第6章 着地点
(あれから、ユリウス様の様子がおかしい…。)
ルフェルニアが仕事で会いに行っても、挙動不審な様子を見せるのだ。前のようにユリウスから話しかけてくることもない。
今も気づくと物陰からルフェルニアを見ているが、目が合うと、この前のように脱兎のごとく逃げてしまう。
「ねぇ、ミシャ。私、ローズマリー様にとんでもなく恥ずかしい話をユリウス様に吹聴されたのかしら。」
「さぁね。でも、良かったじゃない。ちょうどいい塩梅の距離で。」
「そうだけれど…。」
(自分勝手だけれど、やっぱり寂しい。)
ルフェルニアは職場の食堂でランチをとりながらミシャと話していた。
ローズマリーが訪れた日からすぐに、ローズマリーからルフェルニアに手紙が届いた。
手紙には、お茶会の話しを無しにしてほしい、ということと、自覚させてやったわ!というテンション高めの何やらわからない話しが書かれていた。
「ほら、また見ているわよ。」
ミシャが面倒くさそうに言うと、ある方向を見て顎をしゃくった。
そこには、書類を持ったまま佇んでいるユリウスとベンジャミンがいた。
ユリウスはルフェルニアと目が合うと、慌ててその場を後にしてしまう。残されたベンジャミンは困ったような表情でミシャとルフェルニアに会釈をすると、小走りでユリウスの後を追った。
「…嫌われちゃったのかしら。」
(今までなら、視線が合ったら絶対に笑ってくれたのに。
変なの。この前まで“今までの関係”でいたいと言われて拒んでいたのに、今更になって私の方が“今までの関係”に固執しているわ。)
「そんなわけないでしょ。今更ルフェのことが好きと気づいて、思春期爆発させてるだけよ。」
流石、恋多き女、ミシャの言うことはまさに当たっていた。
しかし、ルフェルニアは徐々に立ち直っているとはいえ、フラれたあの日のことを忘れていない。
「それこそ、そんなはずないわ。だって、私は既にフラれているもの。」
「…どうして、そんなに複雑になるのか、意味わかんない。」
「え?」
「何でもない。それより、ノア公国の件は上手くいってるの?」
このままルフェに説明しても埒が明かないと思ったミシャは、無理やり話しを変えた。
「うん、原因もわかったし、上手く研究者とも連携が取れているみたい。でも、薬草の改良はすぐに上手くいくものでもないから、今は長期的な計画に向けて覚書の内容を調整中。」
覚書の内容は文官の仕事、ルフェルニアは幸いにもこの件を担当させてもらい忙しくしていたが、大きな案件のため、しょっちゅうユリウスとは打合せをしていた。
仕事モードになればユリウスは普段どおりにはなるが、打合せの開始直前と直後は挙動不審なので、実にやりづらい。
「そっか、大変だろうけど、頑張って。」
「うん、ユリウス様の助けもあるし、きっと上手くいくわ!」
ユリウスの挙動不審には困っているが、ルフェルニアはユリウスの手腕を信頼しているし、尊敬しているのだ。
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