配信回6-2

「それじゃ、早速質問をしたいと思います!最初の質問は、万魔様は一体何歳なんですか?です!!」


《いきなりそれ聞いちゃう?》

《大丈夫?誰もが気にはなるけど気付かないふりしてる内容なんだけど》

《女性に年齢を聞かない風潮に真っ向から喧嘩を売っていくスタイル》

《しょっぱなからぶっ飛んだ内容!流石アレナちゃんねるだ!常識が通用しない!!》


「ふむ。二百までは数えておったが、もう覚えておらんの」


「え!万魔様って本当にお婆ちゃんなんですか!?」


「うむ、儂はれっきとしたお婆ちゃんじゃぞ。そうでなければ儂をなんじゃと思っておるのじゃ」


「万魔様は屋号で、代々適性のある人が万魔様を継承して名乗っているとか、クローンとか?」


「そんなわけなかろう…儂は昔も今も儂だけじゃ。それはそうとまさかお主、この耳も尻尾も後付けなどと考えてはおるまいな?」


「さっき触ったからもう思ってないよ!!」


「触るまでは思っていたんですね…」


「あんなにもふもふふわふわな耳と尻尾が偽物なわけがない」


《おい、俺は一体何を聞いているんだ?》

《万魔様の年齢以上に衝撃的な内容が飛び出して笑えない》

《万魔様継承説、万魔様クローン説、万魔様似非けもっ娘説が覆された歴史的瞬間》

《万魔様に触った…触っただと!!?》

《これ配信して大丈夫なの?万生教に頃されない?》

《答えられることなら答えるって万魔様がおっしゃってたわけだから、セーフなのでは?むしろそう思わなきゃ見ていられない》

《最初からクライマックス》


「そんなわけで、万魔様はとってもお婆ちゃんでした。こんなにもふもふで可愛いのに、お婆ちゃんなんて信じられないよね」


「いつまでも若さを保つその秘訣、是非教えて貰いたい」


「儂は昔からこうじゃからの…むしろ儂が教えて欲しい位じゃよ」


《万魔様にも分からない事がある…だと!?》

《なぜ人は生まれてきたのか。人はなぜ生きて死ぬのか。この命の命題は正真正銘の神でなければ答えられないのかもしれないな》

《俺が生まれてきたのはアリスちゃんと出会う為で、生きているのはアリスちゃんと添い遂げる為。ファイナルアンサー!!》

《ファイナルアンサーでよろしいですね?それではファイナルアンサー!!……残念、不正解!!正解は君が生まれてきたのは何かの間違いで、生きているのは死ねないからでした!!!》

《残酷な現実を突き付けるな》

《これだからリアルオンラインってやつはクソなんだよ。サービスさっさと終了しろよカスが》


「それでは次の質問です。万魔様と同じようなけもっ娘は他にはいないんでしょうか?」


「あ、それは私も気になるよ。万魔様みたいに可愛い子が一杯いたら滅茶苦茶嬉しいよね!!」


「一家に一人、万魔様」


「ナツキ、万魔様は家電ではありませんよ。ですが確かに、他の方もいるようでしたら是非とも仲良くなりたいですね」


《こ、こいつら…怖いもの知らずか!?》

《どう育ったらここまではっちゃけることが出来るんだろうか》

《さすがアリスちゃん。万魔央の姉を名乗るだけの事はあるな!!》


「ふむ。儂と同じということは獣人族がいるかということかの?残念じゃが儂は見た事がないのぉ。儂以外にも同じ獣人がいたら是非とも会ってみたいの」


「万魔様…!大丈夫、万魔様は一人じゃないよ!!」


「そう、少なくともここにはむすたあ人がいる」


「私は猫人だよ!!」


「…え、これ私もやるんですか?れーくんに止められてますよね?後で絶対怒られますよ?」


「大丈夫。これはれーくんにご奉仕する為に付けてるわけじゃないから。これは万魔様とのコミュニケーションだから!!」


「そう。メイド服も着ていないし問題ない。わたしたちは今は獣人族。それ以上でもそれ以下でもない」


《あ、頭が…頭が沸騰しそうだよぉおぉおお!!!》

《俺は一体何を見せられているんだ…!!!》

《切り抜き班急げ!!俺の理性が間に合わなくなっても知らんぞ!!!!》

《なんだこれ。天国か?俺達はいつの間に死んで天国に辿り着いたんだ?》

《ここがヴァルハラか…良いぜ、こんなけもっ娘に囲まれる生活なら永遠に戦って永遠に死んでやるよ!!》

《もし生まれ変ることが出来たら獣人しかいない世界に生まれ変わりたい。いや、絶対に生まれ変わる。俺は今魂に誓った》

《正気に戻れよ。可愛い子のけも耳は確かに致死量やばいが、獣人しかいない世界って事は男もそうだし、おじさんおばさんジジババ全員けも耳って事だぞ》

《今が良ければすべてよし!!可愛いけもっ娘パラダイス作るから問題ない!!》

《これは酷い…お前の来世はけも耳じじばばしかいない絶海の姥捨て山に決定》

《なんだそのこの世の地獄は…どうやってそんな場所に生まれ…うっ頭がこれ以上の考えを拒否しちまったぜ》

《誰もがけもっ娘パラダイスに脳を焼かれて重要な部分をスルーしてるの草》

《この配信が終わって見返した時、第二波が到来するんだろうな》

「みんな落ち着いたかな?ここまで勢いが凄かったの初めてじゃない?さすがは万魔様だね!!」


「万魔様の威光は日本を遍く照らしている。当然の結果」


「というわけで、万魔様と同じ子たちは居ないみたいだよ。でも安心して!『万魔様に憧れて!これで今日から獣っ子』シリーズを付けたら、みんな今日から獣人族だよ!!」


「天獄郷のお土産物屋さんで絶賛発売中。種類もサイズも豊富。私とアリスが付けているけも耳もある。是非ともこの機会に購入を」


「猫・犬・鼠・ウサギ・熊・リス・牛・馬・狸など、多種多様なラインナップがありますので、あなたのお気に入りの獣耳がきっと見つかりますよ」


《唐突な販促始まって草》

《実は案件だった?》

《アリスちゃんとナッちゃんが付けてる獣耳は即完売するだろうから今すぐ天獄郷に居る奴等は買い占め急げ!!》

《ありったけの土産物屋を回って買い占めろぉぉおおお!!!》

《この後、アレナちゃんねるを視聴する時、リスナーはけも耳を付けて視聴するのが当然となる事を、この時点で誰も予想する事は出来なかった…不幸の始まりである》

《お前がしてるじゃねえか》


「それでは次の質問です。万魔様は普段なにをしていますか?確かに、万魔様が普段なにしてるか気になるよね」


「普段は天国の間におるの。見て分かる通りここは色々とあるじゃろ。たまに天獄郷を散歩するが、あまり出歩くと騒ぎになるからの」


「確かに天国の間って色々ありますよね。プールや温泉なんかもあってビックリしました!広さもおかしいですし」


「ダンジョン一層を丸々改装してるからの。広さも内容も融通が利くんじゃよ」


「そうなんですね。あ!だかられーくんのお部屋も用意できたんですね!」


「そうじゃな。元々用意自体はしておったがの」


《今明かされる衝撃の真実》

《え、天国の間で配信してたの!?》

《部外者が天国の間に入ったばかりか公開されたのって2回目?》

《万魔央の関係者だから部外者とは言えない気もするが…何にせよヤバイな。ヤバすぎるとしか言いようがない》

《こんなに気軽に天国の間内部って公開されるようなもんだっけか》

《いやお前ら、そんな事より天国の間がダンジョンだって事自体の方がビッグニュースなんだが!?》

《確かに凄いが天獄殿自体ダンジョンみたいなもんだろ?なら別におかしくないだろ》

《そんな事よりも色々施設を追加できる方にビックリなんだが?》

《そんな事よりも万魔央の部屋が天国の間にある方がビックリなんだが?》

《これが万魔の後継者、愛弟子の特権…!!もふもふけもっ娘と一つ屋根の下同棲だと!?》

《それを言ったら普段は美少女3人と同棲しているわけですが》

《噂では謎のけも耳メイドさんもいるらしいぞ?》

《なんだと!?どこ情報だよそれ、俺は聞いてないぞ!!》


「れーくんも似たような生活をしてますし、やはり師匠の万魔様に似たのでしょうか」


「確かに。れーくんが今みたいな生活になったのって万魔様に会ってからだし、その可能性はあるね」


《悲報・子弟揃って引き籠り》

《いや待て、万魔様が普通に引き籠りなんてされるわけがないだろ。つまり引き籠るという行為に何かしら重要な要素があるのでは?》

《つまり…万魔様を万魔様たらしめている要因が、引き籠りにある…と?》

《万魔様を万魔様たらしめている要因…万魔様と言えば代名詞とも言える帝級魔法だが》

《つまり…帝級魔法習得条件に引き籠りがあるのでは!?》

《な…なんだってぇぇぇえええ!?》

《いや、確かに筋は通る。現に万魔央は万魔様の後継者としてデビューするまでは音沙汰なかったじゃん。あんなイカれた強さ持ってて大衆に埋没なんてするわけない》

《なるほど、つまり帝級魔法習得に必要な引き籠り期間が明けた事で、表に出てきたというわけだね》

《まじか…つまり20年以上引き籠ってる俺は帝級魔法が使えるということか!?》

《引き籠って魔法が使えたら苦労しねえよ。帝級魔法も今頃巷に氾濫してるわ。寝言は寝て言え》

《唐突な梯子外し。こどおじは夢を見る事すら許されないのか》

《夢の前に現実を見ろ。話はそれからだ》

《夢だけ見て生きていけるのは赤ちゃんだけの特権だぞ》

《こどおじ概念を脱却し、あかおじ概念へとたどり着け。それこそがお前が救われる新たなる世界への扉だ》

《風俗にでも行って赤ちゃんプレイしてこいよ。そうすりゃ世界も変わるだろ》


「次の質問にいきますね。万魔様は好きな人っていますか?あと好きなタイプを教えてください」


「万魔様の恋愛事情!?知りたい知りたい!教えて万魔様!!」


「この場には千人斬りの女、アリスがいる。万魔様に張り合える数少ない逸材」


「恋愛マスターのナッちゃんもいるからね!万魔様の恋愛事情をズバッと解剖だよ!!」


《千人斬りの女だと!?つまりアリスちゃんの経験人数は千人を超えている!?》

《失望しました。アリスちゃんのファン止めませんから僕も犠牲者に入れてくれませんか?》

《どどどどどうすんのどうすんの!?一体どこで何をやったらアリスちゃんで卒業できるのか教えてくれませんか!!》

《万魔様の恋愛事情よりアリスちゃんの恋愛事情の方が気になるんだが?》

《ふっ…所詮アリスちゃん信者は我らの中で最弱。この程度の事で動揺するとはアレナちゃんねるリスナーの面汚しよ》

《全くだ。見ろよナッちゃんの自信満々な顔を。あれこそが我らのポンコツアイドル、日向奈月よ》

《恋愛マスター(ハーレ〇イン文庫)日向奈月を崇めよ!!》

《恋愛マスター(少女漫画)日向奈月こそ最強!!》

《あなたの恋を応援します!恋愛マスター(小説サイト)日向奈月こそ至高!!》

《流石数多の恋愛をこなしてきた益荒男達だ!!ここには恋愛上級者しかいねえ!!》

《恋愛上級者(エロゲとギャルゲ)ですね、分かります》


「ふむ…儂もこの歳じゃからの。恋愛どうこう以前に、皆孫のように感じてしまうの」


「昔はどうだったんですか?」


「昔は恋愛にうつつを抜かす暇はなかったの。儂が天獄郷に居つくまでは各地のダンジョンを潰しながら彷徨っておったからの。こんな見た目じゃろ?もんすたあがダンジョンから出て来たと思われて迫害されることもしょっちゅうじゃったのう」


《全日が泣いた》

《こんな可愛いけもっ娘がモンスターなわけねえだろ!迫害した奴らは殺せ!!》

《もう死んでます》

《許されねえよ…もしかしたら万魔様以外のけもっ娘がいたかもしれねえんだろ?その可能性を昔の奴らが摘み取ったって事か!?》

《禁忌領域も解放出来ねえ雑魚どもがよぉ。どの面下げてけもっ娘迫害してんだよぁああん!?》

《鏡見て来いよ。面くらいは拝めるぜ》


「それよりもお主らの方こそどうなんじゃ?恋愛というのは若者の特権じゃろう。好いた男の一人や二人おるんじゃろ?」


「千人斬りのアリスを舐めて貰っては困る。こう見えてアリスは告白して来た男どもを今まで容赦なく斬り捨ててきた。その数は優に千人を超える。そしてついた異名が千人斬りの女」


「千人もいないよ!?それにそんな呼び方してるのナッちゃんだけだよ!!」


《ふぅ…勘違いでよかったぜ。千人の男を手玉に取った淫乱アリスちゃんなんていなかったんだ》

《アリスちゃんは純情可憐把握》

《ま、アリスちゃんはまだ俺と出会ってないから当然だな。ワンチャンあると勘違いした男共乙。哀れすぎる》

《ユニコーンどもが慌てふためく様は見ていて滑稽で楽しいな》

《心配しなくてもお前らが勝利する世界線はシュタ〇ンズ・ゲートにすら存在しないよ》


「で、どうなんじゃ?ありす。それだけもてるのに恋人の一人もおらんということは好いた男の一人や二人おるんじゃろ?それともお主は女子が好きなのかの?儂をもふもふしておったしのぉ。じゃが儂はのーまるじゃから答える事は出来んぞ」


「心配しなくても私はちゃんと男の子が好きだから!!好きな人だっているから!!告白はその…まだですけど…自分からってやっぱり恥ずかしいし…色々問題もあるし…でもどうせなら告白されたいっていうか…沢山の障害を乗り越えた上で、お前が欲しい!って求められたいっていうか…やっぱり女の子なら好きな男の子から告白されるのって憧れるじゃないですか!!」


「甘酸っぱいのぉ。その感じじゃと相手もまんざらもでないのかの?」


「え~、どうなんだろ?でもいつも私に優しいし~、何でも言う事聞いてくれるし~、いざという時はとっても頼りになるし~、格好良いし~、でへへへ…」


《いつの間にかアリスちゃんが俺に惚れてた件について》

《ぁあ!?てめぇみたいなドブカス野郎に惚れる女なんていねぇから!!》

《はぁぁあん!?俺はいつもアリスちゃんに優しいし、言ってくれたら何でも言う事聞くし、いざという時は命も惜しくないから。アリスちゃんが俺の事を言ってるのは確定的に明らか》

《恰好良いをスルーしてる所、身の程弁えてて好感持てるぞ》

「…チッ、やってられない。レナ、あとは任せる。わたしはもう寝る」


「ちょっとナツキ!?なに不貞腐れてるんですか!いつもの事でしょう!!ナツキ…

ああもうまったくあの子は…というわけで皆さん。ナツキが出て行ってしまったので申し訳ありませんがここで終わりにしたいと思います。アリスもいい加減のろけ話は止めて下さい。万魔様もお付き合い頂き有難うございました。それでは皆さん、ご視聴有難うございました」


「それでね万魔様。私がれーくん助けてって思ったらね、颯爽と校舎の壁を壊して現れてくれて~」


「成程のぉ。ピンチの時に颯爽と現れるとは、正にヒーローじゃのう」


《俺達の事を忘れない心配り。やはりレナちゃんしか勝たん》

《碌な質問ないんじゃないかと思ってたけど、案の定碌な質問なかったな》

《万魔様の知られざる一面が公開されたあたり、流石はアレナちゃんねると言えるだろう》

《万魔様ほどの御方でも迫害された事があったなんて驚きだわ。そんな話を聞いた事ないし、反撃したりせずに逃げたって事だろ?》

《人に追われて辿り着いた先が、最北の未開未踏の地である禁忌領域って事か。そしてそこに群がった万生教信者》

《言い方ぁ!まあ間違ってはないけど。にも関わらず受け入れた万魔様の懐広すぎだな》

《天獄郷も当初は食い詰め者とか碌でもない連中ばかりだったらしいからな。マジでロストパラダイスだったわけか》

《いきなりマジレス始めるの止めてくれないか?》

《悲報・俺氏『万魔様に憧れて!これで今日から獣っ子』シリーズの猫耳を買い占めようとしたら、店員に通報された挙句、天獄郷出禁にされる》

《おい!!注文してねえのにピザと寿司が大量に配達されてきたんだが!!?誰だよこんな嫌がらせした奴はよぉぉおおお!!覚悟しろよ、訴えてやるからな!!!》


―――――――――――――この配信は終了しました――――――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る