第31話 年越し

〈23:00〉〈一層目の満月が沈む〉


一層目を通り抜けた最後の月狼ルーメンを倒し終わった。琉月達は月狼ルーメンから町を守り切ったのだ。


「ねむ~い…月狼ルーメンを倒して、緊張の糸切れて、眠気が襲ってきちゃったぁ…」


安堵した恵里がとても眠そうだ。

生可が苦笑しながら代弁する。


「年越しまで起きてた愛鈴彩が空間魔法で魔物を感知して、年越しまで仮眠してるみんなを起こしてここに連れてきたからね。眠いのも仕方ないよ…」


「そーなんだぁ…ここから家近いのぉ?」


生可と初音が仲良くなったようで楽しそうに会話している。

そこに眠そうな星子がやってきた。


「めーっちゃ近いよぉ…絵梨果の家から徒歩1分ぐらい…💤」


来たは良いのだが、今にも寝そうで思わず恵里さえ笑ってしまった。


「お姉ちゃんw!寝ないでw!私も眠いんだよ!」


琉月は静かに皆の話を聞いていたが、ふと疑問を抱いた。


「…なんで家近いのに開明第三中学校――あ、絵梨果や私の行ってる学校ね?――に行ってないの?もしかして、私達と同い年じゃない!?」


その疑問に愛鈴彩が答える。


「いや、絵梨果と同い年の13才だよ。早生まれでもないよ?7月19日生まれの中 1。学校が違う理由はね、私たちは受験で金月銀花女学院に入ったから!」


「「「金月銀花女学院⁉」」」

「めっちゃくちゃ名門校じゃん⁉」

「難関受験校だよね!?」

「すご!頭良!!」

琉月達は驚いた。だが、生可にとってはたいしたことないようで、


「たいしたことないよ。」


と言い放った。


「またまたぁ~!皆すごいねー!…頭はそっちの方がいいのは認めざるを得ないけどさ、魔法はどっちが強いかな?そっちのLv.は?」


深い笑みを浮かべて愛鈴彩が答えた。

「ん~?全員Lv.30だよ?そっちは?」


「「「つっよぉ~!!!!」」」


またしても三人は驚かされてしまった。


琉「私…まだLv.25…」

初「Lv.20…」

実「Lv.21…」


愛鈴彩の笑みが一層深まった。

「ふぅん?ダンジョン行ってる?いやまあ25だし行ってるか。」


煽られて琉月がムキになった。

「私たちもダンジョンくらい行ってるもん!!」


落ち着いて愛鈴彩が返した。

「いつから行ってる?私たちは、あのお告げの日から3日後に政府に才能を見初められて「仲間にならないか?」って言われたんだよね~」


「は、はやぁ…」

初音が若干戦意喪失した。

だが愛鈴彩の追撃は止まらない。


「しかも、私の空間魔法がLv.15になったくらいで魔物の魔力を感じれるようになったから、地上でも魔物と戦うことができるようになってきたしね。」


「戦闘経験の差が大きいんだね…ふわぁ…」

もともと張り合う気のなかった実由は思わず関心してしまった。ついでに寝そうになってしまった。

琉月が焦る。


「あぁ…みんな寝ないでぇ…」



冷静なのは生可くらいだ。

「…今日大晦日だし、残り30分で2210年も終わりだよ。」

淡々と事実を述べた。


「えぇ!月狼倒したときは23:00だったのに!!」

実由も普段は時間管理がしっかりしているのだ。


「そろそろ帰ろっか。」

琉月の声でお開きとなることになった。



「ん…お姉ちゃん起こさなきゃ…あぁ私も寝そぉ…」


「じゃあ四つ子ちゃん達ぃ…初音ぇ…実由ぅ…バイバィ…」


「「「バイバィ…」」」

「💤…」

「またいつか」

「ばいばぁい!まったね~!」


「愛鈴彩は元気だなぁ…」


〈23:40〉〈幸野谷家〉


「ただいm」


「どこに行ってたんだ!!!!!!!」


琉月が帰ってきた瞬間、幸野谷太郎の怒号が響いた。

だが琉月はそんなものに恐れず淡々と答えた。


「紅坂ダンジョン。」



「…?月狼に備えて壁で囲まれていては入れなかったはずだが…。あぁ。今日がその日だったか。月狼が出てこられていないのを見て安心したか?」



琉月がキレた。

「ハァ?バカなの!?」


琉月は、眠いし疲れていて、しかも反抗期に突入していたので口が悪くなってしまった。


「月狼が本当にあの程度の壁から出てこれないと本気で思ってたわけ?思ってたんだろうね、政府は馬鹿だから!ハァ…私も政府の人だから、私までそんな大馬鹿だと思われるのに耐えられないわ」


「琉…月?」


「言っといたよね?月狼の毛皮は熱いって!木ぐらい燃やせるって言ったじゃん!!!じゃなくても『月爪』とかで木ぐらい斬り割けるっつぅの!ほんとに救いようのないバカでノーテンキのお気楽阿呆!私達と星子たちがいなきゃ町に月狼が降りて行ってたよ⁉夜の間に市民大量虐殺が起きても言いわけ⁉」


琉月が喋っている間は太助は面食らっていたが、喋り終わって7秒後、太助は理解した。


「つ、つまり…!!月狼が、出てきたのか!?⁉それで琉月達―― 琉月は実由ちゃんと初音ちゃんか。彼女たちを子供科から魔法省戦闘委員会特別戦闘員への昇格させるよう要請をしておこう ――と星子達―― 星子?…近くの黄金さん達か!あの人たちが来てくれたのか。良かったな。琉月たちじゃ月狼の大群は手に負えなかったろう。黄金さん達はLv.30だからな ――が月狼から町を守ってくれたのか。月狼がそんなに強かったとはな。ありがとう。ふぅ…政府に会議を開いて貰うべきか…。」


結美子(母)が台所からでてきた。


「琉月!どこいってたの!〜遅…ングッ」


太助が口をふさいだ。


「結美子!琉月はすごいことをしてくれたんだ!」


「ん〜?あらそうなのぉ。すごいわねぇ琉月~。けど、年越しそば伸びちゃうから早くしてちょうだい!あと7分で年越しよ!ハイっそばっ!」


いきなり出てきたそばを家族でかっこむ。




残り1分



残り5秒



琉「5」



結「4」



太「3」



琉「2」



結「1」



家「0」





琉「ハッピーニューイヤー!!」





幸野谷家が幸せな年越しを迎えていたころ、元宮家と栄木家では親が月狼のことをわかってくれず、夜出歩いたことについて叱られていた。


初音&実由「「なんでこうなるぅ〜〜!!」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る