閑話 緊急特番・真相究明!噂の真偽をズバリ解明しちゃいます!!



「TVの前の皆さんこんばんは!今年の夏も暑いですね。水分補給は忘れずに。体調にもしっかり気を付けて下さい。何せこれからもっと熱くなりますからね!そう、今年もこの時期がやって来ました。全国探索者養成高等学校総合技能演習大会、言わずと知れた天獄杯です。そして今年の天獄杯についてまことしやかに流れるある噂。今回はその噂の真偽をズバリ!解明したいと思います!!」


「そもそもこの噂話が広まったのは天獄杯の出場選手が公開されてからですが、真偽のほどは明らかにされていませんでした。ところが!今日突然、新しい噂が天獄郷を駆け巡ったのです!!私たちは独自にその噂の出所を調査したのですが、判明したのは本日天獄郷にて一時拘留された人たちの総数583名という、近年稀に見る大捕り物があった事だけでした。これだけでも異常ですが、驚くべきは全員が万生教徒だったことです。これは明らかに緊急事態です。万生教徒を狂わせてしまう恐るべき何かが天獄郷に訪れたとしか思えません!」


「我々をここまで狂わせてしまうもの…それは一体何なのか?その真相に迫るべく、今日は特別に強力な助っ人をお呼びしています!本日この番組の為に来ていただいたのは!万生教万魔神衛隊万魔十傑衆筆頭・無常鏡花様と、一席の一条茜様です!」


「無常鏡花だ。今日はよろしく頼む」


「一条茜です。今日はよろしくね」


「お二人とも大変忙しい中、当番組の為に特別に!時間を割いてお越し頂いております。さっそくですが、天獄郷で起きた事件について、お二方はどのくらい把握されておられるのでしょうか?」


「最近は天獄杯が始まる事もあって天獄郷も賑やかだからね。事件と言っても色々あるよ?調子に乗って自分だけ良い思いをしてるメス豚をみんなで制裁した事とか、万生教が新たに手掛ける新規事業の事とか」


「どちらも気になる所ではありますが、現在皆さんの関心は本日起こった大捕り物にあると思いますので、まずはその件についてお聞かせいただけたらと思います」


「今回の件についてだが、一時拘束した万生教徒583名はすでに解放している」


「そうなんですか?彼らがなにか犯罪行為をしたわけではないのでしょうか」


「犯罪行為とは少し違うな。本日行われた極秘作戦において、彼らが障害となった為、一時拘束する形を取らせてもらった」


「極秘作戦ですか…もしやそれが今日、天獄郷に瞬く間に広まった噂と関係しているのでしょうか?」


「そうだ。天獄殿に玉体を迎え入れるまで、騒ぎにならないよう慎重に事を進めるつもりだったが、大っぴらにエリア規制などしては何かあると大々的に公表するようなものだからな。結果として目敏い一部万生教徒が目撃し情報を拡散、その真偽を確かめようと動いた者達が拘束されたというわけだ」


「そうだったのですね。ですが拘束された583名を既に解放されているという事は、極秘作戦は無事成功を収めたという事で良いのでしょうか」


「補足しておくと今回の件は、万生教万魔神衛隊主導の元、独断で行っている。というのも、あの方はご自身の立場や影響力に無頓着な所があるのでな。こうして皆に報告出来る状況になるまでは情報を伏せる形となった事は理解して貰いたい」


「という事はつまり…」


「勿体ぶる必要もあるまい。喜べ!全ての万生教徒達よ!天獄郷に住まう者達よ!天獄杯開催に合わせて、我らが王配、万魔様の後継者、万王万魔央様が、天獄郷に御帰還なされた!!」


「「「おおおおおおおおおおおお!!!」」」


「やはり!噂は本当だったのですね!!これにはスタッフも思わず叫んでしまいましたが当然でしょう!!天獄郷にて万魔央様を見かけたという噂、これで確定しました!皆さん!万魔央様は今現在、天獄郷にいらっしゃいます!!」


「皆に今まで黙っていた事は謝罪する。しかし魔央様はむやみに騒がれることを好まれない。今後天獄郷で魔央様を見かける事もあるだろうが、なるべく一般人として接する様心掛けて欲しい。これは万魔様も望まれている事である」


「そうなんですね!ちなみにですが、万魔央様はやはり天獄殿に滞在されているのでしょうか?」


「そうだ。そのまま永住して頂きたいところだが、魔央様にはやらねばならぬことがあるからな。残念ながら天獄杯が終わったら暫しの休養の後戻られる予定だ」


「そうですか…」


「そう残念がる事もあるまい。天獄杯が終わってからになるが、魔央様が我々の為に時間を割いてくださるとの事だ。皆を労う為、直接話をしたいとおっしゃっておられた」


「本当ですか!?万魔央様が我々の前に降臨されるのですか!?」


「そうだ。万魔様の後継者でありながら、天獄郷の皆と直接顔を合わせていない事を気になされていたからな。今まで万魔の後継者として名乗りを上げなかった事を謝罪すると同時に、皆の話も聞きたいとの仰せだ」


「謝罪などとんでもない!万魔様の後継者ともなれば、その影響力は甚大。我々においそれと話せるような事ではないと理解しております」


「うむ。再度言うが、もし街中で魔央様を見かけたとしても、みだりに声などは掛けぬように。魔央様はまだこの街に来られて日が浅い。我らの天獄郷に失望などされぬよう、軽挙妄動は厳に慎むように。皆と交流される場所はパンデモランドだ。日時はおって通達する」


「勿論です!我ら万生教徒一同、魔央様を遠くから見守る事をここに誓います!!さて、万魔央様が天獄郷に滞在されている事が判明しましたが、番組の時間が大幅に余ってしまいました。そこで残りの時間は是非とも無常様に、万魔央様のお話をお聞かせ願いたいのですが」


「良いだろう。そもそも私と魔央様が初めて出会ったのは―――」

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