小説が商品になるかどうかはその独自性によるところが大きい気がするのですが、この作品は申し分ないです。完成度が高く、楽しく読むことができました。本作の独自設定「走馬灯について感動するかによって天国行きかどうか決まる」「その為に天使が走馬灯を作る必要がある」という理屈づけがばっちり決まっていて、映画を作る天使たちの世界に引っかかりなく入ることが出来ました。会話も軽妙でとても面白いです。会話のセンスは一朝一夕で身につくものではないので、これは宝物だと思います。最後も洒落がきいていますね。二人のキャラクターや会話からちゃんと感情の筋道を立てているので、大変納得のいく話運びだと思います。あと、文章が人に見られることをしっかり意識した読みやすさなので、そこも巧みさを感じました。こうした読者を意識した文体が、こうした選考の中で飛び抜けて輝いていました。
(カクヨム公式自主企画「百合小説」/文=斜線堂有紀)