第19話 真祖吸血鬼の憂鬱・惨
何じゃ、折角我の方から来てやったというのにその驚き様は……ふむ、ちと手狭じゃが綺麗に整頓されてるではないか、調度品のセンスも及第点じゃ。
ん? こんな平日に来るのは何故じゃと? これでも気を使って貴様の会社に休日の確認をし……え? 外? いい天気じゃな。真夏ならば海辺の別荘に涼みに出かけたい所じゃ。
……嗚呼、前にも言ったではないか。別に我は日光に当たった所で灰になったりはせぬぞ、肌が弱いので日傘無しに直射日光を浴びるとヒリヒリはするがな。
それより折角我が出てきたのじゃ、急な来客とはいえ紅茶の一つ位用意するのが礼儀じゃろ? 何? 麦茶しかないじゃと? 何?食材もない? ……仕方ない、買い物に付き合ってやるとしよう。
ふむ、久々の下界じゃが相変わらず賑やかじゃな。ほんの100年前まではこの町……今は「へーせーのだいがっぺい」じゃかをして市じゃったか? こんな高いビルなど建っていなかったからな。走る車も「えこかー」じゃったか? 昔の様な臭い排気ガスも少なくなったし快適じゃ。
……ほう、ここが噂に聞く「じろーけいらーめん」か。嗚呼安心しろ、我自ら注文をする……「ニンニクマシマシヤサイ少な目でお願いします!」 ……どうじゃ、ちゃんと言えただろう? ……? ニンニクは大丈夫なのかじゃと? 我は大好きじゃし匂いが気になるのなら吸血鬼はその辺も何とかなる……そうじゃない? 可笑しな奴じゃな……。
ふむ、残しはせんかったが流石にお腹一杯じゃ。少し休憩しようぞ……何? こうしていると妹が出来た様だ? 相変わらず不敬な発言じゃな……まあ良い。
ん? 何故そのような若い容姿のまま成長しないのかじゃと? ふむ、我は生物の老化の仕方など詳しくはないが、そもそも考えてみろ、人間以外で見た目で老化が判る生物の方が珍しいとは思わぬか?
魚や蛙などは大きさ以外の違いは判らんし、犬猫も毛で覆われているとはいえ大体5歳ほどでそこまで見た目的な違いはなくなるじゃろ? 世界最高齢の猫を見た事はあるが、毛の艶は無くなっているが顔付きなどで10歳前後の猫と違いは判らなかったぞ。
まあ我ら吸血鬼の場合、ある程度魔力が成長するまでは人間と同様の成長だが、その後はその時点での見た目の侭細胞の維持及び活性化が行われていると、同族の変わり者の研究成果にあったな。つまり我の様に若く見えるのはそれだけ魔力が多いという事で、同じ様に長生きな「怪物」共もそうらしいぞ。リッチの様に元の人間から種族は変化した際に老人だったならば見た目も老人のままらしいがな。
人間のような病気にもかからぬ故、不慮の事故やヴァンパイアハンター等による殺害、食事を欠かしての餓死以外では死ぬ事もない。再生能力も高く、ほら……このように手首を切った程度ならば数分で塞が……何を取り乱しておる? 嗚呼、服が血で汚れてしまったな……直ぐ洗浄魔法をかけ……こ、こらっ、抱き着いていいとは言ってないぞ! 何で涙目なのじゃ? 嗚呼わかったわかった、もうこの様な自傷行為はせぬよ、安心しろ。
さ、夜も更けて来たな、貴様の家に戻ろうではないか……何? 泊まるつもりなのかじゃと? 我の荷物を見て察していると思ったがな。
狭さを気にする必要はないぞ。我はどこでも寝れるし、何なら貴様と抱き合って寝てもいいわ。
……何を真っ赤になっておる? 良いではないか、同性なのじゃし。
何、それでも自分を抑えられるか判らないじゃと? 成程、今流行りのえるじーびーてぃーとやらだったか……「い、痛くしないでね、お姉ちゃん♪」 ……どうじゃ、これが今流行りの「もえけい」という奴で……って抱き着くな! prprするな! 道端で服を脱ごうとするな! そちらのピカピカと眩しい繁華街は貴様の家の方角じゃないだろう! 全く仕方のない奴じゃな……。
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