第203話バーレン 誤算 復活する者

翌日、京太は、ソニア達から作戦を聞き驚く。


「そんな事を考えていたんだ」


「ダメ、だった?」


「全然。


 知らせてくれたし、皆で決めた事でしょ。


 僕も応援するよ」



「ありがと」



最後に、7日後に作戦を決行する事を京太に告げた。




「わかった。


 なら、こちらもそれに合わせて動くよ」




「うん、宜しく」




話を終えると、京太は、ラゴ、アイシャ、フーカと共に、空へと上がる。




京太達は、バーレンに向かう途中で、何度か、黒い鳥に遭遇する事となったが、

奴らに対して、後れを取る事など無く、呆気なく倒した。




その後は、余計な戦闘を避ける為、アラアイ教国の上空を避け、

大きく迂回しながら、3日間かけてバーレンに接近する。



ラゴとアイシャの調べで、結界の亀裂は、

北側にあり、バーレンを飛びこえた先にあるとのこと。



その為に、必要以上に大きく迂回したのだ。



上手く結界の亀裂に、近づくつもりだったが、障害物の無い海の上。


当然、竜魔人と黒い鳥に気付かれて、襲撃を受ける。




先陣を切って襲いかかる黒い鳥。




――こいつら、どうやって生まれているんだろう・・・・・・




そんな事を考えながらも、次々と倒していると、

当然、竜魔人も姿を見せる。



ただ、その姿は、今までの竜魔人と違い、竜の姿に近い。


体は、全身に鱗を纏い、人のような肌が黒色に変化し、

爬虫類のような皮膚に変わっている。



「グフフフ・・・・・、自ら、飛び込んでくるとは・・・・・」


言い放つと同時に、襲い来る竜魔人達。


一気に襲い掛かられ、防戦一方だが、

余裕がないわけでは無い。



先陣を切るフーカ。



「道を切り開くよ、『ホーリーレーザー』」



フーカから放たれた複数の光線は、黒い鳥達を一撃のもとに葬る。


流石に、竜魔人達には躱されたが、それでも、数を減らす事には成功した。


「では、わらわも続こうかのぅ」


ラゴも、魔法を唱える。


「顕現せよ、我が下僕『ファイヤーバード』」



ラゴの召喚魔法により、50体の召喚獣、ファイヤーバードが、

京太達の周りに現れた。



「全てを焼き尽くせ」



ファイヤーバードは、ラゴの命令に従い、黒い鳥と竜魔人達に襲い掛かる。


黒く染まっていた世界が、徐々に赤へと変わってゆく。



炎に包まれた黒い鳥や竜魔人達が、海へと落ちて行く。


その光景を見ながら、京太が呟く。



「このまま進もう」



そう決めて、進み始めると、武装国家ハーグに滞在している筈のミカールが、

竜に乗って現れる。



「京太様!」



「あれっ、ミカール」



「申し訳御座いません。


 アラアイ教国の竜魔人達が、侵攻を始めました」



「えっ!?」



「京太、戻るのか?」



――このタイミングで・・・・・・どうしたら・・・



『アビスの奥に巣くう者』も、覚醒しつつあるように思える。


だが、アラアイ教国が行動を始めたのなら、

向かう先は、武装国家ハーグしかない。


ドラゴンライダーに関しては、まだ、準備の途中。


長く持ち堪えるとは、思えない。


だからこそ、ミカールが、この地に来たのだ。


ならば、京太の選ぶ道は1つ。




「一旦、引き返そう」


そう決めた京太達は、最短距離で、武装国家ハーグへと向かう。



丁度、その途中に、アラアイ教国の上空を通過する事にもなる。


ならば、いっそのこと、生贄の祭壇を破壊することも

悪い手ではない。


京太が、そんな事を考えていると

アラアイ教国が、視界に入る。


その中で、一際、目を引く建物がある。


――あれが、生贄の祭壇・・・・・


アラアイ教国に辿り着くと、

元々神殿があった場所には、

巨大な生贄の祭壇が、完成していた。


嫌なオーラを放つ祭壇。


放置など、あり得ない。


京太は、決断する。



「ラゴとアイシャは、先にハーグに向かって。


 僕とフーカは、あの生贄の祭壇を破壊する」



「うむ」



「わかったのじゃ」



京太の指示に従い、2人は、武装国家ハーグを目指す。



予定を変更して、アラアイ教国に残った京太とフーカは、

生贄の祭壇を睨んでいる。


フーカは、生贄の祭壇に向けて、指を差す。



「私、あれ、嫌い。


 だって、此処に残っていた人達を生贄にしたんでしょ」



「うん、許せないよね・・・・・」



フーカと会話をしていると、

突如、祭壇付近から黒い鳥達が現れた。


奴らの狙いは、京太達。


襲い掛かる黒い鳥たちの相手は、フーカに任せ、

京太は、生贄の祭壇へと向かう。



―― 一気に決める・・・・・・


――【魔法の神、イシス】、力を・・・・・


京太の体を白いオーラが包む。


その様子に、危険を察知した黒い鳥と竜魔人達は、

方向を変え、京太に向かう。



だが、先回りをしたフーカが立ち塞がる。


「邪魔は、させないっ!!」


「ならば、貴様を先に倒すまで」


竜魔人達と黒い鳥は、フーカに攻撃を仕掛ける為に動き出すが、

フーカの方が早かった。



フーカは、両手を前に差し出ている。


「テンペスト」


風の特大魔法テンペストは、

黒い鳥と竜魔人達を、風の渦の中に捉えて逃がさない。


体を切り刻まれ、赤く染まってゆく風の渦。


「ギャァァァァァ!」


悲鳴が、響き渡るが、

フーカの攻撃は、これで終わりではない。


「続いて行くよ!『サンダースパーク』」



続いて放たれたサンダースパークにより、

捉えられていた竜魔人と黒い鳥達は、

成す統べなく、感電し、灰になって消えた。



「うしっ!」


思わず、ガッツポーズを取ったフーカは、

京太へと視線を向ける。



京太も準備万端。


生贄の祭壇付近に留まっていた京太は、

溜めていたオーラを開放し、魔法を発動させた。



「ホーリーキャノン」


全力で放たれたホーリーキャノンは、生贄の祭壇を包み込む。


そして、光りの中で、生贄の祭壇は、徐々に粒子となり、消滅した。



光りが完全に消えると、生贄の祭壇も跡形も無く消え去っている。


難を逃れて、生き残っていた竜魔人達は、

京太の放った魔法に驚き過ぎて、動きが止まっていたが

我に返ると、京太を睨みつけた。



「貴様ぁぁぁぁぁ!!!」


「グギャァァ!」


生き残りの黒い鳥達と竜魔人達は、

怒りのまま、京太に攻撃を仕掛けるが

当然、敵うはずがなく、

アラアイ教国に残っていた竜魔人達は壊滅した。






「フーカ、このまま先を急ごう」




「はーい」




2人は、後方から敵を挟み撃ちにする形で、

武装国家ハーグを目指す。




武装国家ハーグとアラアイ教国の国境に近づくと、

黒い鳥と竜魔人を相手に戦闘が始まっていた。



空の敵に対しては、ミカールを中心に、ドラゴンライダー達が善戦してるが

それとは、真逆になる形で、地上では、竜魔人達の方が強く、

劣勢を強いられていた。


勿論、その中には、ラゴとアイシャの姿もある。


この2人は、無双状態で、敵を薙ぎ払ってはいるが、

地上戦は、戦場が広く、全てを担う事など、到底、不可能。



京太とフーカは、劣勢を強いられている場所に、向かう事にした。




「フーカ、二手に分かれよう」




「りょーかーい」




地上戦に京太とフーカが加わった事で、劣勢だった場所も、

徐々に竜魔人達を跳ね返し、武装国家ハーグが有利になり始めた。




「このまま、殲滅するぞ!」




武装国家ハーグの戦士達も、完全に息を吹き返し、

このまま戦闘が終わると思えたその時、

大きな地震と共に、地面が割れ、見た事も無いような地竜が姿を現した。




地上に現れた竜は、頭が4つで尻尾が3本。


漆黒に包まれた竜の背には、刃の様に尖った鰭が付いている。




「りゅ、竜だぁぁぁぁぁ!」




叫び声を上げた兵士は、丸呑みにされ、姿を消す。




「ヒィィィィ!」




「引け、退却、退却!」




漆黒の竜は、慌てて退却しようとする兵士達を獲物と定め、

踏み潰し、嚙み砕き、餌とする。



「ギャァァァオ」



口から、兵士達の血を垂れ流しながら、叫び声を上げる漆黒の竜。


「あの竜は何?」


京太は、降りてきたミカールに問う。


「私も知りません」



――やはり、竜魔人の・・・・・・



京太は、咄嗟に指示を出す。


「ラゴ、アイシャ、フーカ、竜を狙って!」



「うむ」



「了解じゃ」



「はーい」



フーカは魔法を放つ。



「サンダ―アロー」



雷を纏った矢は、漆黒の竜に直撃するかと思われたが、

見えない壁に阻まれ、届かない。



「えっ!?」



「ファイヤーボム」



ラゴも魔法を放ってみた。

しかし、先程と同じ様に、見えない壁に阻まれた。



「うぬぅ・・・・・『マジックシールド』か・・・・・」



「ならば、わらわに任せよ」



アイシャは、剣を持ち、漆黒の竜に切りかかる。


だが、分厚い鱗に阻まれ、剣は弾かれた。



「なぬっ!」



魔法攻撃、物理攻撃を跳ね返した漆黒の竜が、笑みを浮かべたように見えた後、

咆哮をあげる。


――こいつ・・・・・


挑発かと思えたその時、空に暗雲が立ち込め始めた。


そして、暗幕のように、空を黒く染めると

雲の隙間から何者かが降りて来る。


その者は、漆黒の竜の背に降り立つと、ゆっくりと目を開けた。



「・・・・・ここは・・・・・地上・・・・・ですか?」



漆黒の竜の背に降り立った物の肌は紅く、頭には角が生えている。


京太は、その姿に見覚えがあった。



――悪魔!?・・・



記憶に残るその姿。


だが、この地に残る悪魔以外は、殲滅された筈・・・・


しかし、目の前にいるこの者の姿は、間違いなく悪魔だ。



疑心暗鬼に駆られながらも、正面に立っている京太。


悪魔も、京太に視線を向ける。



「その匂い・・・・・忘れはせぬぞ、

 貴様、神か・・・いや、そんな筈はない。


 ならば、神の関係者か?」


悪魔は、京太という存在については、理解が出来ていないようだが、

敵だと認識し、睨みつける。




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