第19話 ダンジョン攻略を終えて
クロウが目を覚ますと、見知らぬ天井だった。以前にもこんな体験をした記憶がある。あの時は見慣れた天井だったが。どうやらアリの魔族との戦闘後、気を失っていたらしい。むしろあの出血でアリの魔族と戦えていたこと自体が奇跡のようなものだった。
「目が覚めた?私は保険医のムーナよ」
どうやらここは学園の保健室らしい。
「セイン先生が来たとこまでは覚えています。」
「そう、あなたはセイン先生に運ばれて寝ていたのよ。みんな心配してたわ。①日は寝てたんじゃない?」
どうやらダンジョン攻略から一日たっていたらしい。
「じゃあ伝達事項だけ伝えときますね。まず一週間は休業になるわ、これは全生徒共通事項だから。
それで今回の件から12月のダンジョン攻略は無くなって別の催しが開かれることになったわ、詳しいことは追ってセイン先生から連絡が来ると思うわ。
そして最後にあなた自身のこと。手と足の火傷がひどかったわ。魔法で回復はしているものの感覚が鈍くなっているから注意してね。特に手はひどいありさまだわ。今後は炎の魔法の使い方について考えてみてね。
それじゃあ今日はもう寮に帰っていいわ、みんな心配してると思うから。」
「わかりました、ありがとうございます。」
クロウは軽く会釈してから、ベットから出て自室に戻る。戻る道中様々なことを考える。
(ダンジョン攻略ができないのは残念だなぁ、炎の魔法は自分が燃えないような使い方を考えなきゃ。威力はあるから別の使い方をしなきゃ。やっぱり師匠に教わった水の魔法をまずは極めなきゃ。)
そんな目標を立てているとあっという間に自室に着く。まだ寝る時間には早い時間帯、中に入るとみんなが心配そうな顔をしている。
エルナなんかは涙目だった。
「大丈夫でしたか?」
「私...魔術の事話すの楽しくて...本当に心配してて...」
「友達が死ぬのは嫌っスよ...」
どうやら相当心配させていたらしい。訓練で仲が深まった1班の人たちよりも長い時間生活していた友達。そんな言葉でクロウは心が温まる。それと同時に強くなりたいと思う。友達を心配させないためにも。
その夜はダンジョンでの話をたくさんした。最初は順調だったことも、アリの魔族と戦ったことも、そしてリーダーとして班員の命は守り切ることができたことも。そうしてその日は幕を閉じたのだった。
「みんなダンジョン攻略を終えて一週間たったが元気だったか?」
休業の一週間が終わり、久々の授業、クロウもすっかり回復しており、昨日も訓練をしていた。
「だが今日来てもらって唐突なんだがな、三日後には夏季休業となる。10月の初めから授業は再開するからさぼるなよ。
そこで夏季休業中の話なんだが、部活紹介の日がある。まあ紹介も部活動自体も強制参加じゃないから興味がある奴はしっかり情報を集めておくように。以上。」
そんなことを言って授業が始まる。クロウは夏季休業中にどんなことをやるか考えながら座学を受けるのだった。
その日の授業が全て終わるとセイニャが近づいてきた。実は今日の授業中、全員からの視線を感じていた。特に1班のメンバーから。
「本当に生きててよかった!」
セイニャは心の底から嬉しそうに、笑顔で言う。
「まあ死にかけたけどね、守れてよかったよ」
そんなことを少し笑って言うクロウにセイニャは真剣になる。
「嫌です。守るって言ってくれて本当に私の事を守ってくれて嬉しかったんです。
でもクロウが死ぬのはいやだから!(特にこれからは...)」
最後に何を言ったかは聞き取れなかったが、それでも心配させてしまったことには変わりない。
「強くなるよ、もっと」
「私ももっと強くなります!」
「うちも!あんな魔族なんか倒せるくらい強くなってみせるから!」
「おれもだ!あんときはビビったけど今度は勝つ!」
周りで様子を伺っていたシースとカセも話に入ってきて宣言する。そんな様子を見て四人は顔を合わせて笑う。このダンジョン攻略で四人の絆は深まったのだった。
その日の夜、いつものように話をしていると今日出た夏季休業についての話になる。するとシロナが改まったような感じで話をする。
「みなさんに話があります。実はお父様から手紙が来ていて。どうやら私の寮室にいる方々が気になるらしくて...
お父様主催のパーティーがあるので来ていただけませんか?」
シロナのお父さんというと国王にあたる。どうやら夏季休業中にも波乱はありそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます