第8話 テロを阻止する飲み勝負
結局大遅刻。メイが泣き出したりいろいろとあった。
「ボス!なにしてたんですか!今ヤバい状況ですよ!」
「落ち着け。どうせクリメイションだろ?」
中央拠点は慌ただしく、クリメイションが大きく出てきたと聞いた。
「クリメイションから犯行声明文が。」
開かれたパソコンから動画が流される。
〈皆様、どうもこんにちは。〉
動画の中では、八釘が黒い背景の中で1人語っている。
〈私のこの宣言は、どの犯罪組織や単独犯に向けた物でもありません。〉
その君の悪い笑みを浮かべ、つらつらと予告文を述べていく。
〈そう、日本という国へ。我々クリメイションと、弥門恵梨率いる、『
勝手に名前と組織名まで出された。既成事実でも作ろうとしているのか。
〈共闘戦線として、国会襲撃、及び内閣の壊滅を目的としたテロを行う。〉
······想像以上に酷い事態らしい。
「クリメイションの本拠地、それか八釘についての情報は?」
「いずれも不明ではありますが、クリメイションと直接関係を持つマフィアが。」
情報によると、過去50年の歴史を持つ組織だった。規模もなかなか大きなものだと思われる。
「よし、そこと連絡を取れ。こんなところで時間をかけたくない。穏便に済ませよう。」
すぐに2、3人の部下が動き出した。
「他は全員、クリメイションと八釘についての情報を集めろ。」
私もともに動きだし、車に乗り込む。
「急ぎで『ギリシャ』のとこまで頼む。」
「了解しました。」
するとスマホから着信音が鳴り、メイからだとわかる。
「もしもし、恵梨さん大丈夫なんですか!?」
「うん。ちょっと面倒なことにはなってるけど。」
なるべく余裕があるような話し方を努める。
「公開された名前も偽名の方だし、日常生活に支障はなさそう。」
「だからって、よかったとはなりませんよ······。」
不安そうなメイの声を聞いていると、胸の奥が締め付けられる。
「そういえば、今日テレビでメイの好きなバンドがライブで演奏するって。」
「そんなことはどうでもいい!」
必死になってるのが可愛らしい。
「ほんと、大丈夫だから。死んでも定時で帰るよ。」
「時間とかそういう問題でもなくて······。」
メイがなんとなく納得したのを察して、通話を終える。
これ以上話していると本気で帰りたくなる。そしてそれはおそらく行動に移されるだろう。
「なあ
「はい、なんでしょう。」
運転専門の部下である唐山は古株で、どんなときも揺るがない運転技術を誇る。多少のちょっかいでは動じない。
「私の彼氏······、可愛すぎ。」
「はあ、惚気ですか?」
「いや、マジで可愛い。この前なんて、寒くて布団の中に潜って丸まってたし。小動物かて。しかも帰ると一目散にお出迎えしてくれるし。未だに誕プレであげた読書用眼鏡首に下げて······、」
「わかりましたって。メイ君のことになるとすごいマシンガントークですね。」
そうこう話している内に、目的地に到着した。
バー『ギリシャ』。知る人ぞ知る、と言うかこちらの界隈専門のバー。私の行きつけでもある。
扉を開くと、ベルが鳴った。
「シャル!」
「はいはいはい、どうしましたかー?」
パーマのかかったくしゃくしゃ髪を揺らし、いつも通りの猫っぽい笑みを浮かべている。
シャルはこの店のバーテンダーであり、情報屋。頼めば大概の情報は持ってきてくれる。
「カシスオレンジ、『クリメイション』の情報を。」
「はーい。」
情報を受け取る際は、カクテルを一緒に頼む必要があるのが、この店でのルール。カクテルの度数の高さが情報の重要度に比例する。
「にしても弥門さん、あなたも大変ですねえ。変な犯行予告に巻き込まれて。」
シャルはシェイカーを取り出し、振り始める。
「でも聞くところによると、クリメイションはもともと半グレ集団だったらしいですよ。」
「半グレ?」
「はい。でも7年前くらいに行き過ぎた火遊びで捕まってます。年少送りになったとか。」
火遊び、か。思い返すと先日、死体に火をつけていた。半グレの延長とでも言うのか?
「cremation、火葬という意味ですね。」
「ああ、火葬か······。」
なるほど、あれは火葬だったのか。
「······ウォッカで、追加。」
「フフッ、はーい。」
ここで情報を揃えれば、一旦怖いものはない。まずは飲み勝負だ。
裏社会にも恋はある! 危機ロマロ @noted
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。裏社会にも恋はある!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます