第22話 期待されているなら応えよう


「つまり、視覚組と聴覚組に分ける必要がありそうね」


 萌恵さんは現役の私たちより飲み込みが早い。科学館の人たちの話を聞きながら既に答えを導いていた。


「全部で何人を予定していますか?」


「今回は初回でお試しの意味合いもあって、どちらも二名ずつ、合計四人くらいまでの上限を考えています。上手くいくようであれば徐々に人数を増やしていければと思っていますが」


 話を聞けば、今回の取り組みが上手く行けば夏休みなどにもお願いしたいとのこと。


「どうする? 夢砂でやる?」


「それだとその子の症状によって調整することが難しいから、直接接触した方が間違いないと思う」


 お母さんと奏天さんもみんな話が早い。つまり、みんなやり方は分かっているってことなんだ。


「風花のお母さんすげぇな」


 博史くんが横で囁いてくる。いや、見たものを転送で送り込める奏天さんの方が技としては高度のはずなんだ。


 そして、その二人ですら敵わない存在としている萌恵さん。でもその三人とも、今の主役は私たちの世代だとの共通認識を持っている。


「分かりました。募集はかけていただいて大丈夫です。暗い場所なのと、帰りのことを考えて、必ず参加者は保護者同伴にしてください。こちらのメンバーの調整や訓練はそれまでに行います」


 海斗くんが代表して答えた。


「この間、学校の中じゃあれだけインパクトを持たせたんだ。やり方が分かっているなら、みんなで練習してやればいい。振り分けはこれから考える。もちろん咲来さんにも魔法以外の役目はある。やれることはやってみようじゃないか」


 科学館の皆さんが帰ってから、再びいつものメンバーと萌恵さんだけが残る。お母さんたちはお店があるからと先に上がってもらった。


「そうねぇこの中では風花ちゃんが一番力が強いか……。海斗と風花ちゃんで視覚のグループを担当。そのサポートに奏天ちゃんをつけて、博史くんと瞳海ちゃんで聴覚の方を行きましょうか。咲来ちゃんが本番の司会ってことで。それぞれやり方はサポートにつく初代メンバーに聞いてみて? 全く新しい技を覚えるわけじゃないから大丈夫だと思うよ」


 そうなんだよね。もう私たちの周りには今回の課題を実行できる人達がいる。あとは第二期のメンバーがそれをいかに早く習得できるかにかかっている。


 私も視覚サポートの話は聞いたことがある。もともとカウンセリングなどの魔法行使の時に水晶玉にイメージを映し出すなどの技を持つ奏天さん。やり方は分かっているのだと思う。あとは迷惑をかけないように私たちが少しでも早くモノにする必要がある。


「奏天さん、……そんなことになったんで、よろしくお願いします」


 学校での打ち合わせを終え、一度こころ屋に寄って奏天さんに事の次第を伝えて頭を下げた。


「なんだぁ、海斗くんと風花ちゃんならやり方さえ教えればできるわよ。なら啓太は瞳海に教わるのね? こういう事になったら瞳海の方がスパルタかもしれないよ?」


 やっぱり双子姉妹なんだなぁ。昔から奏天さんは、「何かに打ち込んだ時の集中力は瞳海には敵わない」と言っている。


 責任感の違いかもしれないけれどと、その時も笑っていたのが印象的だった。


 もちろん主力は私たちの世代だとしているけれど、そのバックアップに奏天さん、お母さん、そして萌恵さんを用意している。何かがあっても大丈夫なように予防線を張っているんだから。


 それでも「瞳海なら啓太を中心に出来るようにと特訓するでしょうね」だって。


「風花ちゃんも海斗くんも力の強さは分かっているから、それをどうコントロールして使っていくかは、練習方法に書いておくから明日まで待っていてね」


 奏天さんは、そう楽しそうに笑いながら、「心配さなくてもできるよ!」と私の肩を軽く叩いて送り出して、私はお家で夕ご飯を用意してその日は終わったんだ。

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