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「二葉!!朝!!!」
まだ眠い中、ラスボスの声で目を覚ます。
ラスボスはスーツを着て、髪の毛のセットも終わっていた。
「何時・・・?」
「時計見ろ!!」
ラスボスが、ベッドの横の棚に置かれた時計・・・針が動いている時計を私に渡してきた。
それを見ると、7時・・・。
会社まで近いので、8時半に出れば間に合う。
ゆっくりと起き上がり、リビングへ。
リビングでは、朝から沢山の音が重なり合い鳴っている。
テレビの2つの画面からは、チャンネルの違うニュースが。
タブレット2つからは、英語の映画が。
そして、朝の1番大きな音は・・・オーケストラの音楽。
私もそれらの音を聞きながら、ダイニングテーブルにのっていた朝刊を3冊手に取った。
昨日と同じように、ダイニングテーブルの椅子に座るラスボスの隣に私も座る。
朝刊を広げ、読み上げていく。
喋り口調で・・・夜よりも早口で読み上げていく・・・。
1時間、読み上げていく・・・。
1時間読み上げた後、私は朝刊を畳み、テレビやタブレットを止めていく。
オーケストラの音楽だけは小さめに掛けた所で、ラスボスが立ち上がり・・・ソファーに座った。
ソファーに座ったまま、背もたれに背中をつけ頭も。
そして、ゆっくりと目を閉じた。
ラスボスが目を閉じて数分間はジッとしていた。
それから静かに動いて、朝の準備をしていく。
8時半までに準備を終え、ソファーに座り目を閉じるラスボスを見る。
ラスボスでもある仁は、コミュニケーションスキルのレベルが高い。
相手の表情や身体、その微妙な動きを読み取るのは勿論、仁自身の喋りのレベルが高い。
でも、それ以上にレベルが高いスキル。
それが、“耳”だった。
それがコミュニケーションを取る上で発揮されている。
そして、それは“情報”についても。
耳から入った“情報”は、全て覚えられる。
それがコミュニケーション上の“情報”であればある程、覚えやすくなるらしい。
備わっていたスキルをレベルアップさせていき、今ではこんな感じになっている。
これは、社内で私だけが知っているラスボスの秘密なわけではない。
社内のみんなが知っている。
社内のみんなは、ラスボスの・・・“社長”のパーティーであるメンバーだから。
ラスボスは、仕事での外出をする時は必ず誰かを連れていく。
聞きながら、喋りながら、文字を見るのが苦手だから。
文字だけでのやり取りは出来る。
でも、先方に書類を出された際、それを見ながら聞いたり喋ったりするとスキルが最大限使えない。
ラスボスが28歳の時に会社を設立して、今年で8年目。
信じられないことに、離職率が0。
誰も“社長”のパーティーを抜けていない。
どんなにブラック企業だろうと、誰も。
女の人が結婚し妊娠、出産をしても必ず戻ってくる。
時短勤務やパートなどに雇用形態を変え、在宅勤務に変えてまでも、必ず“社長”のパーティーに戻ってくる。
それくらい、“社長”はパーティーの先頭に立つ能力がある。
パーティーの“指揮”を取るスキルのレベルが、高い。
そんな人が選んだ結婚相手が、私だった。
“彼女”や“婚約者”、それらの設定が何もないまま、私は結婚相手として設定された。
ボスと仲が良かったから。
私の何かが、ボスを倒したのだと思う。
そして、ボスはラスボスとなった・・・。
私は、仁と夫婦になりたい。
ちゃんと夫婦になりたい。
攻略する・・・。
ラスボスを倒せるように・・・。
ラスボスを攻略して、指輪をゲットする・・・。
そして、ゲームをクリアさせる・・・。
恋愛ゲームは苦手だけど、RPGは得意だから。
このゲームを、クリアさせて・・・ちゃんと夫婦になる・・・。
そんなことを考えていると、8時半になった。
ソファーに座り目を閉じているボスの肩をソッと揺らすと、ボスが目を開け・・・すぐに私を見た。
そして、ギラギラした目で笑い、立ち上がった。
「行くぞ!二葉!!」
「は~い!!」
ラスボスの後ろについて歩く私も、“社長”のパーティーの1員。
でも・・・
ラスボスが私の腰に手を回し、駐車場までの道を歩く・・・。
結婚相手の設定に変わると、そんなこともしてくれるらしい。
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