File13:The Three Rascals(1)

 しばらくの間は大きな依頼もなく、せいぜい警察への微力な協力ぐらいで表立ったことは無かった。

 時期的に大学では試験ラッシュにレポートラッシュだったのもあり、ようやく終わってヘトヘトな時期だった。給与はいいとは言え2足のわらじも辛いものである。

 例によって例のごとくだが、全休の日は社会人と同じように出勤せねばならないので電車に揺られていると掲示板のニュースがふと目に入る。

『またもや被害、三人の強盗団』

 どうやら最近都内で頻繁している強盗被害のニュースのようだ。被害は銀行や富裕層の家に限定されているが、件数は十件を超えている上に警察でも歯が立たないらしい。

 覆面の顔写真が映し出されたところで駅に着いたので、人を掻き分けて外に出て庁舎に向かった。

 出勤すると照井と元次の姿がすぐ見えた。

「おはようございます。」

「おはよう破堂君、机に向かうなら荷物だけ置いてから戻ってくるといいよ。」

「あれ?何かありましたっけ?」

「これからあるんだ、さっき電童が呼び出されて行ってな、お前が来たら集合するよう伝言を頼まれてた。」

「わかりました、とりあえず荷物だけ置いてきます。」

 相変わらずカオスな室内をくぐり抜け自分の机に辿り着き、余計な荷物を置いてから再度戻る。これだけで汗をかくので相当だ。

 入口近くに戻って数分の後に電童が戻ってくる。その眉間にはシワが寄っていたので、機嫌が悪そうである。

「大型の案件だ、超捜課との合同作戦を行うことになった。作戦内容は別室で話すから元次、照井、破堂、全員着いてこい。」

「急いで出ていったとは思ったけど超捜課との合同作戦とはね、鍵崎もいるの?」

「鍵崎は現場で指揮中だ、俺たちは援軍として途中参加する形になる。」

「前の怪我が治りきってねえんだがなぁ」

「後で医務室に放り込んでやるから我慢しろ。」

「げぇっ、薬厄やくかいのお世話になるのは嫌なんだが…」

 会話も程々に別室の会議室に移る。女性の刑事が1人居て、こちらを確認すると立ち上がって会釈する。

「お集まりいただきありがとうございます。私は警視庁超能力犯罪捜査取締課の目録もくろく らんと申します。現在現場で指揮を執っている課長に代わりまして、皆様に作戦内容を説明させていただきます。」

 ホワイトボードを回すと、既に目録が書いていたらしい文章や図が現れる。

「今回の作戦で皆様に無力化していただきたいのはこの3名です。」

 そういうと写真が3枚貼られる。それには見覚えがあった。

「あっ!ニュースの!」

「ええ、今回の目標は近頃連続強盗事件を引き起こしている三人組の強盗団。彼らです。」

「捕まってないとは聞いたが、同じオーバーズだったとはな。」

「本名が不明ですので彼らの身内間のコードネームでお話します。右からワイヤー、マッシヴ、ブリッツ。本名、年齢ともに不明。男であるとはわかっています。能力も登録されていない為等級ともに推定ですのでお気をつけを。」

 今度は図を指して説明を始める。

「ワイヤー、推定能力は『自分をワイヤー状にする』推定等級は4級です。この能力を使ってジップライン代わりに自分を使っていたりするようですが、正直これぐらいしか情報も無いので優先度は低いです。」

「コードネームがそのまま能力になってんのか?わかりやすい奴らだな。」

「マッシヴ、推定能力『筋肉量の増大』筋肉量とともに筋力も上がっていくようです。推定等級は3から2級相当、警官隊を壊滅に追いやっています、お気をつけてください。」

 この前の四澤より強そうに見える。同じ2級であるが純粋な怖さと言うやつだろうか。

「ブリッツ、推定能力『超高速移動』推定等級は3級です。彼の高速移動で厄介な点は物理法則が通用しない点です。」

「物理法則が通用しない?」

「はい、普通高速移動系の能力には空気抵抗と言った抵抗が働き、街中で全力を出そうものなら周囲のガラスが大惨事になるほどなものが多いです。」

 ですが、と続けホワイトボードを返す、さっきまで真っ白だったはずの裏面にも図やらが書かれている。

「彼の能力にはそういった物理法則の一切が通じません、故に室内だろうと縦横無尽に高速移動をし、こちらに攻撃をしかけてきます。機銃掃射している側が撤退する事態になったと言えば脅威を理解していただけるかと存じます。」

「マッシヴとブリッツに関して言えば一人一人が厄介だけど、組まれることで厄介さがさらに上昇してるね。」

「優先順はブリッツ、マッシヴ、ワイヤーとしよう、ブリッツに関しては全員で当たるとして…」

 電童が再度ホワイトボードを返し表面に戻す。

「マッシヴはどうするべきか…照井、行けるか?」

「やれるだけやる、俺に任せろ。」

「よし、じゃあマッシヴは照井に全面的に任せる。ただ危なくなったら直ちに知らせろ、良いな?」

「わかってるよ。」

「あとはワイヤーか、これは大した事は無さそうだが用心には用心だ、元次と破堂の2人で当たれ。俺は突入地点から指示を出す。」

「オーケー」

「はい!」

「手早い作戦立て、流石は対策課の方ですね。それでは向かいましょう、車両は手配済みです。」

 立ち上がり会議室の外へ出る。

 初めての大規模作戦に参加することに緊張しつつ、庁舎の外へ急いで向かったのだった。

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