第16話 まさか、ゾンビ?

「それが…」

 まだケイタは動揺しているのか、目に見えて、オロオロしている。

中々答えがないので、アキは気をきかせて、

「それって、もしかして…知っている人?」

優しく聞いてみる。

「うん…オジサンだよ」

蒼ざめた顔をして、そう答える。

 そういえば、あれからオジサンのことは、見ていない。

どうしているのかなぁ~とは、思っていたけれど、そういえば名前も

知らなかった。

だから、死んでいる…と思ってはいたけれど、誰もあえて、口にはしない。


「嘘だぁ~」

 ドヤドヤと、カガリを除いた四人が、中に入って来る。

ガランとしたコンクリートの床の上に、確かに祭壇のように、その箱が

置かれている。

「黒魔術?」

「まさか!」

「吸血鬼?」

「そんなアホな!」

こわごわと、子供たちは中をのぞき込む。

「まさか、ゾンビ?」

「それはウソだろ!」

口々に、ピーチクパーチク好き勝手に騒いでいると、

「うーん」

中から声が聞こえてくる。

「ウソッ!」

「まさか、生き返った?」

 ギョッとして、四人は思わず、後ずさりをする。

てっきり、死んでいる…と思い込んでいた遺体が、間違いなく、

声を発した。

四人はズルズルと、団子状に固まって、

「ちょっと、どうする?」

「何とかしてよ」

「お前こそ」

もうすっかり、パニック状態で、互いを突っつき合った。

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