第71話 復習だいじ。

目が覚めたらお布団にいてびっくりしたリンです、おはようございます。昨日の夜ご飯くらいから記憶が曖昧です。


〈おはよう。大丈夫か?〉

〈おはようディア。元気だし魔力も回復してるから全く問題なし。昨日寝た記憶がなくてびっくりしたけど。〉


〈食ってる時から危なそうだったからな。〉

〈疲れすぎて寝たの久しぶりだけど、スッキリしてるよ。〉


〈それはよかった。〉


ここ最近は体がかなり楽になってると思う。日本にいた時が弱すぎたんだけど、いっぱい動いて体力ついてきたし何より楽しいから気持ちが全然違う。楽しもうと思えるのってすごいことだ。


今日は昨日の復習で気配の出し方の練習とポーション作りをする。本当は外に出たいけど、下手して魔力すっからかんになって倒れるとか迷惑しかかけないし、予習・復習は大切。


畑で薬草を採って水やりして朝ご飯。今日はレイさんとナリアルさんが魔力操作を教えてくれるらしい。ご飯を食べたら地下に集合、よろしくお願いします。


「まずは威圧についてのお勉強です。」


『威圧』は魔力に殺気を含ませて敵を怖がらせること。殺気を出さなくても魔力の出し方次第では勝てないと思わせることも出来るらしい。ディアみたいな強い魔獣とかはそっち派。


体全体を魔力で包んだり、慣れたら体の前面だけに魔力を集めて強力な殺気を飛ばすこともできるみまいだけど、たぶん私は使わない。


私は無意識で気配を消しちゃうから、魔力を少しまとって存在感を出す練習をします。


「昨日はどうやりましたか?」

「魔力を大きく丸く出して、自分の体に合わせて小さくしていこうとしてました。」


「なるほど。レイ、身体強化はどうやって使ってますか?」

「魔力を全身に流れさせてそれを増やす。」

「それならまずは、全身に魔力を巡らせてみましょうか。最初に練習した時の用に、魔力を感じたら体をぐるっと一周させてみてください。」


これはたぶんできる。目を閉じてみぞおちから身体全体にぐるぐると回すと、温かくなる。


「今のまま、少しだけ魔力を増やしてみてください。」


少しずつ流れる魔力を増やしていくと、ストップがかけられた。


「今の魔力量を覚えておいてください。殺気は混じっていませんが、ゴブリンやオークなどの弱い魔物にとっては強敵と判断されるくらいには強く感じます。」


慣れるために少しの間ぐるぐる回してると、温かい毛布に包まれた感じがした。めぐってた魔力が1枚の布になって貼り付いた感じ。


「安定しましたね、さすがです。」


この毛布で包まれた感じが魔力をまとってる感覚なんだそうだ。


「初級冒険者は基本訓練として魔力を出さない練習をします。隠れても魔力でバレて襲われることもあるので大切なんですよ。リンさんは逆でしたけれども。」

「俺たちも全員ギルド登録した時にやってる。あとは場数ばかずをふめば自然と出来るようになる。」


「そうですね。そして温かく感じるのはリンさんの魔力の質によるものですので、必ずみんな同じではありません。私は水の中に入ったような感覚です。」

「俺は硬い鎧を纏うような感覚だ。」


その後は魔力を隠す方法なんだけど、これは特に問題なくできた。隠れようとすれば勝手に存在感がなくなるから操作もなにもしなくて大丈夫。


「少し休憩しましょうか。」


クッキーと紅茶で糖分補給。頭使ってないけど疲れてる。不思議だ。


休憩をしたら魔力操作の練習。ゆっくりでもいいから、同じ出力になるように繰り返し出したり消したり。使い方が身体強化に似てるから、レイさんにコツを聞きながらやった。


気づいたら出来るようになってて、少しなら増やしたり減らしたり調節出来るようにもなった。私は強いぞ!って思えは増やせるしやってて楽しい。


「明日も討伐依頼を受ける予定ですか?」

「うん。その予定です。」


「ホーンラビに慣れたらスライムを狩ってみてください。弱いですが動きが早いのでいい練習になると思います。」


そこからお昼までスライムについてお勉強。なんでも溶かすと言われるけど、包まれても中から切って出て来れるし溶かす速度が遅いから食事中によく狙われちゃうらしい。魔石は水属性で魔道具にも使われるからちゃんと売れる。


不思議なことにスライムは減ることがなくて倒しても次の日にはまたいるらしい。子どものお小遣い稼ぎと戦う練習にピッタリの魔物です。


お昼ご飯を食べたらちょっとお昼寝をしました。昨日の今日で疲れてるだろうし、練習をがんばったから回復させるためにも寝なさいと言われた。


程よい疲れは感じてるしお腹いっぱいですぐに寝れた。ディアに埋もれて幸せそうに寝るリンは誰がどう見ても幼い子ども。


存在を無意識に消せるということは、それだけ消さなきゃいけない状況に長いこと置かれていたということ。楽しそうに笑うしリン本人が全く気にしていないが、心配になってしまう大人たち。


出来ることもやることもぶっ飛んでるし中身は17歳らしいけど、見た目は可愛く幼い少女。


この子を何としてでも守ろうと再認識する大人たちなのでした。


リンちゃんはただ楽しんでるだけなんだけどね。

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