第6話 80%の恋
彼のことは、初めから諦めていた。彼は一人だけを見るつもりはないし、
名前も知らないセフレがたくさんいるし、一度会ったら連絡しない。
そんな男だったから、本気で恋するつもりなんてなかった。
私も、楽しいことが好きで、恋愛の辛い部分は味わいたくなかった。
私にとって彼は、最高の遊び相手だった。
彼が私を気に入っていることは知っていたし、私も彼の顔が好きだった。
彼の誕生日にメッセージを送った。思った通り、彼はすぐに私を誘った。
適当な口説き文句と、適当な駆け引きを楽しんで、部屋の住所を送った。
思ったよりも、彼は優しくて、長い時間、一緒にいてくれた。
終わった後、「また会いたい」と連絡してきた。
自分は特別なのかもと思ってしまった。
彼と三回目の約束をしてから、前日の夜に既読無視された。
私なら大丈夫。そう思って、「会いたい」なんて送ってしまった。
彼からの返信はなくなった。
彼のことは80%くらい、ちょっと余裕があるくらい。
それくらいで、好きでいたかった。
私は遊びを知っている。彼が遊びだということも知っている。
痛みの責任は、自分にある。涙を流すのは、自分のミスだ。
彼のことを想いながら、理性がまだ問いかけてくる。
彼は、私の名前を知っているのだろうか。
解けない 日浦 杏 @sky0725
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