王立アカデミー編
第6話 アカデミーへの道中
私は幾度の春を経て、15歳になり、王立アカデミーに入学する事となった。「コンスタンツェ様、制服姿もお綺麗です‼︎」「ふふっ、有難う。ところでアン、デイヴィッドとの仲はどうなの?何か進展はある?」アンは去年入った若い使用人の中の一人のデイヴィッド・ヒルデガルトと恋に堕ちたらしいのだ。アンは現在20歳で、デイヴィッドは21歳だ。年齢的にも丁度良い。「そ、それ・・・については・・・その、へ、部屋で・・・同じベッドで寝ました・・・」「狭くは無かった?もし狭ければ面積を増やしてもらえる様にお父様に頼んでみるわ。」「いえいえ‼︎そんな滅相もございません!ただでさえ公爵家は待遇が良いのに更に良くしていただくなんて‼︎」アンはやはり謙虚だ。もう少し甘えてくれても良いのに、と思いつつ、そこが又彼女の良いところなのだとも思った。「そうだわ!今度アンとデイヴィッドが数日でも休暇を取れるようにお父様に頼んでみるわね。二人で甘い時間?を過ごしたら良いんじゃない?」甘い時間、と自分で言っておいてそれが何なのかよく分からなくなった。今まで今世も含めて4度の人生を繰り返してきたが、私には“恋愛”というものをした経験が無かった、と思う。最初の人生では私の性格が悪すぎて好きになってくれる人なんてさらさら居なかった筈だし、そもそも私には“想い人”という概念がなかった。それにこの国には貴族の間で『女性が男性に恋焦がれるのははしたない事である。』という暗黙の了解が存在する。「私、思ったのですが私のこの恋ってはしたない事ですよね・・・女性が男性に対して想いを寄せるなんて・・・」暫くの沈黙が訪れた。「・・・世間体を気にすれば・・・そうなるわよね。けれど想うのは仕方のない事・・・だと思うわ。それにデイヴィッドだって本当はアンに愛を伝えられたいんじゃないかしら?きっともし私に恋人が出来てその立場だったらそう思う筈だもの。」「そうですか・・・有難う御座います‼︎」「あ、そろそろ行かないと行けないわ!じゃあ、デイヴィッドとの方も頑張ってね。」外に出ると、迎えの馬車の支度はもう出来ていた。「(やっぱり彼方の移動手段は発達しているのね・・・せめて車だけでも有れば便利よね・・・)」私はそんな事を考えつつ馬車に乗り込もうとした。「コンスタンツェ、一人じゃ寂しいだろうから僕がアカデミーに世話係としてついて行ってあげる事になったよ。暇じゃないんだから感謝してよね。」「え、そうなの?有難う・・・?」正直なところ、何故養子とはいえ義弟である筈の彼があくまでも“世話係”として来るのかは不明だ。ただ、屋敷育ちの私にとって、“身内”であり比較的歳の近い彼が来てくれるのは有り難い事だ。「べ、別に・・・僕が勝手に頼んだだけだし‼︎感謝なんて求めてないし・・・」頼んだ、という事は自分から名乗り出た、という解釈で合っているのだろうか。だとしたら、彼は忙しいのに私に合わせてくれた、という事になる。感謝してもしきれない。馬車に乗り込むと、何故か私は先に乗ったクラウディオに説教された。「アカデミーには色んな場所から人が来るんでしょ、中には変なヤツとかも居るかも知れないんだからそう言うクズ・・・間違えた、変なのには引っかかんないでよ。し、心配するから。」何故そこまで心配されるのか分からない。そこまで頼りない自覚は無いのだが。「あの・・・もしかして私ってそこまで頼りないのかしら・・・?一応女性用の戦術は少しだけど習っていたから捕まったら蹴り倒すくらいは出来る筈なんだけど・・・」「監禁されたらどうするのっ‼︎」「それならドアを蹴り倒せばいいじゃない。ハイヒールで蹴るとね、威力がとても強いのよ?あれは結構便利な武器だと思うわ。」そこまで心配してくれなくても良いのにと思いつつ、大切には思ってくれているのだな、と思うと少し嬉しくもあった。そんなことを考えていると、御者が血相を変えて走ってきた。「お嬢様‼︎大変です‼︎ぞ、ぞく、賊が馬車を囲み始めて‼︎と、取り敢えず身を隠して下さ・・・」「いえ、大丈夫よ。此処での
気が付くと、私の足元にはその男が倒れていた。
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