第四十五話「いずもの乗員」

 第1護衛艦隊群の姿を空から俯瞰している存在を発見する。あれは米軍のヘリか? いや違う。自衛隊でもない。どの国に所属しているブラックホークだ? 


 いずもは第1護衛艦隊群の旗艦を務めているヘリコプター搭載護衛艦、ヘリコプターと銘打っているが、戦闘機の離発着も可能だ。ただし全長が一般的な空母よりも短いためF‐14(トムキャット。映画トップガンで有名な戦闘機)などが使う旅客機のように飛行甲板に降り立ちワイヤーに引っ張られながらすーと進み停止する方法は難しい。できないことはないが、相当の腕を求められる。運用が唯一可能な戦闘機はF‐35Bだ。空中でピタッと停止してヘリコプターのように垂直に着陸できる最新型の戦闘機F‐35Bや攻撃ヘリ、偵察へリなどを状況に応じて海から送り出せる護衛艦がいずもだ。空の支配者が戦場の覇者だと叫ばれる昨今の情勢を勘案すれば最強の護衛艦だ。

 こんごう、弾道ミサイルを唯一迎撃可能なイージス・システムを日本の護衛艦として初めて搭載したミサイル防衛の中核を担う艦の一つ。この二艦を中央に配置して周囲をその他の護衛艦で取り囲み徹底的に守る構えを第1護衛艦隊群はとっている。


 空港や基地、地上の滑走路を運用できない今、いずもを喪失すれば空戦能力を失う。多数の戦闘機に襲われた場合、護衛艦の艦対空ミサイルでは対応できない。一方的に蹂躙されてしまう。こんごうを喪失すれば核を阻止できない。

 第1護衛艦隊群にとってこの二艦は命を賭してでも守らなければならない存在だ。本来ならばイージス艦はこんごうの他にまやもあったが、まやは佐世保基地で発生した寄生爆発に巻き込まれて放棄された。海自の手札にあるイージス艦はこんごうのみとなった。

 海上自衛隊の護衛艦隊群は第1から第4まで存在しているが、第2と第4はバケモノに寄生されていた隊員による連鎖的な寄生爆発(感染爆発の寄生バージョン。第4護衛艦隊群の誰かが呼称し、そう呼ばれるようになった)を招き幽霊船として海を漂っている。

 第3はひゅうが、しらぬい、ゆうだちの三艦のみモンスターの襲撃を受けた基地から出航を果たし、鳥島に特別警備隊を送り込む任務を成功に導いた。いずもと同じく空母と呼んでも差し支えないヘリコプター搭載護衛艦のひゅうがはF‐35Bを運用するための改修工事を受けていない。それでも無理をすれば運用できるが、鳥島の作戦で求められるのはヘリコプターだったため一機たりとも格納していない。よって現状戦力としては使えない。しらぬいもゆうだちもイージス艦ではなく普通の護衛艦だ。第1に援軍として合流する案もあったが、特別警備隊によるモンスター支配地域にて生存している民間人救出作戦の受け皿として機能させる方が良いとの判断でミサイル防衛への参加を辞退している。

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