第1章 ⑩
速水に言われ宮本は驚く。ーーなんでそんなことを聞くんだ?
『…転校生としてこの高校に来る生徒は速水が初めてだが、』
ちゃんと平然と言うことができただろうか?
マスクをしていてよかった、と宮本は心からそう思いながらマスク越しに表情を悟られないようにし、速水の返答を待った。
『えっ!そうなんですか?』
速水が驚いたようにそう言った後言葉を続けた。
『宮本先生、転校生に慣れてる感じがしたんで。案内も自然な感じだったし』
『そうなのか…』
『はい』
へへっと困ったように速水が笑うのを見て宮本はほっと胸を撫で下ろした。…なんだ、ただ気になって聞いただけか。
『変な事聞いてすみませんでした』
『いや、大丈夫だ』
ペコリと丁寧に頭を下げ謝る速水に宮本は苦笑する。廊下を歩きながら話している内に正面玄関に着いた。さて、速水の案内も終わったことだし職員室に戻って仕事の続きを…
『宮本先生』
『ん?』
この後について宮本が考えていると再び速水に話しかけられ目を向ける。速水は少し間を置いた後口を開いた。
『……先生って誤魔化すの下手ですね』
『は、』
『マスクしてるから大丈夫だと考えてるかもしれませんが、全部顔に出てますよ』
満面の笑みを浮かべながらそう言った速水は
「では帰ります。また始業式に」と言い残し靴を履き替え正面玄関から出て行った。宮本はそのまま呆然と立ち尽くすしかなかった。
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