第6話 【ASMR】肩を寄せ合い一緒に入眠

日向

「それじゃ、最後のプログラムだね!」

「これまで、湯者さんにリラックスしてもらうために色んなことを試してみたけど……どう? 効いてる?」

「最初に言ったけど、あたしこういうの分かんなくて。うまくいってるなら嬉しいな♪」


「相談に乗ってくれた彗ちゃんと環綺ちゃんも喜ぶと思うよ!」

「それで、最後はね……。」

「…………。」


「最後は、あたしひとりで考えたの。」

「だって、人に言われたプログラムばっかりってなんかモヤモヤするし……あ。彗ちゃんたちが悪いわけじゃないよ?」

「でも……最後くらい、あたしが湯者さんにやりたいことを素直にやってもいいかなーって。」


「さっき言ったとおり、あたしよく分かってないし、もしかしたらうまくいかないかもしれないけど……湯者さんなら許してくれるって信じてるしね♪」

「というわけで……隣♪ 失礼しまーす♪」

「…………。」


   #声、すぐ右から聞こえてくる。


日向

「ふう…………えへへ♪」

「最後のプログラムは……こーやって、寄り添って、ぼーっとすることだよ♪」

「どんなのにしようか……あれもこれもって考えたけど、やっぱりピンとこなくて……それなら、あたしも一緒にリラックスできるやつにしちゃおーって思ったんだ♪」


「…………。」

「にひひっ……湯者さんの体、あったかくて……落ち着くね……。」

「あたしも体温高い方だし……ふたりでぽかぽかしよー……。」


「ほら……あたしと呼吸合わせて……。」

「(自然に息を吸い、吐く)……。」

「(自然に息を吸い、吐く)……。」


「(自然に息を吸い、吐く)……。」

「(自然に息を吸い、吐く)……。」

「そうそう……。その調子……♪」


   #以降、しっとりした口調で。


日向

「あたしさ……他の人より運動神経よくて、何やっても簡単に勝っちゃうから、一緒に遊んでくれる友達できなかった……って言ったでしょ?」

「その頃は結構荒れてて……。他人を見下して、『どーせあたしはひとりなんだー』って思い込んで、ますます人に避けられたりしてたんだ。」

「……あ。いま、心配してくれた?」


「ふふ……。ありがとう。でもね、最近はちょっと違うの。」

「彗ちゃんはね、『もっと本気を出しなさい』って言ってくるんだ。『その程度じゃ、温泉地を盛り上げることなんてできないわよ』って。」

「環綺ちゃんはね、しれっと笑いながら、やることなすこと全部のハードルあげてくるんだよ。『日向ならできて当たり前でしょ?』って。」


「今まで『本気出さないで』とか、『できない人に合わせなさい』とか言われてきたからさ……。」

「あたし、そんな風に求められるのが嬉しくて……いま、毎日楽しいの♪」

「それに……ふふっ♪ こうして、あたしのことを気にかけてくれる湯者さんもいるしね……♪」


「彗ちゃんと環綺ちゃんとはどんどん高め合える関係でいたいから……こういう話ができるのは、湯者さんだけかも。」

「さっきみたいに……あたしのこと、いっぱい心配してほしいな。それで、いっぱい甘えさせてくれるともっと嬉しいなー♪」

「特別なことはしなくていいよ。」


「こうやって、時々……ふたりっきりでのんびりできれば、それで十分だから……。」

「…………。」

「えへへ……♪ これ、湯者さんをリラックスさせるというより、あたしがわがままを言う感じになっちゃってるね。」


「ありがと。聞いてくれて……。」

「しゃべりっぱなしってのもアレだし、少し……ぼーっとしよっか……。」


「(自然に息を吸い、吐く)……。」

「(自然に息を吸い、吐く)……。」

「(自然に息を吸い、吐く)……。」


「(自然に息を吸い、吐く)……。」

「(自然に息を吸い、吐く)……。」


「ん……。やっぱり……落ち着く……。眠くなったら、寝ちゃってもいいよ……。」

「というか……あたしが…………。んんっ……。」


   #日向、さらにもたれかかってくる。

   #息遣いもさらに間近で聞こえて――。


日向

「にへへ……。あったかいと……うとうとしちゃうね……。」

「(深めに息を吸い、吐く)……。」

「湯者さんも……リラックス……できてると、いいんだけど……。」


「ん……。おやすみ……優しい湯者さん……。」


   #以降、寝息続く。



《最終話へ続く》


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『ASMRボイスドラマ 温泉むすめ あなたになら甘えられる鬼怒川日向』(CV・富田美憂)

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