最近、野球観戦をした
何故って誘われたからなのだが、なにもこんな茹だるような、いや、茹だる暑さのなか長時間お外にいなくても。
とは思ったのだが、以前から生のスポーツ観戦というものに興味があった。
だからってこんな暑いなか…いや、何も言うまい。野球のルールも知らないくせして即「行く」と返事をしたのはわたしである。
夕方からスタートとのことだったが会場は自宅からそう近くは無いこととと、待ち合わせは入場時間に合わせたことでかなり前倒しになり、出発は炎天下を余儀なくされた。
前日に思い出したのだが、ハンディファンがものすごく不機嫌な音を立てるようになっていた。慌てて注文し夜には新品を手にすることができるとは、文明の発達たるやと感心し鞄に詰める。
当日も道中で熱中症対策を揃えつつ電車に乗り込んだ。この時点で既に背中を汗が伝っており、逆に電車内では冷気に冷やされ、この暑い・寒いを繰り返した。やっとこさ球場の最寄り駅に着くと凄まじい盛り上がりである。
駅、ぜんぶ、球団カラー。
しかしもはや、そんなことはともかく暑さが勝り、感慨に浸る間もない。野球ペーペーとしてその改札ど真ん中を足早に口を引き結んで突っ切る。
その先で待ち構えていたのは、太陽だった。
一体何度目なのか。「暑い。」
これから開戦する試合を心底楽しみにしている観客の笑顔も、音楽にあわせて踊り迎えてくれるマスコットキャラクターとチアのお嬢さんたちの弾ける空気感も、わたしの汗を止めてはくれない。むしろ熱気で増す。
こんなにも記せば伝わるだろうが、わたしの思い出は暑さに染まっている。
幸いなことは、わたしを誘ってくれた友人とすぐに合流できたことだ。屋根のある座席に着けば幾分マシだろうと思えた。
昨今多くのリアルイベントにおいては会場内のフードも重要らしい。わたしがお邪魔した球場も例外ではなく、そこかしこから美味しそうな匂いが漂っていた。
匂いの立つ食べ物というのは、大方が熱いのである。
これは迷う。これ以上汗をかけば熱中症にでもなりそうだった。
しかし友人とわたしは考えた。
水分ばかり補給してもね、と。素人考えだが塩味も必要なんじゃあないの、と。
そして塩味は酒が進むのだ。
ここまでで約10秒。
結論が出てすぐ手分けして調達したメキシカンなフードとアルコール。汗への躊躇いはもう忘れていた。
このあと試合開始まで続いたグルメ祭りを思えば、炎天下の移動も致し方ない。やっと強烈な、あの日差しを許した。
試合前には直近で活躍した選手の表彰があり、褒賞金が発表され、わたしのようなド素人が勝った負けたと一言で言うには烏滸がましいほどに彼らの「生活」を感じるなどした。試合をする選手たちは野球を愛している人が大半だとは思うが、その舞台に立つ理由はそれだけではないだろう。所属球団が勝つこと、さらには自らの生活をあらゆる面で向上させること、もちろん報酬待遇も含めて。それがプロの一面だとも思わされた。
酒片手に体感する拍手ではない。
そうは言っても負けちまえば切ないものである。
応援もなにもルールもろくすっぽ知らぬわたしを相手に、友人はよくあそこまで解説して粘ってくれたと思う。どこで点を取り取られたのか追いついてはいなかったのに、応援した球団が負けた瞬間だけは何故かわかった。
スポーツ観戦自体ひさしぶりで忘れていたのだが、我が家系は見た試合の大抵が負けるのだ。
こんなところで再認するとは思っていなかった。
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