谷村 亮太郎はどう暗躍していたのか。
Side 谷村 亮太郎
どうも谷村 亮太郎だ。
ここでは戦時中に何をしていたかを語ろうと思う。
だいたい、木里君や手毬さん、荒木君に朝倉さんなどが学徒動員されて戦場で戦っていた頃だね。
もっと分かり易く言えば敵味方を巻き添えにして核ミサイルを発射する前のお話だと思ってくれ。
☆
この世界はヴァイスハイト帝国と言う前時代的な覇権主義国家が武力侵攻を行い、その魔の手は日本にまで近づいていた。
当時の政権の体たらくぶりと軍事面を見て僕は異世界帰りの勇者としての能力と人脈をフルに使い、自衛隊の大敗後の情勢に備えた。
もちろん、自衛隊の被害を少なくするために色々と手を回したし、武力介入もした。
不本意ながら後に敵対する天王寺家の強権が役にたった。
天王寺けは基本は屑だが利益、不利益の損得勘定の仕方が日本政府や役人連中よりも上手い一大勢力だ。
だからと言って味方として付き合うにはリスクが高すぎる。
実際この判断は正解だった。
後に自分達の国を焼き、クーデターを引き起こして日本を牛耳ろうとする程の、悪の独裁者ぶりを発揮したのだから。
そうして頑張っているウチに待ち受けていたのは学徒動員だった。
日本政府は基本バカであるのは知っていたが、ここまでバカだとは思っていなかった。
この判断に呆れると同時にチャンスでもあった。
僕は平行世界の記憶共有により、どの人物がどれだけ強いかを知っているのだ。
より分かり易く言えばどのキャラクターにどのパワーローダーを与えれば戦果を挙げられるのかを理解しているのだ。
そうして僕は木里君や荒木君たちを裏から支援し、大阪日本橋の住民を武装組織化してアレコレと奔走した。
欧州に行ったのもその一環である。
やってることは転生なろう系主人公だ。
内政チート系とかそう言うのである。
なんとか状況をよくしていこうと思い、ヴァイスハイト軍と再編した日本の自衛隊との一大決戦で国の命運を決めようかと言うその時――バカはやらかした。
まさか敵味方もろとも核ミサイルで吹き飛ばすとは。
最初は正気を疑った。
本当は出鱈目であって欲しいと思った。
だが事実だった。
更に生き残った学徒動員兵の国家反逆罪の処分について「とうとうこの国もここまで腐ったか」と思った。
いっそこの手で滅ぼしてやろうかと思ったが、腐っても統治機関だ。
滅ぼせばより情勢が酷くなる可能性がある。
本当によく自分で自分を自制できたものだと思う。
この一連の戦争はアイン・ミレニアが黒幕だったが、まさか連中も日本がここまでバカだったとは思うまい。
天王寺 ゴウトク一派も大人しく隠居でもしていればいいのに、何を血迷って日本を統治しようとしたのか。
特に天王寺 ゴウトクを避暑地で殺しておけばよかったと何度後悔したことか。
実はと言うと天王寺 ゴウトクを殺さなかったのは政治的な生贄――ヴァイスハイト帝国と自衛隊の最終決戦の際に核兵器を使用した全責任を押し付けて政治的手続きを踏んで死んでもらうと言う、個人的な思惑もあったからだ。
誤算だったのは天王寺家の勢力と求心力が想像以上にあった事だった。
もう段取りはメチャクチャだ。
☆
現在の世界情勢だが、アイン・ミレニアの一件でヴァイスハイト帝国を含めた各勢力は再び動き出そうにも動き出せないのが現状だ。
その間に日本を建て直す。
それが僕のやるべき事だ。
――本音を言うと自分を家族として受け入れてくれた今の家族を戦火に巻き込ませないために奔走した結果である。
結果、家族を泣かせるハメになったが、これはまた別の話だ。
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