【第二章】テンプレな学園事情

【テンプレその一】此の世界における通学手段

 なってしまった。十五歳に。そう、学園に入学できる年齢である。そして、来てしまった。学園が始まる季節が。さらに、終わってしまった。馬車の準備が。非常に悲しいことに、私達は今から学園に向かうのだ。


 無能なクソ親父やら嫌がらせをしてくる義母がいるのに、私達に馬車が用意されているのはマリアナ海溝より深い訳がある。嘘だ。浅い理由である。兄の采配だ。時は少し遡る。





「なあなあ」

「どうしたの?」

「俺、気づいちまったんだよ。新たな問題に」

「なににさ」

「学園の寮から通うか、はたまた自宅から通学するか」


 ふうむ。寮か自宅通いか。正直なところ、どちらもよく見るパターンすぎて脱テンプレは難しい。いっそのこと野宿しようかな。秒で心が折れそうだけど。私達、今世では生粋の引きこもりだし。


「そこで俺は考えた。俺達って、いわゆる虐げられ系の枠じゃん」

「まあそうだね」

「そういう枠のキャラは大抵、実家から抜け出すために寮に行く」

「つまり、私達は実家から通うってことだね!」

「「じゃ、兄にその趣旨を伝えるか!!」」


 なお、すっかり兄は私達の保護者枠である。クソ親父?あんなの論外だよ。


「もともと貴方達はこの家から通うことになっていますが?」

「「マジかよ。わざわざ伝えるまでもなかったのか」」

「寮の部屋数は有限です。だから寮を利用するのは辺境や領地で生活しており、通学が困難な生徒が優先されます。その点、貴方達は王都暮らしですし」

「「オッケーなるほど理解」」

「口調をきちんとしなさい」


 まあ、すんなり通って良かった。兄を説得するの大変そうだし。


「というのは半分くらい建前で」

「「え」」

「寮暮らしをすれば、その分学園で過ごす時間が長くなる。そうなれば付け焼き刃のマナーも持たずにボロがでてしまいます。それだけは何としてでも避けなければ」


 泣くよ?私達の信用度がそんなに低いだなんて。弁解の余地もないけど。


「ということで、学園には家から馬車で通ってくださいね」

「「馬車!?ケチ臭い兄が馬車って言っただと!?」」

「失敬な。仮にも我が家は伯爵家で貴族ですよ。馬車くらい使わねば面子がつぶれます。別に、貴方達を配慮してる訳じゃありませんよ」


 なるほど。これが新種のツンデレか。需要がどこかわからないが。兄は顔は良いのでお嬢様方に需要あるのかもね。少なくとも私には需要がない。私はデレデレ派なので。




 そんなこんなで私達は馬車通学になりましたとさ。ちゃんちゃん。


「入学式、遅刻だけは絶対やめような」

「そうだね。ヒーローは遅れてやってくるみたいなノリもあるし、主人公属性って遅刻するもんね」


 あと普通に遅刻したらぶちギレられる。兄に。


「てなわけでレッツゴー」

「れっつごー」


 さあてやって参りました学園の敷地に。敷地内が馬鹿デカくてですね、敷地にはなんと道路がございます。年齢的に高校のような存在だと思っていたが、雰囲気的には大学のようですね。


 私はてっきり校門の前で馬車から下ろされると思っていたのだが、そうではないようだ。なんせここの敷地は馬鹿デカイ。入学式が行われる講堂までの距離も遠い。だからそこまで馬車でいくんだって。


「こうやって馬車に乗ってると金持ち気分味わえるな」

「その発言が既に貧乏くさいよ」

「実際に貧乏没落寸前貴族だけどな」


 自虐ネタをかましていると、馬車の動きが止まった。どうやら講堂に辿り着いたようだ。

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転生双子によるテンプレぶっ壊し大作戦 睦月 @mutuki_tukituki

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