第27話 アナスタシアの伝説
次の瞬間レムロと衛士達が
ヒルマ人めがけて襲いかかってきました。
ノルウェアの衛士が約100名。
ヒルマ人の男達、約70名。
衛士の方が数は多かったのですが
道が狭く、衛士達は 一気に
攻めることができません。
それにほぼ不休で、ここまで来ている
衛士たちは本来の力を
発揮できませんでした。
しかし レムロがいることで
たとえ死んでも甦られると信じて
手は緩みませんでした。
シバやリュート、ニールも衛士達と
戦いますが、あくまで追い返し、
ひるんだら捕まえたりして戦いました。
確かに全力で戦うというよりは
面倒な戦い方ではありますが
それでも村人達はうまく連携して
衛士たちを相手にしました。
ニールが持ってきた道具も役に立ちました。
ロープや煙玉など
直接危害を加えるものではない
道具をたくさん持ってきていました。
しかし やはり 全てがうまくは行きません。
ついに 犠牲者が出てしまいます。
ヒルマ人の男性
「うわぁぁぁぁっっ」
その妻
「あ、あなたーーーーっ」
衛士
「ぐぁぁぁっっぁぁぁっっ」
レムロ
「怯むな!突っ込め!それでも衛士かっ!」
ニール
「ぐぅっ」
突然ニールが屈みます。
リュート
「どうしたんです!」
ニール
「い、いや、大丈夫・・・」
ニール は衛士から剣で腿を
突き抜かれていました。
ジュリア
「ニ、ニールさん!!!」
ジュリアが叫びます。
シバ
「ちょっと後方に下がった方がいい」
お互い死んでも甦ることができる
そんな思いが、どこかで気持ちの余裕を生み その余裕が遠慮なくしました。
アナスタシアは目の前で起こる
悲惨な光景を目の当たりにして
ただ祈るしかなかったのでした。
『こんな誰も幸せにならない争いが
早く終わりますように』
雨が次第に強さを増してきました。
アナスタシアはアトラス を見ました。
アトラスは本気で怯え泣いていました。
アナスタシアはそんなアトラスを見て
思います。
『ベル の力でリュートが甦り
この子が生まれた。
なのに何故、今度はベル の力で
この子が苦しまなくちゃならないの?』
アナスタシアは手に持っていた
ベルを見つめました。
2羽の鴛鴦(おしどり)が描かれたベル。
リュートが 私の為に作ってくれた ベル。
それだけで良かったのに・・・
アナスタシアの目から涙がこぼれました。 大粒の雨と一緒に。
その涙は アナスタシアの頬を伝い
ベルを包みました。
その時です。
ベルが急に光り出しました。
眩しい 暖かい光が
アナスタシアやアトラス
そしてヒルマの村人。
さらに衛士たちやレムロも包み込みました。
柔らかく 暖かい光の中で皆
ベルの音色に包まれました。
それは美しく いつまでも 心に響き
こだまする音色でした。
皆が戦闘をやめて、ただ佇み、その中で
ヒルマ人や衛士達が負った傷は光の中で
癒やされて、次第に消えていきました。
リュート
「なんて温かいんだろう」
ニール
「優しい光だ」
アトラス
「温かい。お母さんのお腹の中みたい・・」
その光は泉全体を包み
そして輝いていました。
するとレムロの声がします。
レムロ
「あ、頭が・・・割れるぅぅ・」
レムロが頭を抱えて苦しみだし
光の中でよろめき、
そして泉に落ちて死んでしまいました。
そして光は泉全体を包み
次第に解き放たれて行ったのです。
皆が気がつくと空は真っ青な晴れ。
ヒルマの村人も衛士も皆、傷一つ無くなって戦が始まる前の状態になっていました。
ただ2つ違うことがありました。
それはレムロがいないこと。
そして衛士達の心の変化でした。
衛士A
「何故、俺たちは戦っていたんだろう」
衛士B
「悪い夢でも見ていたのか・・・」
ラウム
「また 、アナに救われたようじゃの」
シバ
「そうみたいですね」
衛士隊長がラウムに近寄ってきました。
衛士隊長
「我々 ノルウェア衛士隊は
ヒルマの皆さんに大変
申し訳ないことをしてしまった」
ラウム
「いいんじゃ。お前さん達は 心 を
レムロに操られていたんじゃよ」
衛士隊長
「だとしても申し訳ない。
皆さんを傷つけてしまって」
ラウム
「皆、無事じゃ。気にするでない」
衛士隊長
「お心遣い、痛み入ります
我々は戻ります。
部隊長のレムロが
いなくなってしまったので」
ラウム
「うむ、気をつけての」
その後、衛士たちにより
レムロが死んでしまったことが
ノルウェア中に知られると
ノルウェアのレムロブームは去ります。
そしてバロウの企みは失敗に終わりました。
それどころか衛士達による
クーデターが起こり
ノルウェアは大きく変わったのです。
そしてジュリアやニールも
ノルウェアで幸せな人生を歩みました。
その後、ヒルマ村はいつもの
平和な日常に戻ります。
そしてアナスタシアとリュートは
このベルを封印することを決めました。
もう二度と 争いが起こらないように。
ベルを使わなくてもいいように。
それでも人々の心にはいつでもあの
ベルの音色が刻み込まれていたのです。
終わり
アナスタシアの伝説 @ic-co
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