


 セーランは自分の手を見つめながら頷いた後、試すように風の刃を使って練習をし始めた。後ほど風の魔術をまとめた書物を渡してあげましょうかね。


「エリーちゃん、少し気になったのだけど、他の属性の魔術は使えるのかしら? やはり皆無だと無理なの?」


 アデレートさんが聞いてきたので答えることにする。


「そんなこと無いですよ、皆無だとしても使えます。そうですね、まずは自分の中に全属性の魔力があると自覚しさえすれば、後は多めに魔力を消費するだけで使えます。本人にしか配分はわからないので色々試すしか無いですね」


「そうなのね」


「それとですね、皆無に近い属性魔力でも使い続ければ配分が変わることがありますので、使いたい属性があれば積極的に使い続けるのが良いですよ」


「ありがとうエリーちゃん、この歳になっても新しいことを知るのって楽しいわね」


「その気持は少しわかりますね」


 見た目からわかるように、カルロは火属性アーサは水属性に相性がいいのだけど、二人共魔力量が少ないので魔術の発動までいけない。魔術師になるには属性の相性どうこうよりも結局魔力量が大事ってことだね。


 ちなみに私の属性配分は、全属性均一なので相性は存在いたしません。全属性均一化は師匠に散々指導された結果こうなったのだけど、もしかすると魔女になる条件の一つだったのかもしれないと今更ながら思いました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る