第17話 さみしさと心中する

  さみしさと心中する


 世に背をむけた詩句である。後ろ向きな感性である。しかし、何時いつでも、清く、明るく、ほがらかに、していられない。また、私は、そうしていたくなかった。だいたい何時でも「さみしさと心中しんじゅうする」とうふうな感じで生きていたかった。

 駄目だめになってゆく、落ちてゆく感じが好きであった。上昇志向がまるでないわけではなかったが、駄目な、どうしようもない悲しみを身にまといながら生きてゆきたかった。何故なぜ、こんなふうな感性であるのか、原因はわからない。たぶん生来せいらいのもので、こればかりは、どうにも変更はきかなかった。また、こう云う感性のほうが、この世では、生きやすい気がしている。

 この世は、ままならない。うまくゆかないことが、ほとんどである。私の場合は、とくにそうで、すんなりと思い通りにいったことはなかった。何時でも、つまづき、そして、立ち直って、やり直す。または、無理にも突破する。その繰り返しであった。

 大学受験に二度失敗し、進学をあきらめ、人生を諦めた。人生を諦めた当初は、自分は人生を諦めたとは思っておらず、まだやり直せると思っていた。併し、実際は、人生は駄目な方向にむかっていて、私はそれに気がつかずにいた。誰も私に手を差し伸べる者はなかった。家族にすら見捨てられていた。当時は、そう思っていなかったが、併し、事実は今では見捨てられた状況になっている。

 私は、駄目になってゆく人生を知っていたのかもしれない。さみしさをいだきながら生きてゆくほかなかった。


 



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