第10話 糸

「良いかジャンヌ・ダルク。まずは基礎トレーニングだ!光技こうぎは体力を増やすことで光を操るエネルギーを高められることは知っているな?セラフから教わったと思うが、まず!!この二日間は他の騎士天使アークエンジェルたちと共に体力トレーニングを行なってもらうぞ!安心しろ。俺の作ったトレーニングメニューにはこの二日間でエネルギー、そしてパワーが爆発的に増える事を約束しよう!」


基礎トレーニングの日。宮殿の外にある訓練場で全速力で走る騎士天使たち。言わばランニングだ。その中にはヴァーチも含まれていた。

もちろん、ジャンヌも。

「走れ!!あと四十周だぞ!!これをクリアすれば足の筋肉とスピードは増強されるぞ!!」

ヴァーチがメガホンを持って騎士天使たちを鼓舞する。確かに彼の言う通り、足の筋肉、そしてスピードはこれでもかと言うほど増えるだろうが、問題は距離だ。

走る範囲が広すぎる。まだセラフたちの特訓が優しく見える。

「キツイヨ…。」

「同志ぃ!顔が!顔がやばいぞ!!」

死にかけの顔の仲間を心配する騎士天使もいれば、真面目に取り組む騎士天使もいる。しかし大半はもう全員ヘトヘトである。ジャンヌもその一人だ。

「死ぬ…!死んじゃう…!」


二時間の休憩の後、次に行ったのは素振りだ。

『1381!!1382!!1833!!』

「良いぞその調子だ!!目標1500まであと少しだ!!良いか!?剣の気持ちになるのだ貴様ら!!」

(何を言ってるんだろう…。)


二日間に及び続いた拷問、いや、基礎トレーニングが今終わろうとしていた。

トレーニングが終わると、集会が行われる。ヤハウェ像の間にてミカエルが像の上に立ち、整列しているジャンヌと騎士天使たち

を見ると、ニヤリと笑う。

「二日間のトレーニングはここまでだ!!良くやったな貴様ら!!この二日間で、お前たちはまさに騎士として相応しい風格となった事を俺は嬉しく思う!!」

すると、突然ミカエルは掌を突き出した。そこから、黄色の粉のような光が出現し、それをミカエルは、ジャンヌを含めた全員にその粉を振りかける。

周りを見ると、騎士天使たちは何やら喜んでいた。

ジャンヌにもその粉が降りかかる。肩についた粉を手で掬い、それを不思議そうに見ていた時だった。

「っ!!?」

自身の心臓が脈打つ。そして一瞬、彼女の体が痺れ上がる。だが、そこからは何も感じなかった。

「この二日間は、貴様たちにとって有意義であったか!?もしそうなら、俺はとても嬉しく感じるぞ!!これからも日々、人々、そして魂を守る騎士として共に成長していこう!!以上!これにて集会を終了する。解散!!」


「あ、あの!」

「ん?はい。」

ジャンヌはさっきの光の粉のことが気になり、背中に槍を背負った小柄な青年の騎士天使に声を掛ける。

「さっきのミカエル様、粉のような光を私たちに振り掛けてましたけど、あれは何だったんですか?」

「あぁ。ジャンヌ・ダルクさんは初めてでしたね!あれは、ミカエル様の能力です。」

「能力?」

「はい。ミカエル様の光技の一つで、“シュヴァゴーレ”と呼ばれています。あの光にはミカエル様のおまじないが込められていて、能力を持ってるんです!」

ジャンヌは驚いた。となると、ミカエルの言う約束は本当だった。

「ミカエル様のトレーニングはすごく過酷で、みんな参加するのを躊躇うんです。でも、最終的にはみんな参加しました。だって、。」

「…ミカエル様は、すごく天使たちの事を思ってくれてるんですね。なんか、ギャップというか…。」

「あはは。そうですよね。でも、本当に良い人ですから。」

すると、騎士天使は「あっ」と声を出すと、照れくさそうにジャンヌに優しく手を差し伸べる。

「その、自己紹介がまだでしたね。僕の名前は“アピス”。改めて、お会いできて光栄です。」

「いえいえ!こちらこそ。よろしくお願いします。」

二人は握手を交わし、軽く喋ってから別れた。メルカバーとして二ヶ月の月日が流れ騎士天使とまた仲良くなれたことをジャンヌは心から嬉しく思った。



数時間後、とある部屋に、ミカエルとセラフ、そしてガブリエルと三人ほどの騎士天使がいた。

「急に集まって貰って申し訳ない。奈落での調査報告をさせてもらいたい。」

「単身で奈落に乗り込むなんて、命知らずだわねぇ。」

揶揄うガブリエルをシカトして、ミカエルは口を開く。

「奈落。そこには文字通り、落ちた者は無の空間だ。アンダーワールドよりも危険な場所と言われている。奈落の周りには大きな岩があり、そこにはアンダーワールドから抜け出してしまったであろう、中級の悪魔と下級の悪魔が数十体いた。俺はそれらを討伐したあと、奈落の入り口である大きな穴に向かい、そこから下を覗き込んだ。」

ここで、ミカエルの顔は少し険しくなった。

「本来、この調査はだった。だが、何故こんなにも時間がかかってしまったか、原因はこれだ。」

ミカエルは一枚の写真を取り出し、それをテーブルに置く。セラフの背後にいた三人の騎士天使の顔は青ざめた。セラフとガブリエルは動じなかった。しかし、少しだけセラフの顔も険しくなった。

「ガブリエル。お前が200年前の戦争で、サタンの魂をよな?」

「えぇ。でも、これは…。」




写真に写っている奈落の穴には、




「奈落に物が消える現象なんてない。無限に続く奈落の穴に落ちたとしても、サタンは魂だけでも禍々しい気配をこれでもかと言うほど漂わせている。俺の憶測だが、

可能性がある。」

「…サタンの軍の残党ですか?」

「かもしれんな。あのマモンが生きているからな。ともかく、サタンの魂の行方を捜索するため、俺は、近々アンダーワールドの調査に出向こうと思っている。」

すると、セラフが小さく挙手する。

「ミカエル様、この調査は私にお任せを。お言葉ですが、貴方は少々働きすぎでございます。」

「…そうか。ではセラフ。行ける時でいい。お前にアンダーワールドの調査を任命する。調査を同行する騎士天使を集めるかは、お前が好きにしろ。」





翌日、ジャンヌは宮殿の外にいた。天界の朝日を見て、深呼吸をする。少しだけ歩くと、二日前、ランニングをしていた場所に着いた。

彼女は肩に掛けていた荷物を置き、定位置に着き、軽く準備運動をした。そして再び深呼吸をしたあと、クラウチングスタートの姿勢を作った。

彼女は、昨日、アピスが言っていたことが本当かどうかを確かめたかった。

そして、

{ダッ}

走り出した。目標は約100メートル程にある大きな木だ。それに向けてひたすら走り続ける。

ジャンヌはその時、

「本当だった!アピスさんの言っていた事は本当だったんだ!」

あっという間に木にたどり着き、一度そこで止まった。足が軽く、疲れも感じない。汗も少ししか書かなかった。

それからジャンヌはざっと10回は繰り返し走った。10回となると少しだけ疲れは出てきたが、まだ走れる余裕はある。

「すごい…!」

「朝から元気だねぇ。オルレアンの少女ん。」

「え?」

横から声が聞こえて、声のする方向を見る。桃色の肌に銀髪の髪、そして上にノースリーブのシャツを着た片目が隠れた女の騎士天使がこちらに歩み寄ってくるのが見えた。

「おはようございます。失礼ですが、貴女は…?」

「初めましてだねん。騎士天使、そして。“パリティ”ちゃんだよん。」

何かと「ん」を付けながら自己紹介するパリティ。

「よろし…ん??」

「YES。」

すると、パリティは指をパチンと鳴らしたあと、

「何かと遅れたけど、君の新しい鎧がよん。」



それから、ジャンヌはパリティに連れられ、加工屋に足を踏み入れた。壁一面には工具や武器が飾られており、見た事ない機械や道具などがあった。

「すごいですね。」

「ごめんねぇん。ガチャガチャしてて落ち着かないよねん?」

「いえ、そんなことは…。」

「それよりも、君の鎧を見せなきゃねん。」

そう言うとパリティは手を上に挙げ、掌を開く。すると、この加工屋の部屋中の工具箱の中からが現れる。工具箱が空き、中から出てきたのは大量のだった。

「これは、光技ですか?」

「そう。説明は長くなるから簡単に言うと、私の光技は糸の中に光を入れて操ることが出来るんだよん。」

パリティは中央にある奥のドアに向けて掌を突き出すと、糸はドアに向けて移動する。ある糸はドアを開け、またある糸はその中にある物をガサゴソと物色する。そして、糸はドアから出る。ある物を持ちながら。

「わぁ…!」

「プレゼントだよん!ジャンヌ。」

糸が持ってきたのは、鼠色で、光沢のあるだった。胸には天使のエンブレムが描かれていて、肩には赤い石が埋め込まれている。

「これが、私の新しい鎧!」

「どうかな?渡すのが遅くなって申し訳ないねん。」

「いえいえ!とても良い鎧です!作ってくれて本当に嬉しいです!」

ジャンヌは少しテンションが上がり、鎧に触れ、色々な部分を物色し始めた。

「そんなに喜んでくれると嬉しいよん。作った甲斐があったよん。」

その時、入り口のドアからノックする音が聞こえ、「どうぞ」とパリティが言う。入ってきたのはセラフだった。

「こんにちわ。」

「あ、セラフさん!」

ジャンヌはすぐに立ち上がり、パリティの横に立った。

「鎧を譲渡しましたか。ジャンヌ・ダルク。それは対悪魔専用の鎧です。赤い石には悟りと同じ機能を入れましたので。そして以前の鎧よりも硬度が高く、動きやすい仕様にしていただいています。流石は加工屋ですね。」

パリティはフンスと誇りげに鼻息を鳴らしてピースをした。

「突然ですがジャンヌ・ダルク。次の特訓の説明を行います。」

「い、いきなりですね…。」

「今日からはの特訓を開始します。何日までに習得しろとは言いません。期限は無期限で、様々な光技を習得してもらいます。ミカエル様の特訓で光を蓄える力が身につけられたことですし。そうですね。習得する光技は最大で四つにしましょうか。」

「すみません。ちなみにですが光技の特訓は、誰が指導してくださるんですか?」



「はて。貴方のすぐにいますが?」



「え?」

ジャンヌは気づく。まさかと思うが、この特訓の指導者は、

「これからよろしくねん!ジャンヌ・ダルク!」

「えぇぇ!!?」

イタズラそうに微笑むパリティ。どうやら指導者はパリティのようだ。

「おや?パリティさん、お伝えしてなかったのですか?」

セラフは首を傾げる。

「いやぁ!ちょっとしようかなってね!セラフ様が伝えるまで黙っとこうと思ってたんですよん。」

「やれやれですね。しかし、パリティさんはこう見えてかなりの光技の使い手です。ジャンヌ・ダルク。ミカエル様に光技について何か教わりませんでしたか?」

ジャンヌはセラフの問いに答える。

「確か、光技は頭の中で光で作りたいものをイメージして、それを光を集めて作成するんですよね?」

「えぇ。まず、球状の形を光で作るのは簡単です。イメージするのが簡単ですからね。パリティさんは、自身の持つ糸全てに光を染み込ませ、それを操ります。お考えください。毛糸玉は球状ですが、とても長い糸が絡まって出来た物です。しかも彼女はそれを何十個も所持していて、尚且つ数十メートルにも及ぶ糸全てに光を染み込ませるようにイメージしています。これは、一般の騎士天使なら頭がパンクする程の思考です。ほぼ無限に続く糸に光技を使っている状態ですので。」

「たしかに…!ただでさえ、私も光で棒を作れないのに…。」

「流石にここまでの光技を覚えろとは言いません。まずは一般的な光技から習得していきましょう。」

「は、はい!」

その後、セラフは加工屋の部屋を後にした。すると、

「あ!そういえば!」

「どうしたんですか?」

「実はねぇん、光技の特訓をさせて欲しいって頼まれたんだけど…」

「もう一人、ですか?」

その時、加工屋のドアが勢いよく開き、何者かが大慌てで入ってきた。

「ひゃっ!」

「す、すいません!遅れまし…。あれ?」

「貴方は…!」


どうやら、そのもう一人というのはの事らしい。






一方その頃。

「わぁぁ…!!」

ランベール親子と人間の姿のド・ミニオはルーアンのゲームセンターに来ていた。ド・ミニオはUFOキャッチャーの中にある商品を見て見惚れていた。その中にはアニメのキャラクターのフィギュアが置かれていた。

「えっと、それ好きなの?ド・ミニオさん。」

「え!?お母さん知らないの!?」

リタの隣にいたキュリオが言う。

白子しろこのバレーの山神だよ!?見た事ない!?」

「そのアニメは知ってるけど、あんまりキャラクターは知らない…。」

ド・ミニオはポケットから財布を取り出し、息を荒げながら小銭を持つ。

「はぁ…。はぁ…。一番好きなキャラなのです…!お金はたくさん持って来たのです…!!私のコレクションに加えるなのです!」

「貴女一応パトロールって役割でここ来たんだよね?セラフさんとケルヴィさんに怒られない?」

すると、キュリオが口を開く。

「私音ゲーやってくるねー!」

「あ、わかったわ。何かあったらここに来てね!」


「えーっと、DAIDAIは、あった!」

キュリオはお気に入りのリズムゲームの機械を見つけて一目散に走った。

(場所が変わったからわからなかったなぁ。まぁいいや!)

そして、DAIDAIの前で止まり、お金を入れようとした時、

「あ…。」

キュリオは不意に横を見ると一人の少女が立っていた。赤いブカブカの上着を着た銀髪で、緑色の瞳をした垂れ目の少女である。何やらそわそわした様子だ。

「ご、ごめんなさ…!」

「ごめんね!先にやって良いよ!」

「え…?でも…」

「大丈夫だよ!私あとからやるから。」

「あ…えと、はい。」

その少女は恐る恐るコインを入れる。スタート画面から切り替わり、可愛い女の子のアバターが現れると、様々な曲のタイトルが現れる。少女はその中から曲を選んでいた。数秒後、少女は曲を決めたようで、決定ボタンを押した。キュリオは後ろからその様子を見ていた。

(え!?これ確か、めっちゃ難しい曲じゃ…!?)

数秒後、曲のイントロが始まった。リズムに合わせて画面に現れる丸や線をタッチしたり、なぞるだけのシンプルなゲームだが、このゲームはかなり難易度が高い。

しかも、その少女が選んだ曲はそのゲームの中でもフルコンプリートする確率が低い曲の一つだった。

画面にはたくさんの丸や線が現れる。しかし、少女はそれらをリズムに乗ってなぞり、タッチしていく。キュリオはこのゲームを三年前からやっているが、この曲はクリアしたことが無いため、少女の実力に圧倒されていた。

3分後、曲が終わり、スコア表が表示される。

フルコンプリートというわけではなかったが、あと少しでそれに辿り着けるほどのスコアだった。

「す、すごい!!」

「ひえ!!」

キュリオは拍手をした。

「君すごいよ!この曲すごい難しいのにこんな点数取れるなんて!」

「わ…あ…はい。どうも。」

「私すごい感激!師匠って呼んで良いかな!?」

「えぇ…。ちょ、ちょっと。」

オドオドした少女の様子を見ると、キュリオはついグイグイ来てしまったことを申し訳なく思った。

「あはは…ご、ごめんね!急に。」

「だい、じょうぶです。えっと…名前…」

「キュリオ・ランベールだよ。キュリオで良いよ!」

「キュリオ、さん…。その、“ルネ”って言います…。」


それから二人は、変わりながらゲームを遊んでいた。

「惜しいなぁ!あとちょっとだったのに!」

「で、でも!良いスコアだと思う…!」

「ありがと!どうしよう、一旦休憩しよ!」

「う、うん!」

ゲームをやっていくうちに、二人は少しづつ仲良くなっていき、ルネは敬語を使わなくなっていた。

二人は椅子に座って、他愛のない会話をする。

「へぇー!結構遠いところに住んでるんだね!」

「そうなの。今はお父さん、仕事中だから。一人は寂しくて…。でも、友達を作るのは苦手なの。私、こんなんだし。オドオドしてて、人と喋るのは緊張するし…。」

「うーん。それじゃさ、私と友達になる?」

「…え!?」

突然の一言にルネは驚く。

「なんかさ、ルネちゃんとすごく仲良くなれそうなの!やってる音ゲーも一緒だし、好きな音楽も一緒!気が合うと思うんだ!」

「…でもさ、私なんかでいいの?オドオドしてて、ネガティブだし…」

「そんなの関係ないよ!」

キュリオはルネに手を差し伸べ、ニコリと微笑んだ。ルネは一瞬戸惑ったが、顔を赤くして、その手を取った。

「ありがとう…嬉し…」

その時だった。

「キュリオー!そろそろご飯食べにいくよー!」

リタと先ほどのフィギュアを持ったド・ミニオがやってきた。

「やったなのです!!ゲットしちゃいましたぁ!!」

「ん?キュリオ。その子は?」

ルネは下を向いて、黙り込んでしまった。

「お母さん!新しく友達ができたんだ!」

「ホント?」

「うん!ルネちゃんって言うんだ。」

リタはしゃがみ込み、ルネに視線を合わせる。

「はじめまして。うちの子と仲良くしてくれてありがとう!」

「え…えっと…。はい…。はじめまして。」

その時、ルネはハッと何かを思い出すように言った。

「その、今何時ですか?」

「え?今、12時半だけど…」

「っ!!今日…お父さんが早く帰る日だから…。もう帰らないと…!」

「あら、そうなのね。」

ルネは椅子から降りて、そのままゲームセンターを出ようとした時、

「明日お母さん連休だからまたここに来るんだけど!明日もこれそう?ルネちゃん!」

「…。」

キュリオからの言葉で後ろに振り返り、頷いた。すると、キュリオは嬉しそうに手を振った。ルネも手を振りかえすと、そのままゲームセンターを出る。

「…。」

ルネはもう一度振り返った。透明な自動ドア越しに写っている。キュリオとリタが仲良く会話しているのが見えた。



「…良いなぁ…。」


そう呟くと、そのまま帰り道へ歩く。

それを、ド・ミニオは見ていた。











家族。生き物にはみんな、家族がいる。


私にも、家族がいる。でも、お父さんだけ。


私は、他の家族や、親子を見るのが好きだった。


でも、それと同時に、を感じてしまう。


子育ての方法や、子供の育て方は、人によって違う。そして、子供は親に似るとは言うけど、私は、絶対にお父さんに似てない。





「ルネ。お父さんな。また疲れてしまったんだ。」



夜、お父さんが晩御飯を食べる時間だ。

お父さんが椅子から立ち上がり、部屋に座り込んでる私に近づいてくる。

「今日は、良い子にしてたか?」

「…うん。」

「家から、?」

「…出なかったよ。」

「良い子だ。流石はお父さんの宝物だ。」

その時、お父さんは私の服を無理やり脱がした。お父さんは力が強い人だから。服を脱がす時、毎回腕が痛くなる。



私の体は、もうボロボ…いや、お父さんの言うでいっぱいだった。




お父さんは私の体をペタペタ触り、腕、背中、脇、脚とかを隅々まで見てくる。

それには全部、印が付いていた。

「うんうん。前背中にやったやつ、まだ残ってるね。うん?」

お父さんは私のお腹をまじまじと見つめた。そしたら、



「消えかけてるな。なぁルネ。また、付けていいか?」

「…。」

「…印。お父さんの宝物って印だよ。なぁ?」

「…いいよ。」


『ゴッッ』



痛い。背中が壁に叩きつけられた。それにお腹も印を付けられた。私は思わず、吐いてしまった。

吐いたものの中には、血も混ざっていた。

お父さんは倒れた私を抱えると、ぎゅっと抱きしめる。





「えらいえらいえらいえらい。いやぁ!!本当に良い子だなぁ!俺の娘はぁ!!!

ありがとう!!お父さんは元気になったよ!!」












何回か印が付けられたあと、私は、キュリオちゃんのことを忘れたくなった。









あとがき



一ヶ月に一回か二回は投稿できるよう、頑張ります。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。




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