第45話 深夜東京の6畳半/団子の魔法

〈1月12日〉〈深夜〉〈黄金家〉


4人共就寝の準備に入っていた頃


「プルプルッ」


黄金達4人のミニダブに連絡が来た。政府からだ。明日のダンジョンのことだろうか。


代表して、1番しっかり者である生可のみがミニダブを取った。


   『あ、もしもし〜?夜に申し訳ないね。』

『いえ、大丈夫です』

   『まぁ、大丈夫だよね、そりゃ。  (小声)俺の方が疲れてるのに電話してあげてるんだからさっ』

『……何か言いましたか。』

   『いや、なにも言ってないよ。んでさ、明日からのダンジョンやっぱ中止ね?わかったな…?じゃあな!』

『待って、何?どういうこと?』

   『まあそういうことだよ!これ以上聞くな!💢』

『は?ちょ、あの』


ツ―ツ―ツ―


電話は切られた。


「「「「はいー?💢」」」」


深夜東京の6畳半に、4人の怒号が響いた。


4人は怒りが収まらなかったが、とても眠い人が2名、眠い人が2名いたので、寝た。



🕒🕒🕒🕒🕒



〈1月13日〉〈朝9時〉


生可と愛鈴彩は、異変に気づいた。マンションの部屋の前から、聞き覚えのある声が聞こえてるのだ。


「……恵里〜星子〜、起きない〜?」


面白いことになるかも?と思った愛鈴彩が2人に声をかける。


「ねむぅー…」

「もうちょっとぉ…」


「星子姉ちゃん、恵里、きっと2人が喜ぶ人が来てるよ」


「えっ、本当!?」


生可の声に案外すぐに飛び起きて、玄関方向を見つめたのは星子だ。

星子は、楽しみがあれば頑張れるタイプなのだ。


「冷ちゃんとの予定はドタキャンされちゃったし、誰が来てるっていうのぉ〜…」


恵里はあまり気乗りのしない様子で、顔だけを玄関の方向へ一応向けた。


そんな4人に、今度ははっきりと、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あー、あー、いますか〜?聞こえてますかー?」

「機会を待てなくて来ちゃいました〜!」

「ほんとに、朝はやくにすみません…。けれど、知りたくなってしまいまして!」


「「琉月、初音、実由!?」」


4人はドタバタと部屋の外に出た。起きたばかりの星子と恵里は、パジャマの上にお揃いのジャージを羽織って行った。


「星子!?生可!?」

「恵里に、愛鈴彩も!?」

「4人とも、なんでここに!?……まあ、部屋から出てきたってことはそゆことだよね?」


流れるような連携で驚きと疑問を表す3人。最も、疑問は自己解決したようだが。


「うんっ!私達の家ここなんだ!」

「3人こそ何をしに?」


満面の笑みの星子。少し怪訝そうな生可。


「あのね、校長こーちょーに会いに来たの!」


と琉月。


「校長?」


「うん!うちの学校の校長先生!いや、けどまさか四つ子ちゃん達の隣に住んでるなんて!」


初音が恵里の疑問に答える。黄金たちのまゆがひそまる。


「隣…?まさか…その人って…」


「「「「羽田さん!?」」」」


「あ、やっぱ知り合いなのね?」

「お隣さんだもんね!」


黄金達は黙ってしまった。

そして黄金達は考えた。


星子(羽田さんって、いつも一方的に犬に話しかけてる人だよね…?)

生可(羽田さんって、いつもいつも奇声を発して、奇行に走ってる人だよね…?)

恵里(羽田さんって、ハゲてておじいちゃんでイミフなこと喋ってる人だよね…?)

愛鈴彩(………羽田さんって、いつもは認知症変人ムーブしてるけど、本当は立派なすごい人だから校長を務めてる…?)



黄金達が頭の上に?を浮かべながら、団子が校長な理由わけを考察し始めた。


「私達、さっきからインターホンに向かって喋りかけてるんだけど、校長先生いるのかな?」


実由が黄金たちに問いかけてみると、生可から返事が来た。


「今はきなこちゃんの散歩中だと思う。…そろそろ帰ってくるんじゃないかな」


少し遠くを指さして、恵里が言った。


「あ、帰ってきたみたいだよ!ほら、あれ!」


団子がきなこちゃんの散歩から帰宅したようだ。


「今日の散歩も楽しかったなぁーっ!!きなこちゃんも楽しかっt……琉月君に初音君に実由君じゃないかぁ〜どうしたんだい?」


あまりにも通常運転な団子に、黄金たちはポカンとしている。


「おっとぉ、お隣さんもいるっ!まさかぼくちんを待ってたのかっ!?」


(((ぼくちん……?)))

今度は琉月達がポカンとする番だ。

流石の団子も、生徒の前では一人称を「私」にしているのだ。


団子も一応、プライベートと仕事用で口調を分けている。

最も、根本的な性格が同じなので、あまりにも違いすぎる一人称を除けば、違和感はあまりないようだが。


(いっけなーい!校長モードにするの忘れてたっ☆ん゛、ん゛っ!)


「ああっと、皆、何の用だい?」


少し校長モードに戻った校長が問いかける。


「あ、あの、私達、昨日の校長先生との電話で話したことを早く知りたくて、来てしまいました!」


「今日、暇だったんで!」


実由が嬉々として説明した。五分は団子の部屋の前で待っていたようで、やっと会えたのが嬉しいのだろう。

申し訳程度に琉月も補足をしている。


「え、なになに?なんか面白いこと?私も知りたい〜!」


愛鈴彩も食いついたようだ。


「え、そうなの?くぅ〜〜〜、わかった教えてあげよう。お隣さんも来ていいよ。さあさあ上がって!!」


生可は少しどうでも良さそうだが、恵里と星子も愛鈴彩側なので、諦めて団子の部屋に行くことを決めた。

8人で団子の部屋に入った。マンションなので少し狭そうだが、寝るわけでもないし、座るだけなら無問題モーマンタイである。


「じゃ、せんせ!きなこちゃんのおしゃべりの秘密、教えてください!」


琉月が司会として進めて行くようだ。


「え、きなこちゃんって喋れるの!?」


ついてきたというのに何も知らない黄金達は驚いた。


「そうだ。きなこちゃんと私は毎日おしゃべりしてる!まあ、きなこちゃんが喋れるのは、正確にはきなこちゃん自身の能力じゃあないんだ。」


「え、どゆことどゆこと〜?」


「なんとだね…私の魔法は言語魔法なのだよ!!」


「「「「「えぇ〜!?」」」」」


素直に3人と星子、恵里が驚く。生可は平常心のポーカーフェイス、愛鈴彩はなんだそんなことかといった顔で、そんな6人を眺めている。


「ふふん!それでな、言語魔法は、言語に関する魔法なんだ。」


わかりきったことは言うなと言う感じで、7人全員目からハイライトが失せた。


「私はLv.10なんだが――練習でたどり着ける最高到達レベルなんだぞ!――集中して魔力をすべて使い切ってようやく作成することができたんだ!」


何を?という思いが全員の脳内に浮かんだ。まあ何を作ったか想像はつくが、肝心の目的語を団子が忘れている。

それに気づいていない様子の団子に実由がおずおずと口を挟んだ。


「えっと、何を作ったんですか?」


「え、だから犬語の翻訳機だってば」


やっぱり〜!という思いが脳を支配しつつ、一応、皆驚いたように振る舞う。

…愛鈴彩と生可はその限りではない。


「すごいだろ!驚いたろ!さ、さ、きなこちゃん〜!自己紹介を!」


ちなみに、ここまでずっと、きなこちゃんはテーブルの上で、尊大に待っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る