第21話

 部室棟へ行く途中に購買部があるので、コロッケパン二個と一緒に、ミネラルウォーターとレモンティーを購入する。


 コアラ女には食事という概念があまりないからな……。


 ほっとくと餓死するんじゃないかと、たまに思う。


 いつも店長が『賄いを食べていきない』とか、パートの内田さんは、たまにおにぎりを渡していたからな。


 アイツは複雑そうな顔をしながら、きちんとお礼を言うと残さずに食べていた。

 

 俺はコアラ女の顔を思い出して笑ってしまう。

 そして、俺もこうして貢ぎ物ユーカリを買ってしまった訳だが。

 

 それより、コアラ女は俺とは時間差で教室を出ただろうから、ゆっくり歩いていれば、そろそろ追いつく頃だろうか?

 とりあえず、俺はのんびり歩いて部室棟のある東棟へ入ったのだが――三階に上がってすぐの女子トイレの前で、何やら女子同士が揉めていた。


 呼び出しというやーつですか?


 きょわわわ。


 俺は君子危うきに近寄らずでスルーしようとしたが――。


 んん??


 もしかして、黒川さん??


 見知った顔を見て足を止める。

 しかし、向こうは俺に気づいていないようだ。

 

「浮気するって、人としてどうかと思うよ」


 次の瞬間――。

 人として論が聞こえてきたので後退りする。

 

 なに、これ?

 黒川さん、コイツらに締め上げを食らっていたりするのか?


「ほんとに、ガチで天童君が可哀想なんだけど?」


 いやいやいやいや。

 付き合った経緯を聞くと、気の毒なのは黒川さんの方だと思うぞ。


「ちょっと可愛いからって調子に乗ってんじゃないわよ」


 ねーねー。

 目ぇ、見開いてみて。

 ちょっと可愛いレベルじゃないんだが?

 それから調子にお乗りになっている所を見たことないけどな。


 でも、こういう事を異性の俺が言うと女子は「男子は何もわかってない!」と、ムッキィィィィとなるんだよな……。


「てゆーか、礼奈って、あんなモブ男でも簡単に腰振るんだね」

「相当ビッチじゃん!」

「本当は天童君に飽きられただけだったりして?」

「あるある。やり捨てされただけとか?アハハハ」


 はぁ……。

 付き合う男のランクが三軍に落ちただけでこんなに言われるのかよ……。


 一軍女子、怖っ!

 悪口も、酷っ!


 あとこれって俺のせいじゃね?

 

 はあ……。

 仕方ないけど、出ていくか?


 火に油を注ぐ行為だとは理解しているが、実際――こういうのには解決策がない。


 俺は中学の時に経験しているから解る。


 言い返しても、沈黙しても。


 ――結果は同じだ。


 相手の気分次第でズタズタにされる。


 心か体か。

 または心も体もか。


 どういう理屈だよ、と思うが。


 人間の中には、他人が苦しんでいる所を見るのが好きなヤツがいる。


 それだけだ。


 あとは多勢に無勢。

 だからエスカレートする前に止める。


 それに、俺くらいは味方でいないとな。

 

 やれやれ。


 その前に『野暮用で行けなくなった』とコアラ女へラインを送る。


 はぁ……。


 コロッケパン、二個食えるだろうか……。


 ボリュームあるんだよなぁコスパ最高なんだぜぇ

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