第122話 汚名返上
なっちゃんに化けてバトルロワイヤルに参加しよう作戦。当然だがバレるわけにはいかない。特にあーちゃんには。あーちゃんにバレてしまった場合、ひょんなことから俺の正体が露見しかねない。なっちゃんに化けてるけどれーくんはれーくんだよね理論により、偽なっちゃんに向かって人前でも俺の名前で呼びかねない。レナちゃんにはバレても多分問題ないけど、そうするとあーちゃんが自分だけ教えて貰えなかったとヘソを曲げてしまい、機嫌を直すのに何をやらされるか分かったもんじゃない。
つまり誰にもバレてはいけないシークレットミッションなのだ。
帰りも瞬間移動なら楽だったのだが、残念な事に無理だったので車で天獄殿まで移動する。小雪ちゃんの出待ちしてる信者とかいると思ったけど全くいなかった。流石万生教信者、よく訓練されてるぜ。天獄殿に到着したのでブラコンモンスターズと別れる。紗夜ちゃんとはすっかり仲良くなっていてなにより。しかしひまわりちゃんだたったか…あーちゃんという実質妹キャラがいたから事なきを得たが、いなかったらやばかったな。紗夜ちゃんと小雪ちゃんが一緒にいたのも運が良かった。もし一人の時に遭遇していたら、家にけも耳メイドが増えていたかもしれん。こっちに来てから調子が狂いっぱなしだったが、どうやら運が向いてきたようだな!!
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「おかえりれーくん!万魔様と紗夜ちゃんもおかえりなさい」
「うむ。今帰ったぞ」
「ただいま帰りました、ありす御義姉様」
「…ただいま」
おかしいな、ここは天国の間の筈なんだが。なぜ普通にあーちゃん達がいるのだろう。確かに何時でも来て良いと小雪ちゃんが言ってた気もするが、順応早すぎない?ここ万魔のお部屋だよ?…まあいいか、小雪ちゃんが問題ないなら口に出す事でもないだろう。それよりもなんでここにいるんだ?バトロワ参加者は軟禁されてる筈なんだが。
「あーちゃん、出歩いてるけど大丈夫なの?もしかしてあーちゃん達バトロワに参加しないの?」
参加してくれないと俺のプランが崩壊するんだが…
「するよ?万魔様の所に行ってきますって言ったら普通に許可が出たけど」
まじかよ…天獄殿の監視ザルすぎじゃない?いや、小雪ちゃん絡みだから許可されたのかもな。流石に天獄殿内でブラフやハッタリで万魔様に会いに行くなんて言える奴は存在しないだろうし大丈夫か。居たら自殺志願者としか思えん。
「私たちは他の皆さんと部屋が違いますし、天獄殿から外には出ていませんから問題ないと思いますよ」
それもそうか。ここも天獄殿なのは間違いないし。ぶっちゃけバトロワさえ出来れば後はどうでもいいからな。
「それよりもビックリしたよ。織田さんの登場にもビックリしたけど、天獄杯がいきなりバトルロワイヤルになるんだもん!」
「あの痴女がれーくんに喧嘩売った時は、ありすが暴走しないか冷や冷やした」
織田遥を痴女呼ばわりとは、なっちゃんやけに辛辣だな。やはり格差が…なっちゃんはなっちゃんで希少性があるんだから胸を張ればいいのに。張るものがないかもしれないが。おっと、これからなっちゃんにお願いしないと駄目なんだから不埒な考えは止めておこう。
「そんなことしないよ。私をなんだと思ってるの奈っちゃん。それにれーくんが居たのは知ってたからね」
「ありすに教えられるまで、わたしはいるのが分からなかった」
「普通分からないと思いますよ。見つけるありすがおかしいんです」
「ふふん。れーくんを見つけるのは得意だからね!あのくらいの距離ならすぐ分かるよ!」
まじか。やはりあーちゃんは侮れないな。これは念には念を入れないと即バレしかねんぞ。
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外出禁止なのであーちゃん達はそのまま天国の間で時間を潰し、俺も外出するのが面倒なのでそのまま天国の間でダラダラ過ごす。チラチラこちらを見ながら温泉に入ろうかなーとか聞こえよがしに呟いてくるのを無視している内に良い時間になったので、あーちゃん達は自分たちのお部屋にお帰りの時間である。一体あーちゃんとなっちゃんは今日だけで何回温泉に入ったんだろう…っと、なっちゃんとだけ話をするタイミングが混浴以外なかったので全く出来なかったが、今なら大丈夫だろう。
「あ、ちょっとなっちゃんだけ帰るの待ってもらって良いかな?大事な話がある」
「奈っちゃんにだけ大事な話?れーくんまさか…」
「何を考えてるのか分からないけど違うから。バトルロイヤルの件でちょっとね」
「…あー、私たちも心配はしてたんだけどね」
「ありす達は先に戻ってて」
「うん。それじゃあれーくん、万魔様。おやすみなさい、また明日ね」
「おやすみなさい、れーくん、万魔様。それでは失礼します」
「主様、万魔様。お休みなさいませ。また明日こちらに御義姉様方とお伺いいたしますので」
「うむ。また明日の」
「皆お休み。また明日ね」
あーちゃん達は詮索せずに素直に部屋へと戻る。心配してた、か。確かに戦闘手段のないなっちゃんにバトルロイヤルは酷だろう。戦うどころか見つかったら終わりのかくれんぼ、しかも勝率0のクソゲーである。あーちゃん達は心配した俺がなっちゃんが参加辞退するように説得すると思ったのかもしれない。まあ似たようなもんだが。
「それでれーくん、話ってなに?」
「うん。バトルロイヤルだけどなっちゃんも参加するんだよね?楽しみにしてたら申し訳なんだけどさ。なっちゃんには
「良いよ」
参加せずに…ん?」
「バトルロイヤル。れーくんが私の代わりに出るんでしょ?どうやるのかは分からないけど。おそらく入れ替わりかなにかで」
おおぅ…なんで分かるんだ。え、そんなバレバレの作戦なのかこれ?まじかよ、どうすんだこれ。会場ごと吹っ飛ばしてなかった事にするしかないのか?
「心配しなくても、れーくんがヘマしない限り誰も気づかないと思う。このバトルロイヤル、決めたのはれーくんだよね?」
「うん」
「だと思った。万魔様がわざわざあの痴女の言い分を聞くとは思えない。そもそもいきなりそんな事はしない。ならバトルロイヤルに変更したのはれーくん以外ありえない。わざわざそうした以上、れーくんは参加するつもりのはず。でも参加条件は天獄杯出場選手のみ。どうやって参加するか分からなかったけど、わたしに声をかけてきた時点で予想がついた」
「ほう…たしかにお主の言っておった通り、奈月なら問題なさそうじゃの」
「ありす達はれーくんが辞退する様に説得すると思ってるだろうけど、それならわたしにだけ話す必要がない。ありす達もいた方が説得しやすいから。バトルロイヤルに関係して、わざわざわたしにだけ話したい事といったら、それくらいしか思いつかなかった」
恐るべしなっちゃん、ここにきて致命探偵の汚名を返上してくるとは…!ここまで冷静に鋭い推理力を発揮できるのに、なぜあーちゃんと一緒に暴走してしまうんだ。
「そこまで分かってるなら話は早い。なっちゃんの想像通りだよ。なっちゃんが良ければ、俺がバトルロイヤルに参加する為に入れ替わりを受け入れて欲しい。当然それに見合った報酬は弾むよ。俺に出来る事でだけどね」
「その前に、大丈夫だと思うけど確認がしたい。わたしと入れ替わるとして、絶対にばれない?万一入れ替わりがバレた場合、れーくんが女装してまでバトルロイヤルに参加した変態として世間に認知されて、一生言われ続けるリスクがある。わたしは問題ないけど、ありすやレナはショックを受けると思う」
「万魔の後継者が女装癖の変態と世間に周知された場合、儂はともかく万生教徒が何をしでかすか分からんぞ」
ぐぬぬぬ…俺だって好きでこんな事するんじゃない!あくまで高度な柔軟性を維持して臨機応変に対応した結果が、なっちゃんに成りすます事だったんだ。俺だって好きで女の子になるわけじゃないんだ!!
「…心配する気持ちは分かるけどね。大丈夫だ問題ない。魔法は全てを解決する。そして俺は魔法に関してはちょっとしたもんだと自負している。証明しよう、全く問題ないという事を!!」
見せてやるぜ、俺のチートを!自剋魔法、その真価の一端をな!!
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