82
「ルフェ!」
ユリウスがノックをしないなんて、相当至急の用事があったに違いない、と声をかけられたルフェルニアはソファから腰を上げようとした。
しかし、両手をローズマリーに握られたままだったため、不格好な姿勢でユリウスの方を向く。
「ルフェ、大丈夫?イルシーバ侯爵夫人に何を言われたの?」
「ローズマリー様とは…、少々お話をしていただけです。何か御用でしょうか?」
ルフェルニアは話しの内容をどう説明するか迷い、曖昧に答えた。
「君がイルシーバ侯爵夫人に呼び出されたと聞いて、急いで来たんだ。」
たったそれだけで?とルフェルニアは思ったが、ユリウスの過保護は今に始まったことではない。
ユリウスは2人に歩み寄ると、ルフェルニアの手首を取って、ローズマリーの手を振り払おうとしたが、思いのほかローズマリーの握る力が強く、手が外れない。
「イルシーバ侯爵夫人、どういうおつもりですか?」
ユリウスは先ほどまで一度もローズマリーに目をやらなかったが、ついに不機嫌そうにローズマリーを見た。
「我が家のお茶会にお誘いしていただけですわ。」
ローズマリーがツン、として答えるとユリウスは視線を鋭くした。
「またルフェを君たちの悪意に晒そうというのか。」
「わたくしも、過去の行いについては反省していますのよ?あのときはわたくしの方が幼稚だったのです。もうそのようなことは致しません。」
ローズマリーは漸くルフェルニアの手を離すと、ユリウスを真っ直ぐと見据えた。
「それよりもユリウス様。わたくしは今、衝撃的なことをルフェルニアさんからお聞きして、とても驚いているのです。」
「衝撃的なこと?」
怪訝な様子で聞き返すユリウスに、ルフェルニアは顔を青くした。
まさか、ルフェルニアがいるこの場であの話をするのではないな、とルフェルニアはぎょっとした表情でローズマリーを見る。
「ルフェルニアさん、貴女は退室いただいて良いわ。呼び出して悪かったわね。」
ローズマリーはそう言うと、ルフェルニアの耳元に口を寄せて「後は任せて安心してね」と言う。
(全然!安心できないのですが!)
ルフェルニアは顔を引きつらせるが、このままここにいて恥ずかしい思いをするのも居たたまれない。
「ルフェ、イルシーバ侯爵夫人は僕が帰しておくから、大丈夫。」
ルフェルニアはユリウスにも促されて、漸く退室を決意すると、会釈をしてから静かに扉を閉めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます