第35話 考える大人たち

____ナリアル視点____


リンさんが部屋に戻った後、リーダーたちと相談ですね。


「で、何があった?」

リーダーが紅茶を飲みながら聞いてくる。酒を飲まないあたり、真剣なのでしょうね。


「今日1日で水、土魔法の発動を成功させ、生活魔法についてはワンドを使ってほぼ完璧です。なるべく休憩を取らせましたが、並外れた集中力の持ち主でした。」


「午前中は1時間以上ずっと魔力操作を練習してた。大量の汗をかいても拭くことすらしてなかったから、気付いてもいないと思う。」


アルダも一緒に見ていたから、その異常さは理解しているはずです。


「魔力操作なんて大人でも15分やったら疲労困憊ひろうこんぱいだぞ?ぶっ飛んでんな。」


「不思議なんですよね。それに午後は意識して休憩を取らせて魔力の残りを確認させましたが、残り100を切っても集中力は変わりませんでした。」


「あれ?リンちゃん腹減り体質じゃないの?」


カルダが言うのは魔力の減りと空腹が連動する体質のこと。リンさんがそうだと分かったから軽食も準備していたけど必要なかったんですよね。


「そのはずなんだけど、声をかけないと水分とるのも忘れるくらいなんだよね。しかも暗くなってるのに気づいてなかった。」


帰ろうと声をかけた時は本当に驚いていました。


「集中力もそうですが、恐らく魔力順応型です。コツを掴むまで1日弱、それにディアさんがいるとしても自然回復力が高すぎます。」


順応型…魔法の発動がスムーズで、人より回復が早く魔力も増えやすい体質の人。この中ではカルダが当てはまる。


逆に反発型は魔力操作が苦手で回復も遅く、魔力量が育ちにくい。この中ではレイですね。


「どーすっかなぁ。この街にいれば安全だと思ったが、知られたら厄介だぞ。」


クソみたいな貴族に目を付けられたら、正直守りきれるか分からないのが現状です。


「養子申請か、保険としてすぐにでも家族関係登録を済ませたいところです。まだ8才ですからね。」


家族関係登録をしていれば、保護者として動ける分守りも固くなるはずなんです。


「養子にするならナルの親だろうな。もしもの時は頼めるか?」


「先に手紙を出しておきます。すぐにでも動けるように書類も準備してもらいます。」


〈養子申請と家族関係登録の説明をしてくれ。あと、なぜそいつの家なんだ?〉


今まで大人しくしていたディアさん。話を聞くために残ったのでしょうね。


「養子制度とは、その家の子として迎え入れる制度です。国に書類を提出する必要があるので、少し時間のかかる物ですが確実に守ることができます。」


続けろ、と頷かれるのでそのまま話す。


「家族関係登録とは、親のいない子供の面倒を見る大人を決める制度ですね。これは養子制度に負けてしまうので、どこかのクソ貴族から茶々を入れられる可能性があります。」


「ちなみに、ナルはこの街の領主の息子だから一応貴族ってことになる。3男だっけか?」


「4男です。」


〈貴族の息子がなんで冒険者なんてやってんだよ〉


「ディアさんは人間社会に詳しいですね。理由はうちの親が元冒険者だからですよ。好きなことやってた人たちなんで、私達も自由にやってます。」


上の兄3人も街から出て好きに動いてるんです、と説明したら納得してもらえました。


「明日にでもリンに聞いてみるか?」


まだ会って数日の私達を信用、信頼してくれるでしょうか。


〈お前らは家庭を持たないのか?人間はつがいや家族と暮らすものだと思っていたが。〉


「私達はちょっと特殊な冒険者なんですよ。もちろん家庭を持つことを禁止されている訳では有りませんが、ここは伴侶を不要と思っている変わり者が集まってます。」


〈家から離れる期間はどのくらいあるんだ?〉


「年に数回ですが3日から5日程の任務があります。フランクはずっとここにいますが、1人でカバーするのは厳しいので、その時の為にも他の信頼できる者と関係を繋いでおきたいんですよね。」


〈あいつは賢い。事情があると説明したら遠慮はするだろうが納得するだろ。〉


「実は17才なんだもんな。見た目は5才くらいだけど。それにずっと敬語だしもっと気楽に接して欲しいよなー。」


あーっと仰け反るカルダ。彼の言う通り、リンさんは8才には見えない。それなのに丁寧な言葉遣いだから少し違和感があるんですよね。


「それも含めて明日話してみましょうか。夕飯の後で良いですか?」


「俺は明日ギルドに行く。ギルマスにも話を通すからレイも来てくれ。カルはどうする?」


「俺は魔力操作用のリングでも作るよ。常にナイフ片手じゃ行動しにくいだろ?元々作る予定だったしじーちゃんの所に行ってくる。」


リンさん用のリングは必要ですね。思ったより早いですが、任せましょう。


「明日は攻撃魔法を教える予定なので、私とアルダは一緒に地下にこもります。」


〈俺も明日はリンのそばにいる。魔力が減れば分かるし、さすがに離れてると心配だ。〉


とりあえずの予定は決まったのでここでお開き。

各自風呂に入り寝ることにする。



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