第399話 アメリカ上陸作戦(3)

1942年11月23日 午前6時


 アメリカ合衆国フロリダ タンパ沖


 ここに、日本の空母打撃群が集結していた。


第三空母打撃群

 空母龍鳳  栗田司令


第五空母打撃群

 空母瑞鳳  小沢司令


第七空母打撃群

 空母玉鳳  御須磨司令


 大型空母 3隻

 重巡 5隻

 軽巡(駆逐艦を含む) 85隻

 強襲揚陸艦兼ヘリ空母 12隻 ※21世紀の“ひゅうが型”相当

 その他輸送艦等 191隻


 そして、キューバ基地の日本陸軍からも大部隊が参加する。


 1200トン級上陸用舟艇 300隻

 九八式重爆撃機 250機

 九七式戦闘攻撃機 310機

 零式戦闘攻撃機 500機

 九九式襲撃機 85機


 日本は保有する海軍兵力の半数以上をこの作戦に投入していた。キューバに前線基地を確保できたことによって、これだけの大兵力の運用が可能になったのだ。


 今世の日本では、戦闘をするときには能力係数も入れて敵の5倍以上の戦力を揃えることが必須とされている。5倍の戦力差があれば、ほとんど損害を出すこと無く戦闘を終わらせることができるのだ。


 ――――


 連合艦隊旗艦 重巡摩耶


 連合艦隊司令長官の山本五十六は、目の前の大型ディスプレイに表示されている光点を見ながらマイクを強く握りしめる。


「全軍に告げる。現時刻をもって“ハンバーガー作戦”を開始する」


 ――――


 タンパ沖に展開している強襲揚陸艦から、次々に無人機が発艦していく。前回のハワイ攻略作戦では若いパイロット訓練生に操縦をさせたため、精神に異常をきたす者が続出してしまった。その為、今回は陸軍のベテランパイロットが日本から操縦している。そして、あらかじめ確認している高射砲陣地を破壊していった。


 アメリカ軍陣地では無人機による攻撃が予測されていたが、ほとんどなすすべもなく蹂躙されてしまった。レーダーは妨害電波によって無効化されていて役に立たない。もしレーダーが生きていたとしても、段ボール紙で出来た無人機の捕捉はほぼ不可能だ。近接信管を搭載した高射砲弾も、段ボールの無人機に反応することなく至近弾になったとしても爆発しない。


「くそっ!くそっ!くそっ!何故当たらない!この蚊とんぼがぁ!」


 高射砲弾の雨をかいくぐって迫り来る無人機に対して、アメリカ兵は小銃やサブマシンガンで応戦するがなかなか当たらない。当たったとしても段ボールで出来ている無人機に弾は貫通してしまい撃墜することが困難だった。


 そして、アメリカ軍の120mm高射砲は巨大なため、カモフラージュネットで完全に隠すことが難しい。無人機のカメラからすぐに確認されてしまい、次々に体当たり攻撃によって破壊されていった。


無人機による体当たり攻撃が終わり、ほんの少しの静寂が訪れた。


「損害を確認しろ!すぐに航空機による爆撃が来るぞ!」


 無人機による爆撃はそれほどの威力は無いのだが、そのほとんどが高射砲基部に着弾しており、高射砲の角度や方角を調整するための電気配線やギアを破壊していた。こうなってしまっては、たとえ砲身が無事だったとしても戦うことは出来ない。


 しかし、まだ無事な高射砲も多数残っている。無人機の攻撃が終わったということは、次は航空機による爆撃が来るはずだ。その航空機を迎え撃つための準備をしなければならない。


「上空に敵機!」


 無人機の爆撃による煙がまた立ちこめる中、数機の航空機が空に侵入してきた。大きさから見て、かなりの高度がある。これなら、120mm高射砲の近接信管で撃墜できるはずだ。


 レーダー連動の120mm高射砲は、その砲身の仰角を上げて自動的に狙いを付ける。周りでは、レーダーと高射砲に電力を供給している電源車が激しくうなりを上げていた。


「SCR対空レーダーに敵機を捕捉しました!」


※SCR対空レーダー アメリカ軍が開発した射撃管制レーダー


「よしっ!発射!」


 いつの間にか電波妨害もなくなっていた。そして開発されたばかりのSCR対空レーダーは日本軍機を捉え、そのデータはM4アナログコンピューターで解析される。その計算結果に応じて高射砲が自動的に動くのだ。ロックオンした状態で発射をすれば高い確率で撃墜することができる。


「やった!日本の攻撃機を撃墜したぞ!」


 発射された120mm弾は日本軍機の至近で爆発し、見事撃墜に成功した。第二次攻撃の日本軍機は50機ほどが確認できたが、次々に爆発して粉々になっていった。


 アメリカ軍の高射砲陣地はその戦果に沸き立った。いくら撃っても撃墜できなかった日本機を撃墜できたのだ。


 しかし、それはレーダー波を出させるための日本軍の作戦だった。


 侵入してきたのは、段ボールの機体にアルミ箔を貼り付けた無人機だ。1500mくらいの高度で侵入したため、アメリカ軍は有人攻撃機だと誤認したのだ。そして、それを発見したアメリカ軍高射砲部隊はSCR対空レーダーを照射して発砲を開始した。


「全機、ARM発射」


 アメリカ軍の射撃管制レーダーを受信した哨戒機から、ARM(アンチレーダーミサイル)の発射指示が加藤隊に出された。そして、加藤隊の九七式戦闘攻撃機からミサイルが白い煙をたなびかせてレーダー波に向かっていく。この攻撃によって、残っていた高射砲陣地はほぼ全て破壊されてしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る