魔王と独眼竜
春露が白銀の如く降り注ぐ1583年、九州、奥州、越後からの三位一体の侵攻が羽柴軍の耳に届けられました。
その報せを聞き、羽柴秀吉は慎重に言葉を選びつつ漏らしました。
「我々が直面するは厳しい局面。同時侵攻だというのなら、個別打破の戦術が功を奏する余地はないだろう」。
と、蜂須賀小六が口を挟みます。
「更に、かつての足利将軍が再び京を巡るとの噂もありますな、親分」。
「いい加減にしろ、小六。吾はもはや大名である。口調もそれ相応にするがいい」と秀吉が返すと、「すまぬ、思わず口が滑ったよ」と蜂須賀が頭を掻きながら笑いました。
黒田官兵衛は鋭い視線で秀吉を見つめ、「この事態は、確かに我々にとって厄介な状況ですな。しかし、うちの主君がどのような策を用いるか、お手並み拝見といきましょうか」。
「官兵衛、お前は、他人事すぎるぞ。そして、吾の身に降り注ぐ試練を楽観的に捉え過ぎだろう」と秀吉がやや呆れたように言うと、官兵衛はさらりとした口調で「暗い表情をしても解決には繋がらないでしょうに」と返しました。
一息ついて秀吉が「まあ、その通りだが…」と言うと、官兵衛は続けました。「それよりも、我々は目の前の敵に集中すべきです。かの九州連合にどう立ち向かうか、それに全力を注ぐべきです」。秀吉は頷き、「その通りだ」と答えました。
黒田官兵衛は、戦況を冷静に把握し、現在の羽柴軍が必要とする戦略を考えていました。彼は堅固な防衛を続け、信長の到来を待つことが重要だと提唱しました。「言い換えれば、勝つことを考えるよりも、負けない戦いをするべきだ」という意味でした。
一方、信長はこの情勢を黙って見ているだけではありませんでした。彼も連合軍の同時侵攻の情報を把握しており、それに対して戦略を練っていました。
この物語を辿ること数ヶ月前、連合軍が揃って挑むことを知り、信長はこの脅威にどう立ち向かうべきか、その策を練り始めていました。
彼は小姓の森蘭丸から戦況を聞き、天下の情勢を把握していました。「この噂に聞く新たな若造、なかなか興味深いではないか」と信長は言いました。
信長:「その名は何と言ったか?」。
蘭丸:「伊達政宗と申します。父親が早世し、13歳で当主となりました。そして16歳で奥州の大半を制覇し、隻眼故に独眼竜と恐れられています」。
信長:「独眼竜だと?ますます興味深いな。この六大天魔王の目に独眼竜はどのように映るだろうか?」。
蘭丸:「私のような凡夫には到底理解が及ばぬところでございます」と蘭丸が答えました。
信長の耳にも伊達家新当主、伊達政宗の活躍が届いていました。この謎めいた若者に対し、信長は興味を示し、使者を派遣しました。そして、政宗からの返事を読んで、その彼の教養と器量に一定の評価をしました。
信長の手紙には「六大天魔王から独眼竜に問う。なぜ、竜の目は独眼なのか」とあり、政宗からの返事には、
「心眼の 風に揺れつつ桜舞う 春の息吹に 心躍るとは」
と書かれていました。
「なるほど、この若者、我が心を見抜き、この信長に臆せず、味のある言葉で返答してくる。ますます興味が湧いてくる」
と信長が言うと、
「久しぶりに御館様が笑っておられます。独眼竜、噂通りの者のようですね」
と蘭丸が返しました。
そして、信長と政宗は意外な同盟を結ぶこととなりました。魔王と独眼竜が手を取り合った瞬間でした。
- 夢想瑞歌 -
風吹けば 戦の火花 散りぬるを
再び舞おう 天馬の如く
※歌の注釈:
いくたびの戦争が終わり、多くの者が散って行っても、再び花は舞い上がり、それは天馬の如く駆けるのである、という意味。
信長も連合も、戦が終わっても、どれだけ犠牲者が出ても、再び戦をする、ということを詠ったものである。戦争とは本来は悲惨であり儚いものである。しかし、戦記物は華々しく描かれている葛藤をも詠んでいます。
これは「舞おう」と「魔王」、「天馬」と「天魔」が掛かっています。
天魔=六大天魔王
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