63. 自らが負けましたと言う将棋ほど


自らが負けましたと言う将棋ほど 世に残酷な勝負あらんや


 将棋はルールが少し分かるくらいしか出来ません。でも、棋士の皆さんの強烈な個性と、勝負に賭ける姿勢に頭が下がるので、ときどき将棋中継を見ます。


 昨日、王座戦 五番勝負 第4局が有り、藤井聡太さんは史上初の八冠全制覇を賭け、永瀬王座は永世称号「名誉王座」を賭けた闘いが京都で行われておりまして、私はその対局を朝からネットテレビで拝見いたしました。


 結果的に藤井さんが八冠を取ったのですが、朝の9時から、休憩も有りますが、夜の20時過ぎまで、ひたすら勝つことだけを考えて全力で戦った永瀬王座。ずっと守って来た王座の座を絶対に譲りたくない。おそらく、このタイトル戦で藤井さんを破ることだけを考えて、ひたすらに毎日毎日、寝る間も惜しんでずーっと、研究を続けて来たことでしょう。


 ずっと優勢だったのが、終盤のたった一手で急に敗色が濃厚となり、頭を掻きむしり、投了を宣言するため羽織を羽織る時の、永瀬王座の辛い表情としぐさが忘れられません。


 自分で負けを悟り、それを宣言しなければならない、将棋と言う勝負は、なんと残酷なんだろう、心からそう思う場面でした。

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