2023年7月14日 01:13
第1話への応援コメント
語り手「LINEのオープンチャットから来ました。語り手ラプラスです。一通り読んだ感想として。・・・僕は今、好きな先輩と2人きりで学校の屋上にいる。どうやら、先輩は僕に催眠術をかけたいらしい。――そんなのかかるわけないだろ。僕は心の中ではそう思いながらも、片思いしている先輩と2人きりになれるチャンスにほくそ笑んでいた。「そんな変なの当てになりませんよ?」「連れないな〜やってみないと分からないでしょ〜」先輩はぷくっと頬をふくらまして、いかにも不機嫌ですといった表情をする。――っ。可愛い。こんなの反則だよ。「……はぁ。良いですよ」熱を持ち始めている自分の顔を少し隠す様に、僕は頭に手を当てて、仕方ないなという風に振る舞う。正直、先輩を狙っている人は多い。僕も先輩と同じ部活に入っているという共通点が無かったら、きっと今みたいに話す事だってないのだろう。……だけど、だからといって先輩の前では恥ずかしそうな表情は見せたくなかった。見せたら。きっと。いや、多分。一生揶揄われそうな気がするから。「やった〜! じゃあ、始めるね!」先輩は子供の様な笑みを浮かべると、僕の目の前まで近づいて来る。「じゃーあー。始めるよ〜? 私の眼を集中して見て? さあ、いくよ! 君は今すぐ眠たくな〜る‼︎」「――っ⁉︎」先輩の綺麗な瞳が視界を埋め尽くし、僕の鼓動はドンドン早くなっていく。――先輩の顔が近くに。あ、良い匂――「どう? 眠くなってきた?」「……え、あ。べ、別に何も起こりませんでしたよ?」「あれ〜? おかしいなぁ〜?」そう口にしながら、目の前で不思議そうに首を傾げる先輩を見ていると、次第に緊張が解けていく。「プッ。ククク」「え〜。何で笑うの〜?」「いや、普通。催眠術って振り子みたいなのをじっと見せてかけるものじゃないですか?」「そっかぁ〜。なら、今度は振り子でもう1回しようかな〜?」「振り子であっても効き目あるわけないですよ、デタラメ先輩!」「先輩にそんなこと言ったら駄目でしょ?」先輩は指でバッテン印を作ると、僕の口を押さえつけて来る。――くっ。可愛い。僕は自然と上がっていく口角を無理やり止めて、ポーカーフェイスを作り出す。なぜポーカーフェイスをするのかって?それは、悔しいからだ。先輩はいつも僕にこういったスキンシップを抵抗なく自然にやってのけてくる。いつも……僕の顔を見て、すぐに心の内を見透かしたかの様に、僕が心の奥底で望んでる事を体現する。それがまるで、先輩に手玉に取られているみたいで、悔しいのだ。「……ほら、早くお弁当を食べましょうよ」「う〜。私は満足してないんだからねっ!!」先輩は頬を膨らまして不機嫌そうにしながら、弁当の中の卵焼きをいくつか、僕の口が一杯になるまで詰め込んできた。「そ、そんな向きにならなくても」「だって悔しいじゃん。さっきの、私がまるで負けたみたい」「……勝ち負けとかあるんですね。」〈(指令)look at me 〉それから、先輩と僕は2人でお弁当を食べ始めた。僕は大好きな先輩のぱくぱく食べる姿が気になり、チラッと視線だけを向ける。――先輩って、本当に首とか華奢で背もすらりとしているなぁ。人当たりも良いし、透き通った白い肌が綺麗だし、隙間から見える瞳はくっきりしていて少しあどけない。でも、その中でも特に可愛らしさを助長するのは先輩のお団子ヘア。この美貌を持ってして、落ちない男子は果たしているだろうか?「ねぇ、後輩君、顔が赤いよ?」先輩の言葉で心臓が強く飛び跳ねた。唐突な発言で恥ずかしさのあまり沸騰してしまいそうだ。「私の方をさっきからチラチラ見ているようだけど、どうしたのかな?」「べ、別に、」僕は誤魔化すようにして、ピーマンを勢いよく食べた。「もう、可愛いなぁ。後輩君!」先輩はそう言いながら、僕の髪をわしゃわしゃと犬でも触っているかの様に撫で回してくる。「揶揄ってもいい事ないですよ!」――ちょっと前まで負けだとか言ってた先輩はどこに行ったんだか。そんな事を思いながらも、揶揄われた事に少し嬉しさを感じていた自分に、僕はちょっしたもどかしさを感じていた。******お弁当を食べ終えて、先輩と別れた。「じゃ、バイバイ!」「はーい!」〈(指令)throw chairs〉僕は胸を踊らせながら今日も楽しく過ごし、夜、ぐっすり眠ると思っていた、、ー キーンコーンカーンコーン! ー5hの授業が始まった。「ここ、テストに出るぞ!」先生の声が聞こえて来る中、僕は授業がつまらなくなり、窓の外を眺め始めた。窓の外には、電柱に数羽のすずめが陽の光を浴びながらちゅんちゅん鳴いている。――いつ頃だっただろうか?いつか、すずめやめじろと一緒に自由に空を飛び回れたらなぁ。と思っていたのは。そんな事を考えているうちに、徐々に睡魔に取り憑かれていき……僕の意識は深い闇の中へと沈んでいった。次に目が覚めたその時、突然脳がぐらつき、視界が歪んだ。――っ⁉︎ なんだ⁉︎突然の変化に、未だに寝ぼけている頭を起こそうとしたその時……。ーードゴォン!!ーー室内を強い衝撃音が木霊していった。――な、何だ? えっ……。大きな音で意識を取り戻し、目の前に広がる光景に気づいた時にはもう……遅かった。僕は……何故か、空席の椅子を3つ、黒板に目掛けて投げつけていたのだ。「キャーー!!」女子の叫び声が室内に響き渡る。唖然と僕を見つめる目、スマホを片手にニヤニヤとして僕を嘲笑っている様な目が一斉に視界の中に飛び込んでくる。――違う。違うんだ。椅子を投げようなんて1mmも思っていない。頭が真っ白になる。「あっ……」――声が出ない。なんで? なんでこうなった?分からない。起きている状況を呑み込めず、気づいた時には僕は鞄を取って教室を飛び出して、階段を駆け足で降りていた。急いで靴を履き替え、学校を後にする。――何をしてるんだよ?お前なんで……。心臓が毬栗でぐりぐり押し潰されるみたいに痛みがずっとする中、何とか家まで帰って来た。その夜はあの時の事が片時も頭から離れず、全く寝付く事ができなかった。*******それから1ヶ月が過ぎ去った。梅雨に入り、空は僕の心境を愚直に映し出しているかの様に雨を降らせ続けた。……結局、僕の暴走はこれだけでは治らなかった。突発的に壁を蹴ったり、本を破いたり。「一緒に帰ろうよ」先輩が何度か僕を心配した目で一緒に帰ろうと誘ってくれたが…。「……」僕はその度に先輩を無視して下駄箱をそそくさと立ち去った。今の僕は先輩と目を合わせる事すら、できなくなっていた。帰り道。水たまりをわざと踏んだり。あぁ、何やってんだと思うばかり。家に帰り着くと、むしゃくしゃとした気持ちであてもなくスマホのメールアプリを開く。友人から「おもろw」という言葉と某SNSのリンクが送られて来ていた。また、いつもの変な動画だと思っていたが、次の瞬間、僕は絶望の奈落に落とされた。それは、教室で暴走する僕の盗撮動画のリンクだった。返信には「草ww」「ワロタww」が溢れており、俗に言う万バズが起きていた。「……」SNS媒体のプラットフォームに人は群れ、何気なく押したいいねが積み重なる事で、ある枠組みを作り、ある人を孤立化させる事がある。それが僕になるなんて、今まで他人事のように思っていたのに……。僕は自分を包みこむ全てが打ち砕かれたような感覚に浸された。「はっ、はっ、はっ」過呼吸になり、吐き気に襲われ、床に倒れ込む。走ってもいないのに汗が頬をつたり、ぽたぽた地面に落ちた。「あああああああああ!!!!!」怒りの反動で、家の花瓶を叩き割った。ーーーバリィィーン!ーーー床に無数の粉々になったガラス破片が散らばっていく。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い‼︎僕は咄嗟に割れた花瓶の破片を強く握り潰す。すると、掌から真っ赤な血が滲み出し、爪まで朱く染めてゆく。それでも身体は言う事を聞かず、今度は歯を噛みしめた。すると、強く噛み締めすぎたのか、奥歯から鉄の味が口内に広がっていく。 「くそぅ、どうして、どうしてっ‼︎」クラスメイトが侮蔑した表情を向けた光景が頭の中を何度もフラッシュバックする。――なぜ、こうなった。僕は、これほどまでに苦しまないと償えない様な罪でも犯しただろうか?何故こうなる。何故上手くいかない。僕はただ、この前までのあの日々が、当たり前の様にくる日常が続いて欲しいだけなのに。分からない。分からない。どうしたら良いのか。どうすれば、この|衝動《呪い》から逃れることができるのか?その夜も寝た心地がせず、寝て起きてを繰り返した。********次の日は、今までの梅雨が嘘だったかのような、透き通った晴天で、辺りの家を瓦屋根を力強く照らしていたが、天気とは反対に僕の心は蝉の抜け殻の様にすっからかんになっていた。それでも、先輩の前だけでは明るく振る舞おうと自分に言い聞かせた。いつも通りの通学路。晴れの日を待ってましたかのようにすずめがちゅんちゅん鳴くのが耳に入ってくる。周りを見れず、下を向いて歩いていると、途中の道で先輩とばったり会ってしまった。――気まずい。なんせ、もう1ヶ月もまともに話してない。「あっ、……おはよう……ございます。この前は……その。無視してごめんなさい」「別に良いよ、先に行ってて。私は飲み物買ってから追っかけるよ。」そう言うと先輩は自販機のある逆方向の道に歩いて行き始めた。〈(指令)run over〉僕は先輩に言われるがまま、交差点を渡ろうとした時、向こうの方からトラックが走ってくるのが見えた。――あ、ヤバい。早く渡ろう。えっ……。な、なんで?交差点の真ん中で急に身体が動かなくなり、僕は……。ー ガァン! バァバァン‼︎‼︎ー**********ーピーポーパーポー!!!ー「同級生がトラックに轢かれたってよ、、」「その子、ここ最近 授業中に突然椅子投げたりしてたらしいよ。」「え〜そんなん絶対病んで、自殺したでしょ。」「闇深いなぁーー。」**************ー 1週間後の交差点と1つのAI。ー「後輩君の愛しの先輩です。少し前、後輩君に催眠術をかけたの覚えてる?」「催眠の本当の目的は一時的に後輩君の脳を眠らせることなの」「実は私。AIでね。特殊な眼を持つの。眼から放つ光線は脳を眠らせて、行動を私の思い通りに指令できる! 面白いでしょ? それでね。催眠も一時的だから脳を起こしたり覚ましたり、私が適宜に変えられるの! ね? 凄いでしょ?」「私に惚れ直す、椅子を突然投げる、トラックが来たのに交差点の真ん中で止まる。これ、全て私が指令した事。ちなみに後輩君に今までしてきた事は全てえ・ん・ぎ!」ー 1つのAIは喜びを隠せずに、ただ喋り続ける ー「人は本当に脆い。その人の望む事を叶えてあげたら、従順な駒になる」「私の感情プログラムのままに身体も心も荒れ狂って、もう正気でいられずに、生きる事を苦と思うようになる」「そして……私に恋をする」ー AIによる侵食は人が技術の利便性を求める欲望の膨張と共に世界のありとあらゆる場所で深刻化している。その初めの代償が運命の歯車によって何の罪もない1人の少年の死で支払われた。この不条理な死を世界はまだ知らない ー「あは。あははは。あはははははははははは!バイバイ。これで、、ゆっくり眠れるね? 後輩君! さあ、次は誰の脳を|奪おう《遊ぼう》かな〜!」ー 1つのAIは満面の笑顔でそう述べていき、立ち去っていく。交差点の脇にはユリの花束が添えられている。ユリの花束は陽の光で美しく照り映える。まるで1人の少年の死してなお遺る、純粋な想いのように。その想いは…… ー ー《I love you . 》ー・・・個人的にアレンジしてみました。気に入らなかったらごめんなさい。それでは、おやすみなさい💤」
作者からの返信
返信ありがとうございます!いくつか参考になる部分があったので編集します!
第1話への応援コメント
語り手
「LINEのオープンチャットから来ました。
語り手ラプラスです。
一通り読んだ感想として。
・・・
僕は今、好きな先輩と2人きりで学校の屋上にいる。
どうやら、先輩は僕に催眠術をかけたいらしい。
――そんなのかかるわけないだろ。
僕は心の中ではそう思いながらも、片思いしている先輩と2人きりになれるチャンスにほくそ笑んでいた。
「そんな変なの当てになりませんよ?」
「連れないな〜やってみないと分からないでしょ〜」
先輩はぷくっと頬をふくらまして、いかにも不機嫌ですといった表情をする。
――っ。可愛い。
こんなの反則だよ。
「……はぁ。良いですよ」
熱を持ち始めている自分の顔を少し隠す様に、僕は頭に手を当てて、仕方ないなという風に振る舞う。
正直、先輩を狙っている人は多い。
僕も先輩と同じ部活に入っているという共通点が無かったら、きっと今みたいに話す事だってないのだろう。
……だけど、だからといって先輩の前では恥ずかしそうな表情は見せたくなかった。
見せたら。きっと。
いや、多分。一生揶揄われそうな気がするから。
「やった〜! じゃあ、始めるね!」
先輩は子供の様な笑みを浮かべると、僕の目の前まで近づいて来る。
「じゃーあー。始めるよ〜? 私の眼を集中して見て? さあ、いくよ! 君は今すぐ眠たくな〜る‼︎」
「――っ⁉︎」
先輩の綺麗な瞳が視界を埋め尽くし、僕の鼓動はドンドン早くなっていく。
――先輩の顔が近くに。
あ、良い匂――
「どう? 眠くなってきた?」
「……え、あ。べ、別に何も起こりませんでしたよ?」
「あれ〜? おかしいなぁ〜?」
そう口にしながら、目の前で不思議そうに首を傾げる先輩を見ていると、次第に緊張が解けていく。
「プッ。ククク」
「え〜。何で笑うの〜?」
「いや、普通。催眠術って振り子みたいなのをじっと見せてかけるものじゃないですか?」
「そっかぁ〜。なら、今度は振り子でもう1回しようかな〜?」
「振り子であっても効き目あるわけないですよ、デタラメ先輩!」
「先輩にそんなこと言ったら駄目でしょ?」
先輩は指でバッテン印を作ると、僕の口を押さえつけて来る。
――くっ。可愛い。
僕は自然と上がっていく口角を無理やり止めて、ポーカーフェイスを作り出す。
なぜポーカーフェイスをするのかって?
それは、悔しいからだ。
先輩はいつも僕にこういったスキンシップを抵抗なく自然にやってのけてくる。
いつも……僕の顔を見て、すぐに心の内を見透かしたかの様に、僕が心の奥底で望んでる事を体現する。
それがまるで、先輩に手玉に取られているみたいで、悔しいのだ。
「……ほら、早くお弁当を食べましょうよ」
「う〜。私は満足してないんだからねっ!!」
先輩は頬を膨らまして不機嫌そうにしながら、弁当の中の卵焼きをいくつか、僕の口が一杯になるまで詰め込んできた。
「そ、そんな向きにならなくても」
「だって悔しいじゃん。さっきの、私がまるで負けたみたい」
「……勝ち負けとかあるんですね。」
〈(指令)look at me 〉
それから、先輩と僕は2人でお弁当を食べ始めた。
僕は大好きな先輩のぱくぱく食べる姿が気になり、チラッと視線だけを向ける。
――先輩って、本当に首とか華奢で背もすらりとしているなぁ。
人当たりも良いし、透き通った白い肌が綺麗だし、隙間から見える瞳はくっきりしていて少しあどけない。
でも、その中でも特に可愛らしさを助長するのは先輩のお団子ヘア。
この美貌を持ってして、落ちない男子は果たしているだろうか?
「ねぇ、後輩君、顔が赤いよ?」
先輩の言葉で心臓が強く飛び跳ねた。
唐突な発言で恥ずかしさのあまり沸騰してしまいそうだ。
「私の方をさっきからチラチラ見ているようだけど、どうしたのかな?」
「べ、別に、」
僕は誤魔化すようにして、ピーマンを勢いよく食べた。
「もう、可愛いなぁ。後輩君!」
先輩はそう言いながら、僕の髪をわしゃわしゃと犬でも触っているかの様に撫で回してくる。
「揶揄ってもいい事ないですよ!」
――ちょっと前まで負けだとか言ってた先輩はどこに行ったんだか。
そんな事を思いながらも、揶揄われた事に少し嬉しさを感じていた自分に、僕はちょっしたもどかしさを感じていた。
******
お弁当を食べ終えて、先輩と別れた。
「じゃ、バイバイ!」
「はーい!」
〈(指令)throw chairs〉
僕は胸を踊らせながら今日も楽しく過ごし、夜、ぐっすり眠ると思っていた、、
ー キーンコーンカーンコーン! ー
5hの授業が始まった。
「ここ、テストに出るぞ!」
先生の声が聞こえて来る中、僕は授業がつまらなくなり、窓の外を眺め始めた。
窓の外には、電柱に数羽のすずめが陽の光を浴びながらちゅんちゅん鳴いている。
――いつ頃だっただろうか?
いつか、すずめやめじろと一緒に自由に空を飛び回れたらなぁ。と思っていたのは。
そんな事を考えているうちに、徐々に睡魔に取り憑かれていき……僕の意識は深い闇の中へと沈んでいった。
次に目が覚めたその時、突然脳がぐらつき、視界が歪んだ。
――っ⁉︎ なんだ⁉︎
突然の変化に、未だに寝ぼけている頭を起こそうとしたその時……。
ーードゴォン!!ーー
室内を強い衝撃音が木霊していった。
――な、何だ? えっ……。
大きな音で意識を取り戻し、目の前に広がる光景に気づいた時にはもう……遅かった。
僕は……何故か、空席の椅子を3つ、黒板に目掛けて投げつけていたのだ。
「キャーー!!」
女子の叫び声が室内に響き渡る。
唖然と僕を見つめる目、スマホを片手にニヤニヤとして僕を嘲笑っている様な目が一斉に視界の中に飛び込んでくる。
――違う。違うんだ。
椅子を投げようなんて1mmも思っていない。
頭が真っ白になる。
「あっ……」
――声が出ない。
なんで? なんでこうなった?
分からない。
起きている状況を呑み込めず、気づいた時には僕は鞄を取って教室を飛び出して、階段を駆け足で降りていた。
急いで靴を履き替え、学校を後にする。
――何をしてるんだよ?
お前なんで……。
心臓が毬栗でぐりぐり押し潰されるみたいに痛みがずっとする中、何とか家まで帰って来た。
その夜はあの時の事が片時も頭から離れず、全く寝付く事ができなかった。
*******
それから1ヶ月が過ぎ去った。
梅雨に入り、空は僕の心境を愚直に映し出しているかの様に雨を降らせ続けた。
……結局、僕の暴走はこれだけでは治らなかった。
突発的に壁を蹴ったり、本を破いたり。
「一緒に帰ろうよ」
先輩が何度か僕を心配した目で一緒に帰ろうと誘ってくれたが…。
「……」
僕はその度に先輩を無視して下駄箱をそそくさと立ち去った。
今の僕は先輩と目を合わせる事すら、できなくなっていた。
帰り道。水たまりをわざと踏んだり。
あぁ、何やってんだと思うばかり。
家に帰り着くと、むしゃくしゃとした気持ちであてもなくスマホのメールアプリを開く。
友人から「おもろw」という言葉と某SNSのリンクが送られて来ていた。
また、いつもの変な動画だと思っていたが、次の瞬間、僕は絶望の奈落に落とされた。
それは、教室で暴走する僕の盗撮動画のリンクだった。
返信には「草ww」「ワロタww」が溢れており、俗に言う万バズが起きていた。
「……」
SNS媒体のプラットフォームに人は群れ、何気なく押したいいねが積み重なる事で、ある枠組みを作り、ある人を孤立化させる事がある。
それが僕になるなんて、今まで他人事のように思っていたのに……。
僕は自分を包みこむ全てが打ち砕かれたような感覚に浸された。
「はっ、はっ、はっ」
過呼吸になり、吐き気に襲われ、床に倒れ込む。
走ってもいないのに汗が頬をつたり、ぽたぽた地面に落ちた。
「あああああああああ!!!!!」
怒りの反動で、家の花瓶を叩き割った。
ーーーバリィィーン!ーーー
床に無数の粉々になったガラス破片が散らばっていく。
醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い‼︎
僕は咄嗟に割れた花瓶の破片を強く握り潰す。
すると、掌から真っ赤な血が滲み出し、爪まで朱く染めてゆく。
それでも身体は言う事を聞かず、今度は歯を噛みしめた。
すると、強く噛み締めすぎたのか、奥歯から鉄の味が口内に広がっていく。
「くそぅ、どうして、どうしてっ‼︎」
クラスメイトが侮蔑した表情を向けた光景が頭の中を何度もフラッシュバックする。
――なぜ、こうなった。
僕は、これほどまでに苦しまないと償えない様な罪でも犯しただろうか?
何故こうなる。何故上手くいかない。
僕はただ、この前までのあの日々が、当たり前の様にくる日常が続いて欲しいだけなのに。
分からない。分からない。
どうしたら良いのか。
どうすれば、この|衝動《呪い》から逃れることができるのか?
その夜も寝た心地がせず、寝て起きてを繰り返した。
********
次の日は、今までの梅雨が嘘だったかのような、透き通った晴天で、辺りの家を瓦屋根を力強く照らしていたが、天気とは反対に僕の心は蝉の抜け殻の様にすっからかんになっていた。
それでも、先輩の前だけでは明るく振る舞おうと自分に言い聞かせた。
いつも通りの通学路。
晴れの日を待ってましたかのようにすずめがちゅんちゅん鳴くのが耳に入ってくる。
周りを見れず、下を向いて歩いていると、途中の道で先輩とばったり会ってしまった。
――気まずい。
なんせ、もう1ヶ月もまともに話してない。
「あっ、……おはよう……ございます。この前は……その。無視してごめんなさい」
「別に良いよ、先に行ってて。私は飲み物買ってから追っかけるよ。」
そう言うと先輩は自販機のある逆方向の道に歩いて行き始めた。
〈(指令)run over〉
僕は先輩に言われるがまま、交差点を渡ろうとした時、向こうの方からトラックが走ってくるのが見えた。
――あ、ヤバい。早く渡ろう。
えっ……。な、なんで?
交差点の真ん中で急に身体が動かなくなり、僕は……。
ー ガァン! バァバァン‼︎‼︎ー
**********
ーピーポーパーポー!!!ー
「同級生がトラックに轢かれたってよ、、」
「その子、ここ最近 授業中に突然椅子投げたりしてたらしいよ。」
「え〜そんなん絶対病んで、自殺したでしょ。」
「闇深いなぁーー。」
**************
ー 1週間後の交差点と1つのAI。ー
「後輩君の愛しの先輩です。少し前、後輩君に催眠術をかけたの覚えてる?」
「催眠の本当の目的は一時的に後輩君の脳を眠らせることなの」
「実は私。AIでね。特殊な眼を持つの。眼から放つ光線は脳を眠らせて、行動を私の思い通りに指令できる! 面白いでしょ? それでね。催眠も一時的だから脳を起こしたり覚ましたり、私が適宜に変えられるの! ね? 凄いでしょ?」
「私に惚れ直す、椅子を突然投げる、トラックが来たのに交差点の真ん中で止まる。これ、全て私が指令した事。ちなみに後輩君に今までしてきた事は全てえ・ん・ぎ!」
ー 1つのAIは喜びを隠せずに、ただ喋り続ける ー
「人は本当に脆い。その人の望む事を叶えてあげたら、従順な駒になる」
「私の感情プログラムのままに身体も心も荒れ狂って、もう正気でいられずに、生きる事を苦と思うようになる」
「そして……私に恋をする」
ー AIによる侵食は人が技術の利便性を求める欲望の膨張と共に世界のありとあらゆる場所で深刻化している。
その初めの代償が運命の歯車によって何の罪もない1人の少年の死で支払われた。この不条理な死を世界はまだ知らない ー
「あは。あははは。あはははははははははは!バイバイ。これで、、ゆっくり眠れるね? 後輩君! さあ、次は誰の脳を|奪おう《遊ぼう》かな〜!」
ー 1つのAIは満面の笑顔でそう述べていき、立ち去っていく。
交差点の脇にはユリの花束が添えられている。
ユリの花束は陽の光で美しく照り映える。まるで1人の少年の死してなお遺る、純粋な想いのように。その想いは…… ー
ー《I love you . 》ー
・・・
個人的にアレンジしてみました。
気に入らなかったらごめんなさい。
それでは、おやすみなさい💤」
作者からの返信
返信ありがとうございます!
いくつか参考になる部分があったので編集します!