06 不幸の遭遇

※やんわり性的描写あります。苦手な人は注意。


 扉を開けた先にはとても広い空間があり、なみなみと湯気の立つ液体が注がれた、いや、今も注がれ続けている巨大な桶が設置されていた。

 その外側には桶をさかさまにしたような……椅子だろうか、が並び、その正面には複数の穴が空いた壁が上から3つ、間隔を空けて縦に並んでいる。


 それが何なのかが分からなかった私は振り返り、彼に尋ねようとするも、私は既に服を脱いだ状態、つまり、裸で、彼がいるだろう廊下まで扉を二枚隔てていることに思い至る。


 これでは声は届かないだろう。それとも、すぐ背にある扉を開けるか。


 少し葛藤した後、私は後ろの扉をほんの少しだけ開けた。




 そうか、洗濯か。

 そう思った俺は、廊下側から脱衣所のドアをノックし、中に誰もいないことを確認して、慎重に中を覗きながら入り、誰も居ないことにホッとした。


 いや、ノックの音が聞こえてなかった可能性があるからな。


 そして、その奥の風呂場とは別に、左のドアを開ける。

 こっちは洗濯場にしようと思っていた部屋なんだが。


 ここで取り出したるは浄化の魔石。


 いや便利過ぎは良くないんじゃなかった?と思うだろうが、俺は洗剤の作り方が分からないんだ。じゃあもうこれを使うしかないじゃん、というわけ。

 石鹸じゃ限度があるだろうしな。現代に暮らしていた日本人として、不清潔なのはちょっと看過できない。ということだ。


 もちろん、石鹸なしで過ごした例を見た知った嗅いだ、ということもある。

 さすがにアレは嫌だ。嫌なんだ。


 特に自分の匂いってのは、自分じゃ分からないもんだからな。自覚無く臭くなっていくとか嫌すぎる。人に会わないとしても嫌だ。

 それに、今後、誰かこの周辺を訪れないとも限らないしな。



 というわけで、風呂は石鹸と共に使うが、洗濯は浄化の魔石を使う。


 で、浄化の魔石を使って洗濯をするには、だが、水に入れて回す必要は無いと思うんだ。だって、水に浄化の力があるんだったらひたすだけでいいはずだから。


 そこで、特別な機械がらないんなら、服を浸すための容器と台だけで良さそうだ。という考えになって、平たくて長細い容器を3本ほど作って設置した台の上に置き、そこに水の魔石と浄化の魔石で水を流して溜めておく構造にした。


 もう、魔道具化は慣れたもんだ。それに今回は勢いをある程度受け止める長さがあるので苦労は無かった。事前に服を入れなければ、だが。

 服を先に置くと、噴出口の近くは水しぶきぐらい上がるかも……と考えて、その付近にはカバーを掛けて服を置けない構造にした。これで完璧だな。


 ついでに、浄化の力がいつまで続くのかという実験もするつもりだ。

 たくさんの水で希釈されることしか分かってないから、放置でどれだけつのかも調べてみようと思う。

 1日以上保つんなら、何回も水をそそぐ必要もなくなるしな。


 ちなみに、用済みになった水は湖に流すため、配管も済ませておいた。

 外側は既に屋敷建築時に済ませてあるから、内側だけで済む。設計図様々だな。



 さてと、そしたら俺の服……をここで脱いで置いてしまうと、彼女に全裸で会う変態になってしまうので、更衣室に戻って、彼女の服をちょっとばかし借りて効果のほどを試してみようと思う。


 なぁに、バレなきゃいいのさ。

 それに、女の子の服は女の子の服だが、さすがにめっちゃ臭い服には興奮できない。俺はそういうフェチは持ってないのだ。


 そういうわけで、ノックをしてもしもーし。うん、返事はないな。

 さてと、彼女の服が置かれた籠は……と物色していると、唐突に風呂側のドアが開いた。


 こういう時、マンガとかだと固まるんだよな。アレ、何で逃げないんだ?と思ったことが多々あるんだが。それをたった今体験している。

 本当に綺麗なモノをの当たりにすると硬直するんだなって。


 ホカホカと湯気の立ち上る彼女の体は別に不思議な光でディフェンスされてるわけじゃないし、全体的にほんのり上気していて、なんというか、うん。

 俺の視線は彼女の身体からだをふらふらと彷徨さまよい、最終的に顔へと向かって___


 そのドアの向こうの彼女とばっちり目が合った。でも体は動かない。サイテーにも、服の籠に手を伸ばした状態で固まってしまっている。確信犯ですねありがとうございます。


 一拍遅れて、彼女の目が大きく見開かれ___

 屋敷に特大の悲鳴が響いた。




「キャアアアアアァァァァァァ!!!」


 私は訳も分からず思い切り叫んでいた。

 絶対にしないと思っていたことをされたのだ。仕方がないと思う。


 一瞬の迷いの後に、服を取られてはたまらないと扉から出ると、彼は慌てた様子で顔を逸らし、手を引っ込めた。


「みみみ、見えてるってぇ!?」


「ふふ、服を!今服を取ろうとしたでしょ!?変態!!?」


「ごっ 誤解だ!!」


 彼は自分は違う!というように手を振っているが、さっきまでその手は私の服に掛けられそうになっていたのだ。見間違うはずがない。


「嘘よ!!私じゃなくて服に興味があったのね!!?」


「ひ、酷い誤解だ!!お、俺は服を綺麗にしてやろうとしてただけで」


「き、き、綺麗にって……へへ、へんたい!!バカ!!気持ち悪い!!」


「そういう意味じゃない!!洗うんだって!!これで!!」


 いやらしい想像が頭をよぎり、手を上げようとした私は、彼が突き出したものを見て振りかざした手を止めた。

 それは魔石のようだった。


「それで……どうやって?」


 私は混乱したままに、震える声で問いかけた。


「……これは浄化の魔石だ。これと水の魔石を併用して、汚れた服を洗おうとしてたんだ。ただ、俺が脱いだらそれこそ変態呼ばわりされると思って、アナンタの服を……でも、声も掛けずに取ろうとして悪かった!!この通り!!反省してるから許してくれ!!」


 彼は最初こそ冷静だったものの、徐々に口調を早め、最後には顔をらせたまま膝をつくと、そのまま下を向き、礼をするように上半身を下げ、額を床にこすらせた。

 ……ということはつまり、私の勘違い、ということ?


「………ぁ、えっと、顔を上げてください?」


「いや、ダメだろ。今顔を上げたら見えちゃうから。これ以上罪を被せようとしないでくれ」


「そ、そんなつもりは」


 と、言いかけて、そういえば一番最初に彼が言っていたことを思い出して、一気に顔が熱くなった。


「ちょ、ちょっと待って。そういえばあなた見えてるって」


「そりゃ不可抗力だろ!?アナンタがこっちに入って来たんだぞ!?」


「み…………見たの?」


 思わず問いかけると。


「………ないすばでぃだな」


「っ!?」


 私はひざを抱えてその場にうずくまるしかなかった。


***


※少し長いので注意

セルフレイティングに性的描写足しました。

裸の状態でどこまで書いていいのか分からなかったので、これが精一杯です。

この後でもう少し分かりやすい体型の描写が出てきます。


カクヨムではR-15が限度で、具体的な表現が出来ませんでした。無念。

以下、参考にした記事を載せていますので、気になる方はどうぞ。


参考(敬称略)

カクヨムにおいて性描写がどこまで許されるのか軽く考察してみた件

作者 春一

※リンク貼りOKか不明だったので検索してお探しください。

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