第12話 行こう!

 ユウジたちの話を聞いて、一番に喜んだのは、やはりケイタだった。

「な、そうだろ?早く行こうぜ」

ソワソワしながら、みんなの顔を見る。

「言っとくけどねぇ~

 何にも食べ物は、ないかもしれないからね!」

釘を刺すように、アキがそう言うと、

「じゃあ、行こう」

先頭にたって、歩き始める。

(まさか、アキちゃん…怒ったの?)

カガリは心配そうに、アキの後ろ姿を見つめる。

「地下室よね?」

クルリと振り返ると、アキの勢いに飲まれて、

「うん、そう…その階段の下のドアだよ」

ユウジが声をかける。

(アキちゃんって、こんな子だったっけ?)

一瞬、そう思うけれど…

おそらくケイタが、一人でパクパクと、差し入れのクッキーを食べた

あげく、足りない…と文句を言ったせいだ!

ひそかにユウジは、そう思う。

黙り込んだまま、アキの後ろをついて行く三人に対して、ケイタは

相変わらずのマイペースだ。

「楽しみだなぁ~今日は、何があるだろう」

一人、能天気な声を上げる。

 ショータは、ため息をもらす。

「おまえなぁ~少しは、デリカシーというものでも、持てよ」

「デリカシー?

 何だよ、さっきから。

 みんな、給食のない日の放課後みたいな顔をして」

何だか、分かりにくい例えを言う。

「おまえなぁ~」

ユウジも、呆れた声を出す。


「たぶん、何もないと思うわよ」

 アキがクルリと振り向くと…ガランとした部屋が見えてきた。

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