フィーちゃん

 目が覚めた。……私の腕の中には、もふもふした感触がある。

 ……夢じゃ、なかった。…….取り敢えず、ベッドから起きよう。……起きないと、また、眠っちゃう。思いのほか、この子犬が暖かくて、気持ちよかったから。


「わふ」

「うん。おはよう」


 子犬相手にそう言いながら、子犬とベッドから一緒に起き上がった私は、ダンジョンコアに触って、一応、あのオークがどこかに行ってないかを確認した。

 すると、仁王立ちで微動だにせず、二階層に守護神みたいな感じで立っていた。

 

 おぉ、いいね。食べ物とか、必要ないらしいし、このままこのオークにはずっとここにいてもらおう。

 ……オークとこの子犬は大丈夫だとしても、私は、そろそろお腹が空いてきたな。……昨日からずっと、寝てるだけだけど、お腹が空いてきたんだから、仕方ない。

 数少ないDPだけど、腹が減っては戦ができぬ。一番安いやつを買おう。

 

 そう思って、私はダンジョンコアに触れたまま、ネットショッピングの時のような画面を開いて、食べ物、と書いてある所を開いた。

 うわっ、色々あるな。でも、今は安いやつがいいから……これかな? 

 私は色々見て、その中から一番DPが安かったカップラーメンを買おうとしたんだけど、直ぐに思いとどまった。

 危な! よく考えたら、これ、罠でしょ。だって、お湯が無いんだもん。カップラーメンを食べるには、お湯も買わなきゃダメだったってことでしょ? 罠でしかないよ! 絶対今は買えない。

 ……それだったら、普通にこのコンビニのおにぎりとか、サンドイッチが一番安いかな。

 

 私は罠を回避しつつ、鮭おにぎりをDP50で一個買った。……ほんとはもっと食べたいけど、節約してかないと。

 そんなことを思いつつ、私は袋を取って、おにぎりを食べ始めた。 

 美味しい。

 ……美味しいんだけど、地面が冷たい。

 コンビニのおにぎりって、海苔がボロボロとこぼれると思うんだよ。だから、ベッドに座りながらは食べられないし、仕方なく、床に座って食べてたんだけど、おしりが冷たい。……クッションをDPで……い、いや、だめだめ。今、節約してかないとって思ったばっかりなんだから。


「子犬、おいで」

「わふ!」


 私は寒かったから、膝に子犬を呼び寄せた。

 よし、これでおしりは冷たいけど、膝は暖かいから、クッションを買うなんていう愚行に走らずに済む。

 

 ふぅ、美味しかった。……全然お腹いっぱいにはならないけど。

 まぁ、それより、そろそろ、この子犬の名前でも決めようかな。暇だし。……子犬子犬って呼ぶの普通に不便だし。

 でも、私名前考えるの苦手なんだよね。……身近なものから考えてみようかな。

 ……えっと、今あるものは、おにぎりのゴミと、ベッド、ダンジョンコア……後は、オーク? まぁ、ともかく、こんなものだ。

 この中で一番可愛くなりそうなのは……おにぎりかな。うん。流石にそのままおにぎりって名前はつけないよ? ……おにぎりの具、鮭、鮭ちゃん? いや、それもないな。……鮭、魚、フィッシュ……フィーちゃんとか? うん。これは可愛い。


「よし、今からあなたの名前は、フィーちゃんね」

「わふ? わふ!」


 よく分からないけど、多分、喜んでくれてるね。


「よし、フィーちゃん、これから一緒に、引きこもりライフを頑張ろうね!」

「わふ!」


 そう、フィーちゃんと一緒に、決意を固めた瞬間、頭の中に警報が鳴り響いた。

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