第19話 みんなで最高の舞台に
完全下校時間となり、俺は八孝や青海たちと別れる。
そのまま学校の敷地を外れた場所にある寮に着く。
入口にカードをかざして入り、自分の部屋へと向かう。
ここだ。215号室。
部屋に入る。
5年前のままだ。教科書やノート類に加えて、バスケのテクニック本や雑誌がぎっしりと入った本棚。ひとり暮らしを始めるときに親が買ってくれた布団。
そして、勉強机と、そこに立てかけているコルクボード。
コルクボードには、たくさんの紙が画鋲でとめられていた。
「わかってはいたけど、まんまだな」
コルクボードにとめられている紙に書かれているのは、チームの目標やら、俺個人の目標やら、八孝に指摘された課題点、次の対戦相手のチームの分析その他もろもろだ。
5年前の俺は、こうやって俺個人やチームに必要なことを書き留めてきた。
その中の1枚の紙を見て、俺はくすっとなる。
『次の練習試合も勝つ』
確かこの時期は、八孝が練習試合を馬鹿みたいに組んで、毎週のように試合をしていたはずだ。
新体制になったばかりのチームに多く場数を踏ませて、あらゆる局面に対応させる。
そんな意図が丸出しなくらいに。
「監督に完全に踊らされていたんだな、俺」
来年の新人大会で、俺は黒田と一緒に負傷してバスケができない体になる。そして部は崩壊する。
わかっていたのに、今日は仲間たちの前で大層な夢を語った。
八孝の前だから、自然と言葉が出た。
八孝は、やっぱりすごい。
だから、
「いいよ乗ってやる」
俺は机の上に置かれた紙を1枚取った。ボールペンを取って、紙に書き始める。
『みんなで最高の舞台に立つ』
みんなの前で語ったことを、そのまま書く。俺はその紙を、コルクボードの一番上の部分にとめた。
5年後の未来で会った、ツインテールの女の子の正体はわからない。なぜ俺を5年前の今日に飛ばしたのかも。
だがあの女の子はこう言った。
――やり直してみせてよ。
そして本当に、やり直す機会を得られた。
だったら最大限に使わせてもらおう。
やることは、5年前と変わらない。新人大会に向けてのチーム作り。これは本来の過去どおりにやっていけばいい。
そして新人大会本番、俺と黒田の怪我を回避する。
本来の過去ではかなわなかった、河北友との対戦が実現できる。そして全国の舞台に、最高の舞台に立つのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます