第52話 「保健教師の本性」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「楽しいわねぇ」
「どぉこがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ふふふ」
なんでそんな余裕のある笑みが出るんですかねぇ!!
こちとら絶賛絶叫中なんですけどぉぉぉっ!!
というかうわうわうわぁぁぁ
「地面とキスしちゃいそうぅぅぅぅぅ」
「恭弥君すごいこといきなり叫ぶじゃーん」
あははと無邪気に笑う白石さん。
あれれーおかしいぞー?白石さんも一緒にジェットコースターに乗っているはずなんだけどなぁぁ?
なんでそんなに冷静なんですかねぇ?
俺なんて精神は今まさにお空に昇っちゃいそうなんですけど?
身体もちゃんと上に向かってるんだけどさ。
ダブルで昇天しそう。
「あ、見てみて恭弥君。あそこ富士山きれいにみえてるわよー」
「わぁほんとですねぇぇぇぇ、僕には視界が反転してて地面と空が真逆に見えますけどねぇぇぇぇ」
そんな景色なんて見てる余裕ないんですけど?富士山なんて全く見えない。
なんで白石さんは普通に景色観光しちゃってるんですか、恐怖感とかバグってるんですか?
「あーそういうのは保健医として働いていれば自然と鍛えられるからねー」
「平衡感覚が鍛えられる保健医の仕事っていったい何なんですかぁぁぁぁ!というかさらっと心読まないでぇぇぇ」
「そんなことより叫びすぎて恭弥君の喉が私は不安だよー?」
「保健医みたいなこと言わないで!!喉は大丈夫だけど、ジェットコースターはだめだぁぁ!」
「私保健の先生なんだけどなー?」
なんで白石さんはジェットコースターなのに普通に会話してるんですかぁぁぁ?
…………あれ?
今気づいちゃったんだけど、ジェットコースターって上下の移動がすごいじゃないですか?
つまり、ねぇ?
そのお胸がすごいことになるんじゃ…………
チラッっとだけちらっ。
「ぐえっ?!」
隣を見ようとしたそのタイミングで、機体が逆方向に転換。
首が変な感じになったぁぁぁっ!
「どうしたの?蛙がつぶれた時みたいな声を出して」
「そ、そんな声出してないですけどぉぉ?」
どうやらその回転がジェットコースターの最後だったらしい。
機体はゆっくりと最初の地点へ。
「大丈夫ー?」
隣から心配そうにのぞき込んでくる、白石さん。
あぁ地面だ、地面に足がつく。
人は地上でしか生きられないよねやはり。
そこでようやく俺も隣を見れた。
さっき見たかったけどまぁ…………あ。
見てから気づいた。
そっか、ジェットコースターって安全バーって割とがっちり目にしてるから揺れてるとことなんて見えるわけないじゃん。
「安全バーはずしてくださーい」
係員さんの声で、体がバーから解き放たれる。
窮屈そうに白石さんの体も解き放たれ、うーんと伸びをする。
わぁすっごい。
「どうしたのー?そんな情熱的な目で私をみて」
「いや、白石さんは余裕そうだなーって思って」
髪をかき上げるその仕草がさらに余裕そうに見せている。
「まぁ私こういうの得意だからねー…………てっきり私は恭弥君は私の揺れるおっぱいに興味あるのかと思っちゃった~」
なっ?!この人はエスパーか?!
なぜに?!
俺が驚愕で驚きおののいていると、少し下を向き白石さんは続けて──
「──まぁそんなわけないか、こんな脂肪の塊に、邪魔なだけだし」
「そんなことないですけどね!」
それは違う!
だからそんな卑屈になる必要もない!
ちゃんと強めに否定する。
するとにこって彼女は顔を上げ、
「うん知ってるよー、やっぱり見てたんだぁ?」
うわトラップだ、だまされた!
白石さんの顔を見れば、嗜虐的な笑みが浮かんでいる。
これ注射とかも嬉々として打つタイプだたぶん。
想像できちゃう…………やばい悪くないかも。
なら──
「──そりゃ見ないと失礼ってもんではないですか?」
「何に対して失礼なのかなー?」
「それはおっぱいでしょ!」
あえて堂々と言ってみる。
これで乗り切れないかな?
「恭弥君知ってる?そういうのをセクハラっていうんだよ?」
うんダメでした!
「ごめんなさい!」
なら即座に謝罪。
「女の子に言うことは経験あるけれども、まさか男の子に言うなんて初めての経験だわー。ま、私はいいけれど!」
いいのかーい。先生の初めての経験になっちゃった。
「でもセクハラされたってことは、逆に私もセクハラしていい、ってことになるのかしら?」
え?撃っていいものは撃たれる覚悟のあるものだけだ、みたいな?
ルルーシ〇みたいな感じ?
というか保健医のセクハラって何?
やっぱ注射?注射なの?
「白石さんは恋人いるから駄目じゃないですか?」
「それ言ったら恭弥君なんて許嫁3人いるからもっと駄目じゃない?」
「まだ俺は候補…………だから?」
「ちょっと無理じゃない?」
俺も白石さんも二人して苦笑しちゃう。
「ちょっと無理か」
「まぁセクハラなんてしないけどね?…………今は
「何ですかその含みのある言い方は」
「あ、莉緒にはセクハラまだ駄目だよ?最初のころよりは歩み寄れてるけど、まだそこまで距離感近くないからねー」
「さすがに秋月さんにはそんなことできないですけどね?」
「まだ怖い感じ?莉緒は」
怖い…………かぁ。
うーんどうなんだろう。
「……怖くはないですけど、少し緊張しますかね?」
なんだろう、悪い人ではない、と思うんだよなぁなんとなく。
「ふふそっか今はそんな感じか~」
「ええそんな感じです」
「そっかぁ、じゃあ今度は別のジェットコースターにのろうか!」
「何が【じゃあ】ですか、何もつながってないですよ!」
「いいつツッコミするわよねー、恭弥君はジェットコースターは苦手?」
「さっきの見て得意だとおもいますか?」
普通に苦手だけど?なんなら男としてのプライドでさっきのも意地張った方ではあるんだよね。
「思わないよねー。じゃあ顔色もちょっと良くないし、ゆっくり散歩でもしよっか?」
遊園地で散歩?
……まぁゆっくりアトラクションでも見る感じかな?
「いいですね、なんか食べるものとかあったりする感じですね?」
「んー、まぁ食べられたらいいかもね?」
「…………食べられないこともあるんですか?散歩ですよね?」
「うん散歩ー」
なんか猛烈にいやな予感がしてきたんだけど?
だって散歩という割に一直線に一方向へ向かっている気がするし。
「ここの遊園地にきて、自分の真価を見極められるのですか?」
「ん-、秘密?」
「また秘密ですかぁ」
少し不満げに言って見せるけど白石先生はどこ吹く風。
「そうだよ?女だし」
「……そうですか」
じゃあこれ以上言ってもしょうがないよね。
「諦めがいいんだね?」
「女性が隠そうとしていることをきいてもろくなことがないと教えられたので」
常に紳士であれ、とよく言われた。
「そうなのね、いいことを教えられてるわね……あ、ついたわ」
ついた?
え?散歩してたんじゃないの?
目の前の建物を見て察した。
「……ほんとにいってますか?」
「ほんとに言ってますよ?」
目の前にあるのは廃病院を舞台とした、アトラクション。
一説によると、本当に幽霊が出るとかいう噂もあったりするらしい。
その怖さと長さは日本でもかなり有名なわけで。
白石さんはワクワクといった様子で、もう待ちきれなさそうな顔をしている。
この人マジか。
「…………白石さんヒールなのに大丈夫ですか?」
気遣ってるふりして、やめておこうアピール。
「社会人のOLだからね、歩いて回ることなんて余裕だよ?」
意味なし!
つまり走る気はないってことですね、歩いて移動するしかなくて、逃げることもできなくなった、と。
しょうがないここは勇気を出して、戦略的撤退というものを進言するのも──
「──じゃあ恭弥君、私にかっこいいところみせてちょーだい?」
上目遣いで、しかも俺の片腕に胸をぎゅっと寄せてくれる白石さん。
「…………任してほしいです!」
男って単純だよね?
もうなんというか頑張ろうかなって思っちゃった。
これに関してはしょうがない、だって俺も男だもん。
こんなの世界が変わっても抗える男なんていないんじゃないだろうか。
ま、まぁここでかっこいいところ見せて? 白石さんひいては秋月さんの印象をよくするっていうのもあるからね?
決しておっぱいに屈したわけではない。
あとやっぱり白石さんめっちゃいい匂いするんだけど!
「いきましょうか?」
「ふふ、いきましょうー」
今なら俺はこの戦慄する廃病院でも何とかできそうな気がしてきた。
気分は勇者にでもなった気分。
意気揚々と入口に入る。
さぁ俺たちの戦いはこれからだ!!
……無理でした。
散歩でお化け屋敷に連れて行くなんてやっぱり白石先生どSだ!
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そろそろ第1章終盤だよ?
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